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44.『神託』の天使

 夢を、途方もなく遠い夢を見ていたような気がした。


 起き上がる。密閉されたガラスのような材質でできた容器に入れられているようだった。

 中から蓋を開ける。


「ど、どうして……? 勝手に『フェイタル・レバーサー』動き出して……」


 呆然とするラミエルだった。

 今ひとつ状況が掴めない。ここはどこだろうか。


「ラル(にい)……!!」


「レネ!!」


 抱きついてきたレネを抱き返す。

 涙を流しているから、たぶん心配をかけてしまったのだろう。


「はぁ、全く、どうなることかと思ったわ」


 白い少女はそう言って、自身の持つ兵器を停止させる。


 だんだんと記憶が戻って来た。そうだった。俺はナイフで刺されて……。


「死にかけてたのか?」


「いいえ、死んでいたわ」


「死んでた……!?」


「だから、その工業用の『フェイタル・レバーサー』でどうにかしようとしたわけ。あなたが死んでいたおかげで、そこのラミエルが手に追えなくなった。私も手を貸すしかなかったわ。自分の身くらい自分で守りなさい」


「あぁ、すまない」


 たしかに、ラファエルのしぶとさを思い出せば、『フェイタル・レバーサー』には死者を蘇らせる力くらい、あって当然なのかもしれない。


「…………」


 ラミエルといえば、呆然としたまま、無言で訝しむようにこちらを見つめていた。


「ラル(にい)……! 本当に……!」


 強くレネが抱きしめてくる。ラミエルの気持ちはなんとなく察しがついた。


「そうだ、それで……俺を刺し殺したやつは……あぁ、痩せててメガネの……」


 ラファエルの襲撃の際に一緒に車に乗った男だった。

 あの車に乗っていた三人は、ラファエルに制圧されてしまっていたが、なんとか死だけは免れていたんだ。


「あの方には、相応の罰を降しました。安心ください」


「相応の罰……? あの男は、神と会った、神の命令だと言っていた。あいつ単独で起こしたわけじゃない」


「ええ、わかってます。ガブリエルの干渉の痕跡がありましたからね」


「ガブリエル……?」


 ガブリエルはたしか、終盤に出てきて、その『スピリチュアル・キーパー』の力を用いて、()()()の仲間たちの関係をズタズタにした女だ。

 そのせいで、ただでさえ、不利だった()()()たちは、険悪なムードのまま十全な力を発揮できないようになり、最後の闘いへと挑むことになる。


 そんなガブリエルが力をふるっているともなれば、あの地下で機械に反抗しようとしている彼らは、大変なことになっているに違いない。

 彼女自身、戦闘能力は大天使の中で劣る方だから、早く見つけて倒さなければ。


「やぁ、ボクの話かい?」


「……!?」


 銃声が響く。


 白い少女が、撃った――『白い翼』は展開されていないからこそ、誤射だろうが――( )銃弾が明後日の方向へと飛んでいる。


「やれやれ、ボクはあまり……戦いは嫌いなんだ。平和的に話し合いでもしようじゃないか?」


「ガブリエル?」


 サマエルと、ラミエルと、戦力が揃っている。

 なぜ、こんな状況の中でてきたのかはわからない。なにか狙いがあるとしか思えなかった。


「あなた……さんざん、金儲けのためにこの人を利用した癖に……っ。こんなふうに都合が悪くなったから殺すだなんて……!」


「人聞きの悪いことを言うな、全く。ボクもキミみたいに裏切られて傷ついたクチだっていうのに、もう。だから、あの一刺しは正当なものさ……まぁ、蘇ったんだからいいじゃないか」


「ガブリエル……あなたのことは許しません!」


 電磁気の翼を展開するラミエルだ。すでに臨戦態勢だった。


「別に許してもらわなくとも構わない。すぐに、もっと許せなくなる」


 ガブリエルも、翼を展開する。


 それは『天使の虹翼』。

 ガブリエル――『神託』の天使――自律式脳干渉透写兵器。

 彼女の持つ武器は『スピリチュアル・キーパー』。

 その情報解読能力、情報記録能力から、機械と生体の間でさえ、情報を移動させることが可能となる武器だった。


 広げられたサイケデリックな『虹色の翼』は、干渉を受けた脳が、その負荷により見せる幻覚。


 気がついた時にはもう遅かった。


 記憶が……流れ込んでくる。


 ――これは……ガブリエル? 俺とガブリエルは愛し合っていて……それで……。


「う、嘘です……っ!? こんなの嘘です……! そんな……っ! わたくしはどうしたら……っ!?」


 ラミエルは涙を流しながら、無気力に地面に座り込んでいる。


「ら、ラル(にい)? な……んで……」


 俺の隣のレネは、ガブリエルに何かされてしまった衝撃か、気を失って地面に倒れてしまう。


「そ、そんな有り得ない……なんで……!? なんてことなの……ありえない……!? こんなの……!!」


 サマエルはサマエルで、錯乱してしまっているようだった。


「さ、これで邪魔者は当分動けないだろう。こうも上手くいくなんて、『(■.■.■.■.)』の導きを感じるね。さぁ、ボクたちは行こうか……」


「行こうって……」


「遊園地の続きだよ。ボクたちの子どもを作るんだっただろう?」


 ガブリエルは、笑顔でそう言った。

 そんなことをガブリエルと話していたような気がする。ダメだった。さっき、頭への干渉を受けて、記憶が混濁してよくわからない。


 そのまま俺は手を――、





ガブリエルの イチャイチャビデオレターの こうげき!

こうかは ばつぐんだ!

しゅじんこうパーティは かいめつした!

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script?guid=on 一気読みするなら ハーメルンの縦書きPDF がおすすめです。ハーメルンでもR15ですが、小説家になろうより制限が少しゆる目なので、描写に若干の差異がありますが、ご容赦ください。
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