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105/105

105.誰も貴方には届かなくて

「マス、ター……?」


 ありえない。

 時空の歪みは感知できなかったから、テレポートだろう。

 声なんか、届くはずがない。


「ラル(にい)! あのね、この人たちが私に酷いことを……」


 あからさまに媚びたような猫撫で声だ。今までの荒い声色とは違う。


「そうなのか? お前たち」


 こちらを鋭い眼光で見つめてくる。彼の怒りが私たちに向けられているとわかった。


「ま、マスター……こ、これは違くって、ですね……」


「ジョシュア……っ!! オマエぇええ!! よくもぉおお! ボコボコにしてワタシが連れ帰ってやるさ!」


 ラファエルは感情を表に出し、彼に対して攻撃を放つ。弾丸ほどにまで加速した小石の混ざった風だった。


「アビゲイルか。危ないな」


 彼が使ったの『焔翼』だった。簡単な壁を作り、いとも容易く、ラファエルの風を防いでみせる。


「その名前で呼ぶのはやめてくれ……。今は仕事中だ。恥ずかしい……」


「いや、あぁ、すまないラファエル」


 二人のやりとりに苛立つ。

 見れば、彼の後ろに隠れる彼女も、表情に苛立ちを隠し切れてはいなかった。


「く……っ」


 アザエルはシナリオを演算している様子だが、あまり著しくないようだった。技術革新とアザエルは言っていたが、グリゴリは、彼がその気になると途端にダメになるのは相変わらずだ。


「アザエル、閉じ込められてるって話だったが……。あぁ、そうか、ウリエルの力で揺らいだか……それだとグリゴリと隔離……いや、小型化か……」


「……そうです。マスター、すごいですよね?」


「なるほど、すごいな……こんな感じか」


 彼は『焔光』を操り、物質を造り出した。それは人の臓器の形にも見える球体だが、否応がなく私たち大天使は不快感を受けてしまうような異質さを放っている。

 間違いなく、グリゴリの本体だ。


 わたしたちの間にあった時代のギャップを一瞬で詰めてみせられる。


「くっ……、ワタシはお前のそういうところが嫌いなんだ!」


「ラファエル、お前もすごいよ。ガブリエルのところで使わせてもらったが、ずっと改善されてた」


「そういうところが嫌いなんだ!」


 彼女の来歴を汲めば、そう言いたくなる気持ちもわからなくない。

 進歩した技術を理解し、すぐものにする彼は並ではない。ラファエルやアザエルの血の滲むような積み重ねも、彼にとっては一瞬なのだ。


 ただ、今、本当に着目すべきは、そこではない。持ってはいけない相手が『アストラル・クリエイター』を持ってしまっているということだ。これから何が起こるかは、想像に易いだろう。


「ラル(にい)! やっちゃって!」


「とりあえず、閉じ込めるか」


 彼の放つ『焔光』が形をなし、手に『メカニカル・アナイアレイター』が握られる。

 理外の機構を、彼はまるで簡単に土でもこねるかのような手軽さで造りだしてみせた。


 次の瞬間には『氷翼』が現れ、彼の作る『障壁』が、わたしたち三人それぞれを分断し、瞬時に囲もうとする。

 まずい。


 一歩踏み出し、まずアザエルに触る。『テレポーター』で彼女を跳ばす。


 次に、ラファエルのところに空間を跳びこえて行く。

 現れたのはラファエルのすぐ横だ。

 ほとんど、彼女はもうほとんど『障壁』に囲まれていて、あとわずかで完全に隔離されて出られなくなるところだった。


 というか、不思議だった。なぜかベッドの上にラファエルは座っていた。気のせいか、服がさっきと違う。


 視線を感じて振り返ると、彼がいて、こちらを見ている。

 とにかく時間がない。ラファエルに触って、わたしごと空間を跳躍する。


 なんとか見逃してくれたようだった。

 

「ここは……?」


「ここは三百光年先の惑星。通路未開拓。あの人が正攻法でくるには、少なくとも三百年はかかる」


「そうか……」


 わたしの気のせいか、ラファエルは残念そうに見えてしまう。


「ねぇ、アザエル。時間」


「いいよ? でも、どうして?」


 すでにいたアザエルに、時間を同期させる。やはりというか、わたしの方が早まっていた。

 ずれたのは、『障壁』に囲まれそうだった、ラファエルと彼のいる空間の中だろうと想像がつく。


「はぁ……」


 思わずこぼれたため息だった。

 あの人とラファエルの関係を考えれば、自然な成り行きだったと言えるかもしれない。いや、それでも時と場所と状況くらいは考えないものだろうか。


「それで、これからどうする? ママとか、ウリエルさんとか残してきちゃってるけど……」


「わたしの支配領域も完全に乱されてる。座標がわからない以上、回収は不可能」


「それなら、大丈夫じゃないか? こっちから手を出さない限り、何もしないだろうって、あの男も言っていたしな」


 ラファエルは気楽なことを言っている。

 絆されたのだろう。


「とにかく、対策をねる。三人で力を合わせればいい。あの人は、あくまで人間。さすがのあの人も、二つの力を合わせるので限界のはず」


「本当に? そう思う?」


「そう願うしかない」


「はは、なかなか面白くなってきたじゃないか……」


 そうして、希望的観測なまま、わたしたちは彼との対決を余儀なくされた。


登場人物紹介


主人公――女性関係についてはほとんど諦め始めた。


レネ――妹。ラスボス。


サマエル――実は主人公は自分のことが好きなんじゃないかと思い始めている。逃走中。ポンコツ。


ラミエル――引きこもりを引き摺り出した。追跡中。


ラファエル――主人公を調教してた。長めなのは性癖と、そのときくらいしか主人公が休まないから。


ガブリエル――サリエル相手は本当に消滅するから逃げた。昔は、離れたところから理解者ムーブをしてた。子ども製作中。


ウリエル――対サリエルの貧乏くじを引かされた。主人公が記憶失ってることはよくわかってない。ご褒美お預け中。


サリエル――大天使の中では一番強い。ポンコツ二号。


アザエル――ママ大好き。思い通りにいかないことばかりだった。


ミカエル――ずっと見てた。わからないことばかりらしい。


マザー――みんなの母親。なにかを考えていた。サリエルの戦いのあと、反逆したらしい。


『ジュピター』――出オチ。


『ウラヌス』――かませ。


『ソル』――かませ二号。


サリエル姉――戦いの世の中でも、彼女は幸せに天寿をまっとうしました。


(■.■.■.■.)――部下たちがたった一人に手も足もでず困惑した。



おまけ 主人公の女性の好み


レネ――妹。ムリ。


サマエル――怖い。ムリ。


ラミエル――やばい。ムリ。


ラファエル――気難しい。見た目は好みドストライク。真っ当に誘われたら断れない。


ガブリエル――よくわかんないけど好き。優しい。


ウリエル――けっこう性格が合う。割と友達感覚。


サリエル――罪悪感。覚悟が必要。




***



 ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

 いつものように、次の章を書き終えるまでお時間をいただきます。申し訳ないです。


 評価、ブックマーク、感想、いいねなど、応援いただきありがとうございます。大変感謝しています。


 よかったら、まだの人は広告の下までスクロールして、評価の★やいいね、感想などをよろしくお願いします。作者の日々の活力になります。

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script?guid=on 一気読みするなら ハーメルンの縦書きPDF がおすすめです。ハーメルンでもR15ですが、小説家になろうより制限が少しゆる目なので、描写に若干の差異がありますが、ご容赦ください。
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