表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/11

第3話

 第3話 キングベア



 馬車に揺られたまま、しばらくまどろみの中をうとうとしていた。


 革のリュックだけは盗られまいと、しっかり抱いて眠って。


 そんな浅い眠りから俺を引き起こしたのは、


 ガタガタン!!


 という大きな音だった。


 急いでガバッと起きたら、何故か周りの冒険者たちも焦っている。


「どうした?」


 思わず声をかけた。


「いや、分からない。何かぶつかった音がしたんだが……」


「出てみよう」


「あぁ」


 俺たちは(ほろ)を飛び出して、外に出ると、


 そこには御者に襲いかかる魔物の姿があった。


 クマの姿をしていて、大きな切り裂き爪がある。


 B級モンスター、キングベアだ。


 今にも御者に襲いかかろうとしている。


 このままじゃ殺される……!


「俺が引きつける!」


 冒険者の1人が弓を引いて、引き絞った。


 ひゅっと、飛んでいく矢が、キングベアに突き刺さろうとする前に、


 大きな爪を振り下ろしてキングベアはその矢を叩き割った。


「なっ……!」


「ガアッ!!」


 勝ち誇ったように雄叫びを上げるキングベア。


 なるほど。


 近接戦闘能力が非常に高い。


 俺があの能力をコピーできたら、どう戦えるだろうか。


 まずコピーする前に、攻撃を1度は受ける必要がある。


「ど、どうするんだ!?」


「俺が行く! 援護してくれ!」


「えっ、おい、待てよ!」


 俺がかけ声もそこそこに御者の元に駆けだした。


 鋼の剣を懐から抜いてキングベアに応戦する。


 続いて矢が山なりで、援護するべく上空から降ってくる。


 その矢もキングベアは叩き割った。


 瞬間、俺はステップインしてキングベアと相対した。


 鋼の剣を手にして、正眼に構える。


「ガアァッ!」


 大きく振り下ろされる爪の攻撃を、俺はステップを踏んで横に避けた。


「ふっ……!」


「ガァァァッ!!」


 これも避ける。


 そして、お前の技をコピーさせていただく!!


「古代スキル、オリジナルコピー発動!!」


 キングベアに俺の手から出た魔法の粒子が襲いかかる。


 きゅうううん!


【――キングベアの『豪腕能力』をコピーします。


 豪腕能力を得ます。


 筋力、膂力(りょりょく)が急速上昇しました。】


 よし、使えるぞ。


 これでパワーが対等になった!


 後は、小回りを効かせて殴る!!


「おい、お前大丈夫か!?」


「黙って見てろ!」


 冒険者の加勢なんて、今はいらない。


 俺は右と左に小刻みにステップを刻む。


 キングベアの攻撃を攪乱(かくらん)し、横の機動で揺さぶった。


「ガアアアアッ!!」


 振り下ろされる攻撃を、横にジャンプして避けた。


 すかっと空を切る音がした直後、俺はキングベアの左脇腹にブローをたたき込む。


「おらぁっ!」


 ドスッ!!


「グワァァァッ!!」


 キングベアの巨体が吹っ飛んで、ゴロゴロと転がり、


 やがては素材アイテムと魔石になってドロップを落として消えていった。


「え……か、勝った……?」


「相手はB級モンスターのキングベアなのに」


「あ、あんたマジかい……?」


 乗合馬車に居合わせた冒険者たちが驚いている。


「素晴らしい! ありがとうございます!! これからなんなりとお礼をさせてください」


「いや、別に必要はないが……」


「いえいえ。これから都市リュインまで赴いたら、ぜひラクス商会までお越し下さい。


 必ずお礼をさせていただきますので。ああ、それとこれを」


 俺は金貨袋を渡され、中を確かめる。


 金貨袋の中には金貨が数十枚入っていた。


「いや、別にいいんだが」


「そんなわけにはいきません! どうぞ、確かめて下さい」


「すまん。もらっていいのか?」


「えぇ、ようございますよ。この度は誠にありがとうございました」


 こうして俺は何故か金までもらってしまった。


 【古代スキル オリジナルコピー】で得た膂力(りょりょく)はすでに消えてしまっていた。

良かったら、是非↓の☆☆☆☆☆からポイントの応援をお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ