表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/105

26.エピローグ『再生』

 それは世界に刻まれた……予定された()()だった。


「く……くふふ……。分子レベルに粉々にされた程度で……っ! このワタシが……っ! 消えてなくなるわけがないだろう!!」


 一度、高熱により分解された分子からの再構築。自然の()()としてそれが起こる可能性は、天文学的。まさに奇跡と言うべき事象だ。


「――――」


「……っ!! 誰だ?」


 ラファエルは振り返る。誰かの気配を感じたのだろう。

 いま、蘇ったばかりのラファエルは無防備。言ってしまえば、この再構築は賭けだった。持てる情報全てを、自らを存続できる方法で使い切って、ようやく、できるかどうか。賭けには勝ったが、次に攻撃をされれば、『再生』の天使といえども簡単にやられてしまう。


「…………」


「なんだ……ミカエルか……」


 わたしのことを見て、ラファエルは警戒を解く。同じ大天使。わたしたちは知性あるアンドロイドとして、共に戦った仲間だった。


「…………」


「くく……弱っている今、このワタシにトドメを刺しにきたのかと思ったぞ……。やはり、恋はライバルが少ない方がいいからな……」


「過去のことは、過去のこと……」


 わたしには彼女たちのように執着するような心はない。この世界をより良くするため……わたしはそのためだけに稼働している。


「ふふ……あぁ、ワタシもずっと昔に……ふっきったつもりだった……。けれどだ……もう一度会って……声を聞いて……あぁ、ワタシの身体は言うことをきかなかった」


 顔を赤くし、小刻みに震えて、ラファエルは歓びの表情をする。彼女は裸だ。それを見てしまったから、同じ女性としてわたしも恥ずかしくなる。


「服は……」


「身体を再構築するので精一杯だった。ワタシは悪くない」


「…………」


 ラミエルに服について言われたことが、まだ心に引っかかっているのだろう。わたしの注意に不快感をあらわにしている。


「それにしても、ミカエル……。どうせ見ていたのだろう? 二対一でワタシは追い詰められたんだ。手を貸してくれたってよかったじゃないか……?」


「あなたは命令を守らなかった。手を貸す義理はない……」


 ラファエルは本来ならば奪われた『円環型リアクター』を奪取するために向かったはずだ。それなのに私情を優先し、任務を途中で放棄した……男を巡り戦う必要のないラミエルと戦い、挙げ句の果てにはこのやられようだ。救いようがなかった。


「手厳しいな……。いつも身内にも、人間たちにもだだ甘なくせに……そういうところだぞ? そういえば()()はお前の妹だろう? ワタシは手酷くやられてしまったが、なんとかならないのか?」


「あれはあの子の選んだ道。わたしがなにかを言う必要はない」


 あの子は人間だから――。

 あの子はあの子の道を行った。道を違えてしまったけれども、あの子はわたしの誇りだった。


「人間……人間か……。と……そろそろだな……」


 彼女は地面に手を翳す。一度溶かされ硬くなった地面が割れ、まるで逆再生のように、その球体は、『円環型リアクター』は彼女の手の中に収まる。


「…………」


「それにしても、二対一だ。あのままだったら、なぶられて捕らえられてしまっていたから、こうして死んだふりをするしかなかった。()()は昔から勘が鈍いからな……案の定、ワタシが最後に攻撃の妨害ではなく再構築の仕込みをしたことに気がつかなかったよ」


 ラファエルは、起こす事象を口に出す癖がある。けれど最後、電磁気力により失敗したと思われた一手は、妨害とそう口で言っただけ。実際に進めていたのはやられた後の再生への前準備だった。


 その『フェイタル・レバーサー』の力により、彼女の再生が世界に約束された瞬間だった。


「『円環型リアクター』……」


 ラファエルは『円環型リアクター』に嫉妬していた。その境遇を思えば、『円環型リアクター』に思うところがあるのは理解できる。

 だからこそ、今回の戦いでも、そのリアクターを使ったことは予想外だった。


「ふふ、ワタシもいつまでも拗ねているわけにはいかないということさ。愛する男を手に入れる、どんな手でも使うべきだった」


「……そう」


 手に持った果実の大きさのそれ。ラファエルは口を大きく開け、まるまる飲み込む。

 喉に詰まってしまうと心配したけれど、それは杞憂だった。正常にそれはラファエルに取り込まれる。


「さぁ、どうする? これから、サマエルの『円環型リアクター』の奪取に向かうか? ワタシは十分回復したぞ? ふふ、倒したつもりだったんだ……きっと驚くだろうな……」


「いえ『(■.■.■.■.)』は一度、退避することをお望みになっている……」


「そうなのか……」


「それと……グリゴリのシナリオが残っている可能性がある。気をつけて……」


 とうの昔に滅ぼされたはずだった。今更になって……嫌な予感しかしない……。


「グリゴリ……グリゴリか……。ずいぶんと懐かしい名前だな……」


「わたしは先にいく……」


 もう伝えるべきことは伝え終わった。ここにいる理由はすでにない。わたしには人の世の為に、やるべきことがたくさんあった。


「ふふ、ミカエル。ラミエルは結婚していた。あれは死んでも離婚できないやつだ……。いっそ、あれだ。一夫多妻の法案を通した方がいいかもしれない……協力してくれないか……? と……もういないか……」


 けれど、取り残されたラファエルのことは見ている。

 わたしは、どこにでもいるし、どこにもいない存在だから。


「…………」


 記憶の彼方に消えてしまった情念が灯らぬように、今日も皆を見守っていく。



登場人物紹介


ミカエル――ロリ。どこにでもいるし、どこにもいない。今はいないが、前話の後書きに出演していた。多分どこにでもわいてくる。


ラル兄――主人公。むしろヒロインかもしれない。


ラミエル――小姑問題、愛人問題でストレスが溜まった。愛する夫で発散した。


レネ――永遠の妹。あまり登場しなかった。


サマエル――ポンコツ。言ったことが間違っていることが多い。


ボス――磁気単極子ってなんだよ……。


ザック――犠牲者その一。アンドロイドが良い声で喘ぐようになるプログラムを持っているらしい。


ジェイク――犠牲者その二。狂信者。メガネ。


ナオミ――犠牲者その三。体格に恵まれている。強そう。


ラファエル――変なプログラムがなくてもいい声で喘ぐアンドロイドだった。


(■.■.■.■.)――命令を守らなかった部下が、なぜか失踪した部下と男をめぐって戦っていて困惑した。



おまけ

主要人物ごとの視点別好感度順相関図



主人公視点


レネ――妹。


サマエル――ポンコツ。


ラミエル――基本は優しい理想の女性だが、自分のことになると頭のおかしいアンドロイド。


ラファエル――すごく顔がいい。頭のおかしいアンドロイド。



ラミエル視点


主人公――夫。


サマエル――姪のような存在。


レネ――小姑。


ラファエル――夫の愛人



ラファエル視点


主人公――恋人。


ラミエル――ストーカー。


ミカエル――上司。


サマエル――ポンコツ。


『円環型リアクター』――仇敵。



レネ視点


主人公――運命の相手。


サマエル――女狐。


ラミエル――泥棒猫。


ラファエル――雌猿。



ボス視点


ラファエル――いい胸。揉みたい。


ラミエル――いい尻。撫でたい。


サマエル――いい脚。挟まれたい。


主人公――見ている分には楽しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on 一気読みするなら ハーメルンの縦書きPDF がおすすめです。ハーメルンでもR15ですが、小説家になろうより制限が少しゆる目なので、描写に若干の差異がありますが、ご容赦ください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ