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第十九話 冒険者ギルド登録2

 二人をなだめるのにはいったん奴らのキルモンが目に入らないところに移動したほうがいい、そう判断した俺は二人の腕を取り引っぱった。だがビクともしない。このまま切りかかっても勝てる相手ではないのは理解してるのだろう。サトミは刀に手をかけつつも抜かないしミケは背中の弓に手をかけているがそこから先の動作をできずにいる。怒りと意地を必死で理性で抑え込もうとしているのが見て取れた。


 俺は二人を説得する材料をキルモンに求めた。これでもキルモンと決闘した経験がある(勝ったとは言っていない)。そこで俺は何か弱点になりそうな者を見つけて二人に耳打ちするつもりだった。二人とも頭ではここで勝負を挑むのは分が悪いこともここで勝負を挑む戦略的な意味もないことをわかっているはずだ。だから葛藤している。


酒と憤怒と未来への絶望に身を任せて上司をぶっ飛ばした俺とは違う。


 だが奴らを倒したい気持ちは十分わかる。だから分のいい勝負に持ち込むための作戦を告げてやりたかった。それには奴らのことをよく知る必要がある。そして、二人の手を取り朝日に煌く白いキルモンを見た。二人にリラックスを促すために口に出していってみた。


「奴ら、70年代の麻薬Gメンでも気取ってやがるのか?」


 ミケがわずかに俺を見たが目が合うと何も言わずに視線をキルモンに戻した。サトミは何の反応も示さなかった。


 キルモンはその巨体を横一列に並んでこちらに向かってきていた。門からの道は整備はされているが石畳というわけではない。土が踏み固められている。広さは馬車がすれ違えるくらいだ。その道を外れると芝が植えられているがずっと続くわけではなく途中からむき出しの荒れ地だったっり草木が生えているはずだ。それを踏みつぶしてやってきてるのだろう。


 本来はキルモンの顔に当たるであろう場所から人間の上半身が露出している。その上に跳ね上げられているのがドア兼キルモンの顔に当たる部分なのだろう。片手をあげながら笑顔を振りまいているようだ。すべてのキルモンはそこから旗を掲げている。


 全体的に少し丸みを帯びた貴族たちのキルモンと比べて合理的で無駄がない。だが色気やロマンも感じない。それゆえ戦うための道具として洗練されていて、正直怖い。ロマン溢れるロボットみたいな乗り物ではなく兵器。そう感じた。


 それぞれが形が違うということはきっと専用機なのだろう。もちろんあんなものを量産できないのだろうが。形は似通っているが金属のようなツヤであったり、人間の関節にあたる部分をまたがるようにホースのようなものがついていたり、何やら車のライトとライトの間にあるような切れ込みが脛や腕や腰についているようなものだったりそれぞれで個性があった。恐らく魔力の属性により動かしやすい形というものがあるのだろう。


 そんなところを縦ではなく横一列に並んでくるということは恐らくここで並んでいるであろう冒険者や行商人への演出。超大型魔獣を倒して、朝日を受けて煌く機体で凱旋する俺たち…… みたいな感じだろうか。


 自棄にゆっくりとこちらに向かってきている。そちらに向かって駆けだす奴らも現れた。横一列だったものが徐々に縦一列に変わっていった。それを機に沿道に並美始める無数の冒険者や行商人たち。まるでパレードだ。奴らに勝つには、まるで将棋、のように緻密に考えなければならないだろう。



「敵を知り己を知る。戦うためにやっておくべきことだろ? 俺たちも並ぶぞ」


 サトミは我に返ったように俺を見て頷いた。ミケも同様だった。デカブツゴブリンの死骸を邪魔にならないように脇によけると沿道に並んだ。俺は怪しまれないために回りに合わせて拍手をした。サトミとミケは俺を軽く見つめた。


「頭を冷やしてくる」


 そう言い残すとサトミはその場を立ち去った。ミケも後についていった。ミケは行きかけて振り返るとキセルを振って言った。


「落ち着いたらゴブリンのところに行くよ」


 俺は頷いた。


 徐々に近づいてとうとう化け物の死骸を運ぶ馬車が行き過ぎた。そこで初めて見えた。それぞれのキルモンの足元には数十人が固まりなにやら山車を引くようにロープを引いている。その前では大きな石や低木を刈り取るものがいた。その者たちはボロボロの貫頭絹のようなものを着せられ首輪がつけられている。みなうつむきやつれていて覇気がない。


 俺は言葉を失いながらただサトミとミケがこれを目の当たりにしないでよかった。そう思っていた。



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