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藤原千方は暗躍し無敵な彼女を狙う

不気味なほどに人気のない公園の一角。黒髪ロングのスーツを着た女が何者かを待っていた。

「千方様、遅いわね……突然呼び出して自分は遅刻とはコンプライアンスがなってないのですの?」

 思わず主に対する愚痴をこぼす女をよく観察すれば、人間ではない妖魔のオーラが僅かに放っているのがよくわかるだろう。彼女は那波透子。妖魔である。彼女の出自は悪逆非道の九尾の狐、玉藻前が滅したときに現れた殺生石から生まれし妖魔、オサキであった。彼女は人知れず人間界で暮らし、虎視眈々と復権を狙っていたのだ。彼女が主に仕えるのも究極的にはそのためなのだ。しかし、その主が待ち合わせ先に遅刻とは最近の妖魔はなっていないのではないか?透子はそう思った。


 不意に公園の空間が異常に盛り上がり、謎の存在感を放つロン毛の和装の男が出現した。その瞳は不気味なほどに紅かった。

「すまない、少し寝過ごした」

 そしてその男はまったく悪びれない態度で透子に話しかけた。

「千方様、遅いですわよ……呼び出しておいて遅刻とはいい度胸ですわね」

「まぁ、世の中こういうことは良くあることだ。心の中で納得しろ」


 その男――藤原千方は微妙に納得できないようなことを言い出した。この男、いい加減だなと透子は思った。

「まぁ、そんなことは別にいい……葛葉姫のことだ。最近何か変化はあったか?」

「特にこれといった変化はありませんわ……相も変わらず退魔師が葛葉姫の周囲をウロチョロしているぐらいですわ」

 透子は率直に葉名の状況を説明した。特に虚偽を述べる必然性はないからだ。

「そうか、急激に人の身に余る妖力を持て余すような状況にはなってないのか……まったくこの街の周辺の妖魔の動きは鈍いしままならぬものだな……」

 千方は大げさに肩をすくめる仕草をする。中津宮地区に棲んでいる妖魔は概ね大人しく刺客には向いていない。

「千方様自慢の四鬼はお使いになりませんの? 自前の便利な手足でしょう?」

 透子は当然の疑問を尋ねてみた。藤原千方と言えば四鬼で有名だ。

「紳士協定の関係で自前の兵隊を動かすのは面倒なのさ……それに退魔師は俺の手口を知っているからな……単純に使いづらい」

 藤原千方は四鬼を使わない理由を述べたてる。藤原千方もまた歴史上の有名人なのだ。


「まったく世知辛い世の中ですわね……じゃあ私は部屋に帰りますわ」

 透子はとりあえず会話は済んだとして自分の部屋に帰ろうとしている。日常生活の一部を藤原千方との会話を割いているのだ。千方の会話は疲れる。

「帰る前にこれを持っていけ……バナナミルク味だそうだ。食べてみるがいい……トブぞ」

 そう言うと千方はバナナミルク味のチュッパチャップスを透子に投げ渡した。透子は軽々と受け止める。

「またジャヌコのチュッパチャップスの自販機で手に入れてきましたのね!?」

「そうだ、ジャヌコには何でも売ってある……人類の英知の結晶だ」

 千方はジャヌコニュービーみたいな発言をした。透子は心の中で(千方様は妖魔は文明に疎いと思っていますわ……誰か矯正してほしいですわ)と思った。

 既に千方は透子に背を向けると公園に風景を溶け込むように消えていった。明らかに過剰演出だ。

「はぁ、まったく千方様には困ったものですわ……部屋に帰ったら積読していたウェブ小説を崩さなくては……」

 透子は肩をすくめながら自分の部屋に変えるために公園から出た。妖魔も文明の恩恵を享受できるほどには余裕があるのだ。

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