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退魔師は無敵な彼女を守る

今日も今日とて同じ日常が続いているー―そう思われているが少し違う。日常の陰に潜む妖魔が虎視眈々と人間を狙っていた。無辜の市民を妖魔の魔の手から守るために人知れず戦う存在もいた。その存在は退魔師という。妖魔と退魔師の戦いは静かに激しく連綿と続いていたのだ!

 中津宮学園、生徒の自主性を重視し、個性的な生徒が在籍することで地域で有名な学校であった。在籍する生徒は賑やかだが平和な学園生活が日夜繰り広げていた。そしてそんな平凡な学園生活を守ろうとしている退魔師が人知れず学園の平和を守らんとしていた。


「遊聖くん、ちょっと買い出しに行って来てもらえないかな?」

「はいはい、わかりましたよ、葉名部長」


 その退魔師、古河遊聖は、ゆるふわな雰囲気を纏った茶髪の少女に買い出しメモを渡されていた!

 なぜそんなことが起きているのか! 退魔の名門である古河家に生まれた遊聖は古河家の当主で退魔界で歴然とした強い影響力を持つ祖父、古河泰道からある使命を下されたのだ!伝説の千年妖狐葛葉姫の転生体がこの人間界に顕現した。葛葉姫の強大な妖力が邪悪な妖魔に利用されたら人間界は大混乱に陥るだろう。葛葉姫の転生体を監視し邪悪な妖魔から守護せよという使命であった。それが遊聖に下された使命であった! そしてその葛葉姫の転生体こそ、ゆるふわな雰囲気を纏った茶髪の少女であった。その名前は楠木葉名と言った。遊聖は葉名と目的を秘匿しながら接触し、調理クラブの部長と部員という関係を築きあげたのであった!

 葉名は今のところ自分が葛葉姫の転生体だということにまだ気づいていない。全ては順調である。このまま彼女には平穏な日常生活を送ってもらう。恐らくそれが人間界にとって一番平和であるシナリオである。


 校門を出ると人気のない路地裏に出て買い物メモを確認する。

「今日の買い出しは、この買い物メモの内容から察するにマカロニグラタンか?」

 遊聖は調理クラブでの活動の成果として買い物メモの内容から食事のメニューを推察できるようになった。中津宮学園入学前の遊聖と比較して著しい進歩である。

 遊聖は買い物メモを確認するとおもむろに花札状の紙を取り出して放り投げた。花札状の紙は瞬時に人型に変じる。その容姿は短い白髪に犬耳が生えていた赤目の少女であった。あからさまに人間ではない。それもそのはずであるこの犬耳少女は遊聖が使役する式神であった。

「篝、ちょっと俺の代わりに買い出しを代行してくれないか」

「主、またですか? 式は術者の使い走りではありません……こんなことをしていると本当にご当主様に言いつけますよ?」

 篝と呼ばれた式の少女は遊聖を諫めるような口調で対応する。

「これも人間界の平和のためだ……俺は葉名を護衛する使命があるから学園を離れるわけにはいかないのだ……わかってくれ」

「はぁ……わかりました。その代わり報酬として完成品をおすそ分けしてもらいますからね」

 篝はジト目で見つめながら買い物メモを手に取ってスーパーに向かって走り去っていったマカロニグラタンをおすそ分けするのは痛いが人間界の平和を考えれば安い出費だ。


「まったく葉名があの伝説の千年妖狐の転生体だとは未だに信じられないな」

 遊聖が疑問に思うのも無理はない。葉名の前世だと推定される千年妖狐、葛葉姫は平安時代を生きた伝説の陰陽師、安倍清明を育てたという伝説が残っている。いわば歴史上の記録に残る伝説の妖魔である。その千年妖狐の強大な妖力を持った少女が現代によみがえったのだ。それは人間界を揺るがす大事件である。あまりにも突飛で現実感を感じないのだ。

「なぜ現代日本に千年妖狐の転生体が突如令和日本に現れたのだろうか……木端退魔師の俺にはさっぱりわからん。それでもやるしかないんだよな」

遊聖はそんなことを考えても仕方ないと指名への決意を固めた。それと同時に篝に護衛を任せて自分が買い出しに向かうべきではないかと気づいた。今更、篝を呼び戻しても後のまつりだ。次からは気をつけようと遊聖は思った。

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