68.エピローグ『光焔』
「んぐ……」
気を失っていた。
なにがあったかは、なんとなく思い出せる。
ガブリエル……ガブリエルの力を借りて、ウリエルを説得したんだ。
そうだ……。
「ウリエル……貴女のことはとうてい許せません」
「筋は通すと言っているじゃろ……。わらわの財産から、相応な分の賠償はする。それに好きなだけ殴ればよい。じゃからな」
「そういう話ではないことは、わかるでしょう!?」
ラミエルは怒り心頭といった様子でウリエルを責め立てていた。
ウリエルは、大きく、扇状的なまでにその衣装を乱れさせていた。
「言っておくが、婚姻なんてそんなものじゃよ。財産を築き上げた者には、賠償など痛手ではあるまいに……何の楔にもなりはしないんじゃ。わかったら、女を磨くことじゃな……。もっとも、わらわたちは、そなたには理解できぬ情で繋がっておるが……」
なんの話をしているかは、俺にはわからなかった。わかりたくなかった。
「さっきから、この調子なのよ」
俺が起きたのを見て、そうサマエルが話しかけてきた。
「そうなんだな……」
気のせいか、頭痛がしてきた。
やはり体調はまだ万全ではないか。
「まぁ、最後に勝つのは、このボクさ。いまをせいぜい楽しんでおけばいい」
幻覚は、そんなふうに余裕を見せる。その声色に、わずかばかりの怒りを感じる。少し、ヤケになっているようにさえ思えた。
レネの姿を探す。
隅で、寝息を立てて、眠ってしまっているようだった。
あの船での別れ方で心配だったが、無事でいてくれて安心した。
「ともかく、起きたのなら、テレポーターを動かしてくれないかしら?」
「俺がやるのか?」
「あなた以外に誰がやるのよ? さぁ、早く早く」
促されるままに、装置の前に立つ。てっきり、ラミエルがやるものだと思っていたが、違うようだ。
たしかに、これなら動かし方は俺にもわかる。
彼女の、『円環型リアクター』の鍵がある場所まで、詳細に座標を設定する。
このテレポーターを操作できるのなら、事前に設定した場所だけでなく、任意の場所へと自由自在に転移させることが可能だ。
「じゃあ、いくぞ? いいか?」
そうして、テレポーターを起動させようと、俺は声をかける。
「っ……この感じ!」
その声とともに、『白翼』が展開される。彼女は身を翻す。それとともに、銃声が響いた。
誤射かと思った。その銃弾は、誰にも当たらない。
「ミカ……エル……! 来た……わね……!」
「サマエル……ごめなさい。……外した」
少女がいた。
目の前に、先ほどまでいなかった少女がいる。
新雪のように、真っ白い髪に、漂白されたばかりのような白い服を来た。全てが白い少女だった。
銀の瞳が、サマエルを見つめている。
手には、赤いなにか……脈動する機械があった。
「ぐふ……っ」
同時に、サマエルは赤い液体を吐き出す。
最初は、血だと思った。だけれども、匂いが違う。アンドロイドの冷却液だ。
「戻す?」
「いいわ……! それは最悪、なくても動ける」
「そう……。『円環型リアクター』を狙ったのだけど……。ごめんなさい」
そして、ミカエルと呼ばれた少女は、手に持っていた機械を捨てた。
「なんじゃ、ミカエルか……」
「ウリエル……」
「いやぁ、あんなことされたら、勝てるわけなかろう。完封じゃった。今のわらわは捕虜じゃよ、捕虜。わらわは十分に戦った。わらわ、すごかった」
そうやって、ウリエルは、もう戦えないとアピールをしているようだった。
「そう……それならしかたがない」
ウリエルがミカエルと話している。その間に、ラミエルは、サマエルやこちらに目配せをしている。
ラミエルに、ウリエルに、ガブリエルもか……動ける大天使が三人いるはずだが、完全な膠着状態となっている。
それほどまでに、凄まじい圧を、目の前の少女からは感じてしまう。
「…………」
そして、彼女は俺の方へとゆっくりと歩みを進めて近づいてくる。
「『円環型リアクター』はダメだったから……こっちの方……」
「なっ……」
彼女は、俺の動かしていた機械へと、テレポーターへと手を触れる。
「これはもともと、わたしのものだから、そうでしょ?」
そう確認するように、彼女は俺の目を見て問いかける。
その白銀の瞳に、俺はヘッドライトに照らされた鹿のように身動きが取れなかった。息が詰まる。
「あっ……」
瞬きをする間もなかった。
俺が動かしていたはずの、テレポーターと共に少女の姿が消える。忽然と消えてしまった。
見届けて、途方に暮れるしかない。
「うぐ……やっと、ここまで来たのに……! ミカエル……! ミカエルのやつ……! おえ……っ」
「だ、大丈夫ですか!」
冷却液を吐き出しながら、怒るサマエルを心配し、ラミエルは駆け寄っていく。
「サマエル……お前、アンドロイドだったのか……?」
「私は人間よ!」
そして、俺たちの作戦は失敗した。
ミカエルという大天使に、最後に全てをひっくり返されてしまったのだ。
登場人物紹介
主人公――女性関係はたぶん、自業自得。
レネ――妹。一緒に死にたい。
サマエル――メカバレした。投票で一番人気がなかった。ポンコツ。
ラミエル――夫よりも浮気相手が許せないタイプ。
ガブリエル――夢で心を溶かしていく。最後に勝つのは自分だと確信している。投票で半分以上の票を奪った。大人気。すごい。
ウリエル――相手に別に女がいても許せるタイプ。太陽怖い。かつては、お嬢、お嬢と慕ってくれる仲間がいたが、今は一人、辺境の星にいる。
ラファエル――昔は自分の能力の高さから人間を見下していた。自分よりすごい相手にプライドを打ち砕かれた。
アザエル――娘。オンラインカジノが好き。封印中。うらめしやー、ガオー。
ミカエル――避けられたから、間違えて内部の部品をキャッチした。突然出てきて、突然消える。妹に嫌われていて落ち込み中。
主――本来なら仲良くやっているはずの部下たちが、ギスギスしてて困惑した。
おまけ
各ヒロインとの関係
ラミエル――妻。きっと来世では。代わりに、押しかけ女房的に居座っていた。
ラファエル――恋人。プライドをズタボロにされ、女にされた。一緒になって、子どもができたらチャラだと思ってる。別れたつもりはないらしい。
ガブリエル――愛人。互いの憧れ。人間のデータとして機械に転送させる技術で荒稼ぎした。振られた後に、父親の会社を買収している。あと、未練しかなかった。
ウリエル――妾。監禁した。共感し合える部分があった。
***
ここまでお読みいただきありがとうございます。これで四話目の『光焔』もおしまいです。
申し訳ございませんが、次のお話が出来上がるまで、更新はお休みになります。でき次第、同じように順次投稿していきます。
できればでいいのですが、ブックマークや評価をしていただければ嬉しいです。
ポイントをもらって、ランキングを駆け上がって……というのが夢なので。
すでにしているという方には、本当に感謝しています。期待に応えられるようこれからも頑張っていきます。
それと現状、読者の反応などがよくわからないので、レビューや感想などがあるととても助かります。感想は非ログインで書けるようにしてあるので、気楽に書いていただけたらと思います。




