第9話
第9話 魔女猫の捜索
――私の飼い猫を捜してきてちょうだい。
「それはいいけど」と、魔女の言葉を聞けば、
「おとといから帰ってこないのよ、うちのみーちゃん。
どうせいつかはご飯を食べに帰ってくるだろうけど、
そろそろ撫でてあげたいし、散歩にも付き合わなきゃいけないしで。
都市リュインの中にいるから捜してきてちょうだい。
報酬は古代スキルブックを売ってあげる、でいいわ。お願いね」
魔女から言われた言葉を胸に抱きしめ、俺たちは魔女猫の捜索に移った。
街路に出て、石畳の街並みを見渡した。
人、人、人、露店、屋台、だった。
「どこから捜すんですか?」
「こういう時、『オリジナルコピー』って使えないよなぁ」
「あー、『風の調べ』で調べてれば一発でしたね」
「そう」
他人の魔法じゃないですか、とビーチェは呆れて笑っている。
もうすでに『風の調べ』の効力や取得期間は終了している。
戦闘中でないから、いま誰かから有益な魔法やスキルをコピーすることもできない。
古代スキル『オリジナルコピー』の性能の低さを呪った。
この古代スキルを上げるために魔女猫を捜すというのだが、
今はっきり感じて思った。
――あ、これ無駄な依頼だ。
どうすっかなー、サボりながら捜してもいいけど、
何かオリジナルコピーで楽したいんだよな……。
てくてく歩きながら、ビーチェは「みーちゃんいますかー?」と言っていたが
そもそも見つかるわけなかった。
さすが魔女の依頼。
壮大なアホ2人に仕立て上げられてしまった。
「見つかりませんね~。よく考えたら猫捜すのって失敗して当たり前だった気がする」
「だよなぁ。魔女って性格悪いわ」
「相当イラつきますね」
必死に2人で歩いて捜したが、もう時刻は夕方どきになっている。
ごーん……ごーん……ごーん……。
修道院の鐘の音がどこからか聞こえる。
ん? あれ、そういえば、修道院系って告知で鐘を鳴らしてるけど、
こういうのってコピーしてもいいのかな。
『オリジナルコピー』を使った。
【――古代スキル『オリジナルコピー』 発動
修道院の『鐘の音色』をコピーします
情報伝達能力が向上しました】
「使用」
【――『鐘の音色』を発動します】
ごーん……ごーん……ごーん……。
俺が重複して鐘の音色を出したら、街の人たちがとても驚いていた。
「あー、これ使えねえやつだ」
「修道院の鐘の音色をコピーする人ってヤバいと思いますよ」
「うるせえ、ビーチェ。黙ってろ」
「クソ迷惑だったと思うなぁこの人」
マジで黙ってろ。
次、何をコピーするか。
今日中に魔女猫みーちゃんを捜したい。
そのために、有益な魔法とスキルをどこから何を、どうやってコピーするか。
その時、太陽を見上げて思った。
あ! 見張り人の目がいい!!
塔を見た。いる……、見張り人が、目を凝らして遠くを見ているのを、そこに発見した。
「ビーチェ。もう1回鐘の音色を上空に向けて使うから、ちょっと俺をかばってろ」
「は?」
【――『鐘の音色』を発動します】
ごーん……ごーん……ごーん……。
「ごらぁ!! てめぇさっきから何遊んでやがる!!」
「あっ、違うんです違うんです! 私たち魔女猫みーちゃんを捜してて!」
「ふざけんなよ、うるせぇんだよ!
なぁお前らさぁ、鐘の音色どうやって出してる!?」
「すみませんすみません!!」
その時、見張り人がこちらを向いた。
問題を起こす俺たちを、スキルか? 魔法か? のどちらかで凝視した。
よし、その優秀な眼いただくぞ。
【――古代スキル『オリジナルコピー』を発動します
見張り人の『天空の眼』をコピーします。
索敵サーチ能力が非常に向上しました。】
よーしよしよし。
これでみーちゃんを高いところから捜すぞ。
「あんたたち、ふざけないでよね。うるさいのよ!」
「あのお! アルドさん! あたし凄い怒られてる!」
「あぁ、悪かった悪かった。行くぞ、ビーチェ!」
「すっごい怒られたんですよあたし!」
そして2人で必死に逃げた。
ジグザグの街路を通り、鉄格子から上に登り、
修道院の鐘の高いところまでやっと来て、
スキルを使った。
【コピースキル『天空の眼』 発動】
視力が急激に良くなり、都市の風景が一望できるようになった。
あ、魔女猫みーちゃんがいた。
黒猫が屋根の上で昼寝してる。
こうして無事に発見して、みーちゃんを魔女の魔導古書店に連れて帰った。
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