第7話
第7話 魔法使い2人
古代スキル『オリジナルコピー』。
敵の技を完全にコピーする代わりに、戦闘中しか使えないデメリットがある。
そして、1回は回避か防御で受けなければならない。
今、スライムの大群からスキルをコピーしたいのではなく、
冒険者たちからコピーしなければならないのだ。
だから、本来は味方であるはずの彼らから、攻撃を受けるのが大事である。
ビーチェのように「攻撃してくれ」と言うのはあまりにも間抜け。
ここは上手くコピーの権限を得なければ。
「あんた、どいてろよ! ここは俺に任せろ」
「おっと」
相手方パーティーのラクスはスライム群に突っ込んで行くが、
俺は戦うフリをすることに決めた。
本当はスライム群なんてどうでもいいんだけど、
今は共闘しないとな。
こないだマスターコピーした『豪腕能力』と『刺突能力』から、
攻撃力が上がっているからスライムなら戦えるだろう。
俺は懐から小型の携帯ナイフを取り出して構えた。
「アルドさん! 私はどうしたらいいですか?」
「ポーションでも配ってろ」
「あ、はい!」
スライム群との戦闘が始まる。
ラクスは剣士であるみたいで、剣を振り乱して戦っているが、
いかんせん大振りすぎる。
そこを後衛らしい魔法使いの女の子2人が穴を埋めている。
「サーシャ、そっちは風をお願い。こっちは雷でいくわ!」
「オッケ! 『風魔法 ウィンドアロー』!!」
「『雷魔法 ライトニング』!」
ズドドドドド!
ラクスが前衛で粘っているあいだに、
女の子2人の魔法がスライムに突き刺さる。
コピーしても良かったが……
いや、まだアレじゃない。
まだ勝機を待つんだ。
ラクスは攻撃というか壁剣士一辺倒で、2人は攻撃魔法や防御魔法など、多彩な魔法を使い分けている。
そしてうちのビーチェはひたすら『ポーション投げ』で全員の回復中だ。
「ビーチェさん! ありがとう!」
「いえいえ、どういたしましてです!」
「アルド、お前1人でなにやってんだ!?」
「いや、悪い。ちょっと分析してたんだよ」
「戦闘中に分析とかやめろ。戦えよ!」
「分かってる」
こっちは何をコピーするか迷いながら戦ってるんだ。
悪かったな。
そうして、風の魔法と雷の魔法が戦場に響いたかと思えば、緑色の髪の、
風の魔法使いのほうが早くもMPが切れたようだ。
息切れしている。
「ごめん、ミア! MPがなくなっちゃった」
「早く充填して」
「うん!」
「『風魔法 風の調べ』!!」
大気が動く。
風が大いなるうねりを持ち、この領域を支配した。
コピー屋の分析脳が、自動的に働く。
空間支配系……? いや、サーチ系の魔法だ!!
あ、これいただき!
【――古代スキル オリジナルコピー 発動
サーシャの風の魔法『風の調べ』をコピーします
空間サーチ能力が向上しました。】
よし!!
俺がコピーしている間に、サーシャは続けて『マジックドレイン』も使っていた。
MP回復魔法だ。本当に優秀なんだな、こいつ。
しょうがないから、少しは戦闘に役立ってやるよ。
「コピー魔法『風の調べ』発動!!」
戦場に空気がまとい始める。
何かを探すように、何かを奏でるように。
サーシャは優秀だが、これはただのサーチ魔法で終わっていいものじゃない。
マジックドレインとのコンボを決めたように、風の調べを攻撃魔法の誘導役として使えば、
全体攻撃になる。
風の調べが、戦場に鳴り響く。
美しいものを掘り当てるように、風が綺麗な音色をはじき出した。
サーチ魔法の究極芸。
スライムを一網打尽するための、戦場一帯に広がる弱点誘導サーチ。
「えっ……あたしの風の調べ!?」
「悪いなコピーさせてもらった!」
風の調べが、スライムの弱点に攻撃魔法を誘導する。
と、なれば、あとはもう1つ。
「ミア! 『ライトニング』を全体に打て!!」
「あ、は、はい! ――天の雷よ、放て『雷魔法 ライトニング』!!」
チュドドドドドドド!!!
ライトニングがスライムの大群に突き刺さった。
真っ黒焦げになったスライムはやがて、魔石とドロップアイテムを落として霧散した。
戦闘終了。お疲れ様でした。
「お、おぉぉ……。あんた、魔法使いだったのか?」
「いや、それはそうなんだが……」
魔法発動。『風魔法 風の調べ』。
サーチ対象、付近の薬草。
戦闘後すぐに魔法を使うことによって、
辺り一帯の薬草が輝き始めた。
「よし、あとはビーチェ。薬草を採取するぞ」
「はいー!」
これこれ。
薬草の自動サーチがしたかったんだ、俺は。
【戦闘後 10秒が経過しました。
風魔法『風の調べ』 が取得魔法から消失しました】
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