45.エピローグ『神託』
「……っ、連れて行かせは……」
動いたのはラミエルだった。
「まだ精神が安定しきってはいないだろう? 精密な計算ができていない。お粗末だ」
ガブリエルは、どこからか取り出した銃を構えて、軽快にラミエルへと打ち込んだ。
電磁気の力で、本来ならば届かないはずだが、その額に命中する。
「ラミエル!!」
「大丈夫さ。ちゃんと威力は弱められた。しばらくの間、気を失うだけだろうね。また邪魔されては敵わないから、ボクたちは早く行こうか」
そう言って、ガブリエルは俺に手を差し伸べる。
ガブリエルは信頼のおける相手だから、きっと嘘はついていない。
「そうだな……ガブリエルと一緒に……」
彼女と過ごす時間はとても楽しかった思い出がある。
だからこそ、彼女と行けば俺は幸せになれるだろう。それがきっと、一番いい。
「うん、行こう」
「あ……違う……そうだ。そうだった。俺には妹がいる。妹がいるんだ。だから、行けない。妹を置いてはいけないんだ」
「なっ……!?」
突風が吹き付け、ガブリエルを壁へとぶつける。
突然のように吹いたそれは、魔法のような現象だっただろう。
「はぁ……はぁ……」
「なるほど、その『翅翼』……『フェイタル・レバーサー』か……。それにしても、妙だ。キミの妹はたしか……いや、これがグリゴリに綴られたシナリオ……。なら、もう一度か」
視界が虹色に染まるのがわかった。
ガブリエルへの好意と愛着が湧いてくるのがわかる。だが、それがまずいこともわかる。
あぁ、だからレネ……お前だけは不幸にはしない。絶対に幸せにする。
レネ、レネ、レネ。
「くぅ……」
天井を崩した。ガブリエルの頭の上の天井だ。
落下する瓦礫に、ガブリエルは気付き見上げる。
あまり戦闘に長けない彼女には、対応する術がない。
「まぁ、ここまで出来れば上出来か……」
納得したように呟いて、その身体は瓦礫に押し潰される。
ガブリエルの本体はその身体でなく情報だ。自由に情報を移動させられるガブリエルは、きっと今の体の機能が止まる前に、その情報をどこかに移動させただろう。押し潰された身体は抜け殻だ。
それにしても、今回は運が良かった。『フェイタル・レバーサー』が近くにあり、扱えたからこその撃退だった。
「うぐ……。あが……っ」
猛烈な頭痛だ。
ガブリエルに脳の情報を無理やり書き換えられたからか。いや、生き返ったばかりなのに、無理をしたからかもしれない。
とにかく、立っているのも辛い状況だった。
そのまま倒れ、俺は意識を手放していく。
***
「はぁ、全く。最悪ね……あの女」
あの後、比較的ガブリエルの攻撃を受けて軽症だったサマエルが、俺たちのことを運んでくれたらしい。
「最悪でも、構わないかな」
その声は、サマエルには届いていないようだった。
それは、俺にだけ見える幻覚のようだった。
「…………」
「キミの頭を間借りさせてもらうことにしたから、よろしく頼むよ」
ガブリエルという情報が、俺の頭に刻まれてしまっているようだった。
こんなことが可能とは思えなかったが、現に起こってしまっている以上、認めるしかない。
「あんなもの……偽物……。偽物に決まってます。絶対に偽物。今の技術では可能ですから……。ええ、偽物です」
「哀れだね、ラミエルは。ふふ、生き返るときにボクが戸籍をいじっておいたから、婚姻関係は解消されているのに……。それが一番の成果かな。あぁ、ボクの勝ちだよ」
高らかにラミエルの前で勝利宣言をしているが、俺にだけ見える幻覚で、ラミエルには見えていない。
それにしても、婚姻関係が解消されているというのは俺にとって、都合の良いことだった。あんなふうな強引な結婚は、俺の本意ではないものだ。当分は伝えないでおこう。
「…………」
「ふふ、一緒だよ……」
幻覚は、幸せに俺の肩にもたれかかる。
これからも、こんな幻覚に付き纏われるのだ。頭が痛くなってきそうだった。
「……ラル兄……」
レネはじっと、俺のことを見つめていた。
登場人物紹介
ラル兄――主人公。七割くらい死んでた。
レネ――永遠の妹。よくわからない機械はとりあえず、触って動かしてみるタイプ。
ラミエル――愛する夫が自分といるときより違う女といるときの方が楽しそうな笑顔を浮かべているのは辛かった。
サマエル――ポンコツ。特になにもできていない。
マリア――スマホ歩き系少女。娘大好き。
エリザベス――大往生。母親大好き。
ガブリエル――主人公とイチャイチャした。
主――部下が攻撃の際に、なぜかいちゃいちゃビデオレターを送っていて困惑した。




