第4話
第4話 vs 大男の冒険者
乗合馬車を降りると、俺は都市の関税を通って中に入った。
都市リュインは、独特の空気に満ちていた。
かつて都市間ごとに色んな政争や戦争があったと聞いたが、
この街は交商都市として栄えている。
主街路には商店街が並び、露店商が座り込んで店を出し、行商人が行き交っている。
俺は商人には用がなかったため、冒険者ギルドに行くことにした。
剣と盾の紋様の冒険者ギルドの中に入ると、喧噪に満ちていた。
カウンターに近づいて、受付嬢に言った。
「悪い。冒険者になりたいんだが」
「はい。承ります。こちらの用紙に記入事項をお願い致します」
「分かった」
羽ペンを取り、パピルス用紙にサラサラと必要な事項を書いていく。
氏名、年齢、所属、職業など……。
そのパピルス用紙を書いていると、後ろから怒鳴り声がした。
「だからぁ、お前が盗んだ金を返せって言ってんだよ」
「そんな……私……。だって、何にもしてません……」
「うるせぇ! ぶってんじゃねえ!」
「やめてください……」
可哀想に。
女の子が大男に詰められてブルブル震えている。
誰も知らぬフリをしていて苦笑しているが、
この冒険者ギルドでは有名なパーティーなんだろうか。
なんにせよ、言いがかりも甚だしいので、俺は助け船に入ることにした。
「ちょっと待てよ。いきなりあんた、何言ってんだ?」
全員の、――え? という顔がそこにあった。
「は……? お前、誰だよ。関係ねえだろ」
「関係ないかもしれないが、この子をそんなに責めたら可哀想だろ」
「こいつのせいで、金貨5枚は損したんだぞ! 外野が出しゃばってんじゃねえ!!」
冒険者の大男は、俺にナイフを向けて突っ込んできた。
あぶねえ――! とっさのところで横にジャンプして避ける。
よし避けた! これでコピーが使える!! と、瞬間的に本能でスキルを発動した。
【――古代スキル オリジナルコピー 発動】
きゅいいいん……
【――ラックスの『刺突能力』をコピーします。
攻撃力と命中と攻撃速度を得ます。
突き攻撃力が急速上昇しました。】
つ、突き攻撃……。
鋼の剣、折れてるんだよなぁ……。
どうするか、あ、そうだ――「これ、借りるぞ!」
「えっ、ええっ! そんなの何に使うんですか!?」
俺は羽ペンをカウンターから借り受けて、ナイフ相手に構える。
ナイフ vs 羽ペンの格好となった。
「は……? なんだ、そりゃ。だせえ! ハハハハ!」
「うるさい。いいから来いよ。羽ペンでも戦れるんだよ」
オリジナルコピーのおかげで、命中率まで高まっている。
これなら、イケるかもしれない――武器破壊が。
もう一度、突っ込んで来い、冒険者。
頭に血の上がった大男は、じりじりと様子を見た後、俺にナイフを構えて突っ込んできた。
「死ねえ!」
「はっ!」
ナイフの切っ先が、俺の羽ペンのほんの数センチにも満たない攻撃領域にヒットした。
すると、ナイフと羽ペンが先端で激突する形となり、
バキィィィィン!!
どちらも粉々に砕け散ってしまった。
「え……、え、あれ……?」
「ふう。羽ペンでナイフを武器破壊してやったぜ。悪いな、受付嬢」
「い、いえ。別にいいんですけど」
「どうする。兄さん。まだやるかい?」
「う、う、うわぁぁぁぁ! こいつ、化け物だぁぁぁぁ!?」
大男は後ずさって、冒険者ギルドからほうほうの態度で逃げ出していった。
「あっ、あの……大丈夫ですか……?」
「ん、あぁ。大丈夫だよ」
絡まれていた女の子が俺に近寄ってきた。
「あの、なんというかすごい戦いでしたね」
「まぁな」
こいつを助けるという目的より、オリジナルコピーが使いたいだけだった。
クソ面白いぞ、このスキル。
絶対勝てるんだが。
「あの……お礼がしたいのですが、ここじゃなんなので……」
「それなら移動しようか」
「はい」
そうして酒場に移動して、2人で話し始めることになった。
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