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無敵な彼女は日常の象徴

――数日後、中津宮学園、家庭科室。


 今日は調理クラブのクラブ活動の日であった。調理クラブ部長、楠木葉名と下っ端部員古河遊聖と、一番ヶ瀬環となぜかいる戸山琴子がマカロニグラタンに舌鼓を打っていた。

「いや、ちょっと心配だった時もあったけど無事にマカロニグラタンを作れてよかったね♪」

 葉名は何も知らない――いや、実際に何も知らない無垢な表情でマカロニグラタンを見渡していた。遊聖は少し苦笑いしながらマカロニグラタンを食べていた。しっかりと篝用のマカロニグラタンのタッパーも準備して何も問題はなかった。しかし気になるのは琴子が熱っぽい視線を帯びていることだった。

 (戸山さん、何かにらみつけてくるんだけど……俺、何か悪いことをしたかなぁ?)

 遊聖はここ数日の出来事に関して記憶をたどってみるが思い当たる節が何一つなかった。遊聖は琴子の関して頭をひねっていたが、当の本人はこう考えていた。

(古河くん……あなたの葉名への想い、じっくり見極めさせてもらうわ! そして遊聖くんのほとばしるパトスをわたしの創作のイデアに昇華するのよ)

 遊聖と葉名の関係をものすごく勘違いしていた。

 その様子を見た環はマカロニグラタンを頬張りながら穏やかな表情で見つめていた。

「一番ヶ瀬先輩、どうしたんですか?」

「葉名ちゃん、わたしは中津宮学園一の名探偵として常に難事件と戦っている身なんだけどね~、たまにはこんな平和な日常もいいもんだな~って思うんだ」

「いや、一番ヶ瀬パイセン、ウチの学園は年柄年中、事件が起きているような学校ではないと思うんですけど」

 思わず遊聖はツッコミを入れた。

「あはは、でも平和っていいもんだね。のんびり自分たちで作ったマカロニグラタンを食べれる時間なんてきっとそんなにないと思うよ」

 そういって葉名は笑った。それはまさしく日常の象徴だった。遊聖は心の中でこの平穏な日常を守っていきたいと思った。


◆◆◆◆◆


「千方様、弁当を用意してきたとおっしゃいますけどこれはなんですの?」

 那波透子は藤原千方が用意した弁当に容赦なくツッコミを入れていた。

「何って全部冷凍食品だが?」

「おかずが全部、冷凍食品なのは百歩譲って許しますわ……しかし、ごはんの部分がパックライスなのはいただけませんわ! せめて弁当箱に白飯ぐらい詰めてほしいですわ!」

「俺は電化製品のことはよくわからん……四鬼に教えてもらいながらやっているのだが、炊飯器はまだ勉強していないので難しいのさ」

 千方は開き直った。

「……今度、千方様の家に遊びに行かせてもらいますわ! そしてわたくしが土鍋での炊飯のやり方を教えてあげますわ」

 那波透子は土鍋派であった。

「土鍋で飯を炊けるのか? そんなこと初めて知ったぞ」

「大丈夫ですわ……すぐに使えるようになりますから」

 そんな透子と千方のやり取りを見て謎のスライム、隠形鬼は静かにほほ笑むのであった。

「平和っていいなぁ」

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