空を遊ばす
どうすればいいか分からない。
冷静になんてなれやしない。
見つからないのは思い出と、
風流心。
嗚呼、白い、白いだけの、
独奏者でしかない僕を、
楽にしてはくれないか。
死なせてくれないか。
「何処に僕の音楽がある?
霊安室の中にあるのだろうか。」
見下ろした棺の中には、
旧い楽譜しかなかった。
「ああ、そんなのあったっけ?
そんなこと疾うに忘れてたよ。」
乱雑な文字列の中に、
知らない文字など一つもない。
どうだろう。
霊柩車のナンバープレートを、
見過ごして、
振り返らずに、
歩くのを続けた。
空はどこまでも綺麗で、
爛々と輝いていて、
死、なんてないような気がした。
何処でだって僕は、鍵盤を叩いている。
霊感がない僕は、君を見つけられないけど。
見下ろした世界には、君以外が生きている。
二人の命なんて、ちっぽけな物だろう?
嗚呼、白い、白いだけの、
独奏者でしかない僕を。
楽にしてはくれないか。
死なせてくれないか。
瞳孔は開いてた。鍵盤は何処にもない。
冷静になっても、君とピアノは透明だ。
見つからなかったのは、形だけの思い出。
風流心なんて物、最初からなかったよ。
「歩いていく道は、何処に繋がっているの?」
空の向こう側に、きっと行けるよ。
楽になれはしない。いつまでも僕は。
死んでいるのと一緒なんだ。
何処まで行ったとしても、僕は空を遊んでいる。
ドレミファソラシ。
何度も鍵盤を叩く。
指の音だけは立派で。
でも、本当のピアノは、まだ弾けない。