第3話
第3話 キングベア
馬車に揺られたまま、しばらくまどろみの中をうとうとしていた。
革のリュックだけは盗られまいと、しっかり抱いて眠って。
そんな浅い眠りから俺を引き起こしたのは、
ガタガタン!!
という大きな音だった。
急いでガバッと起きたら、何故か周りの冒険者たちも焦っている。
「どうした?」
思わず声をかけた。
「いや、分からない。何かぶつかった音がしたんだが……」
「出てみよう」
「あぁ」
俺たちは幌を飛び出して、外に出ると、
そこには御者に襲いかかる魔物の姿があった。
クマの姿をしていて、大きな切り裂き爪がある。
B級モンスター、キングベアだ。
今にも御者に襲いかかろうとしている。
このままじゃ殺される……!
「俺が引きつける!」
冒険者の1人が弓を引いて、引き絞った。
ひゅっと、飛んでいく矢が、キングベアに突き刺さろうとする前に、
大きな爪を振り下ろしてキングベアはその矢を叩き割った。
「なっ……!」
「ガアッ!!」
勝ち誇ったように雄叫びを上げるキングベア。
なるほど。
近接戦闘能力が非常に高い。
俺があの能力をコピーできたら、どう戦えるだろうか。
まずコピーする前に、攻撃を1度は受ける必要がある。
「ど、どうするんだ!?」
「俺が行く! 援護してくれ!」
「えっ、おい、待てよ!」
俺がかけ声もそこそこに御者の元に駆けだした。
鋼の剣を懐から抜いてキングベアに応戦する。
続いて矢が山なりで、援護するべく上空から降ってくる。
その矢もキングベアは叩き割った。
瞬間、俺はステップインしてキングベアと相対した。
鋼の剣を手にして、正眼に構える。
「ガアァッ!」
大きく振り下ろされる爪の攻撃を、俺はステップを踏んで横に避けた。
「ふっ……!」
「ガァァァッ!!」
これも避ける。
そして、お前の技をコピーさせていただく!!
「古代スキル、オリジナルコピー発動!!」
キングベアに俺の手から出た魔法の粒子が襲いかかる。
きゅうううん!
【――キングベアの『豪腕能力』をコピーします。
豪腕能力を得ます。
筋力、膂力が急速上昇しました。】
よし、使えるぞ。
これでパワーが対等になった!
後は、小回りを効かせて殴る!!
「おい、お前大丈夫か!?」
「黙って見てろ!」
冒険者の加勢なんて、今はいらない。
俺は右と左に小刻みにステップを刻む。
キングベアの攻撃を攪乱し、横の機動で揺さぶった。
「ガアアアアッ!!」
振り下ろされる攻撃を、横にジャンプして避けた。
すかっと空を切る音がした直後、俺はキングベアの左脇腹にブローをたたき込む。
「おらぁっ!」
ドスッ!!
「グワァァァッ!!」
キングベアの巨体が吹っ飛んで、ゴロゴロと転がり、
やがては素材アイテムと魔石になってドロップを落として消えていった。
「え……か、勝った……?」
「相手はB級モンスターのキングベアなのに」
「あ、あんたマジかい……?」
乗合馬車に居合わせた冒険者たちが驚いている。
「素晴らしい! ありがとうございます!! これからなんなりとお礼をさせてください」
「いや、別に必要はないが……」
「いえいえ。これから都市リュインまで赴いたら、ぜひラクス商会までお越し下さい。
必ずお礼をさせていただきますので。ああ、それとこれを」
俺は金貨袋を渡され、中を確かめる。
金貨袋の中には金貨が数十枚入っていた。
「いや、別にいいんだが」
「そんなわけにはいきません! どうぞ、確かめて下さい」
「すまん。もらっていいのか?」
「えぇ、ようございますよ。この度は誠にありがとうございました」
こうして俺は何故か金までもらってしまった。
【古代スキル オリジナルコピー】で得た膂力はすでに消えてしまっていた。
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