表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人と一羽  作者: to_oy
9/9

魔族襲来

 旅を続けるマルコ達。

 アルカドアまでの道程は遥かに長い。

 マルコ達の次の目的は足の確保である。

 この世界で移動手段と言えば地竜だ。

 だがそんなお金は無い。野生の地竜を捕まえに行くのである。

 ここから南西に逸れたカララ・カマリ渓谷に地竜は生息している。

 マルコとチョコはそこを目指して旅をする。


 二日程旅をしたところで、途中にある小さな村へ立ち寄りを装備を整える事にした。

 マルコがこの道を通る時いつも立ち寄る村だ。ここには友達も多く、よくサバゲーをして遊ぶのだ。



 村では騒ぎが起きていた。

 

 すぐに顔馴染みのサバゲー仲間を見つけ話しかける。


「何かあったのか」


「おお、マルコか!大変だ!イリシャが攫われたんだ!」


「攫われた!?」


 イリシャはライフルを愛用するサバゲープレイヤーで、この村一番のスナイパーとして知られる女性だ。

 村のサバゲーでイリシャが負けた事はない。



「サバゲーやってて最後にイリシャの銃声が聞こえてから通信が出来なくなったんだ。」


「嘘だろ!あのイリシャが?」


「ああ、どこ探してもいないんだ...」


「いつからだ」


「二時間くらい前だ」


「ついさっきだな。消えたのはどこだ」


 マルコ達は案内されイリシャの消えた場所へ向かう。


「恐らくこの辺りだと思う」


 雑木林の傾斜を登った場所だ。他の村人も集まっている。そこにマルコのサバゲー仲間も数人いた。


「マルコ!」


「何があったんだ」


「分からない、何の痕跡もないんだ。

 魔物に襲われたなら何らかの痕跡があるはずだ。

 たまたま居合わせた盗賊に攫われたか...」


「サバゲー中は魔力使えないからな、

 にしてもあのイリシャがやられるなんて」


「対戦相手に集中してた隙を突かれたんだろう

 まあ、敵は相当手練れだな」


「くそう!イリシャ!無事でいてくれ!」


 サバゲーで無類の強さを誇るイリシャは、小柄のクール系美人で、その容姿も相まって村内外にもファンが多い。村人も冒険者も血眼になってイリシャを探している。


 その時村人の一人が何かを発見した。


「血だ!血痕があったぞ!」


 血痕に群がる村人達。

 しかしそれは人のものではない。

 その液体は木葉を暗い紫色に染めていた。


 !!


「これは!」


「魔物の血か...?」


 まさかこの近くにイリシャを一瞬で仕留める程危険な魔物が出たのか。

 周りの村人や冒険者は各々そう唖然としたが、トット村で情報を得たマルコは違った。


「いや、これは魔族の仕業かもしれない」


「魔族?なんで魔族が出てくるんだ?」


「実は__ 」


 マルコはトット村で起きた事件をみんなに話した。魔王の復活、魔物の暴走。


「なんだと!?魔王が復活した?本当か!?


 じゃあ魔族共がまた攻めてくるってのか?」


 皆口々に騒ぎ出す。


 魔王の復活、イリシャの失踪、魔族の襲撃。


 雑木林は混乱に包まれザワザワと響いた。


 そこへガサガサと落ち葉を踏む足音が聞こえた。

 足音の方へ振り向くと、人影が現れた。


「イリシャ!」


 イリシャが帰ってきた。


 イリシャは血の滲む脇腹を抑え、息も絶え絶えになりながらこちらへと向かう。


 皆急いでイリシャの元へ駆け寄る。


 イリシャは声を絞り出すように皆に伝えた。


「魔王が...復カッ...」


 ガクッ


「「イリシャ!!」」


 知ってるよ!さっき聞いたよ!


 と心の中で叫びながら村人達は、応急処置を施すと急いでイリシャを村へと運んだ。


 村の診療所で意識が回復したイリシャ。

 皆の姿を確認すると、すぐに口を開いた。


「魔王が、復活した、」


「ああ、マルコから聞いたよ!誰に襲われたんだ!」


「...魔族の奴に襲われた

 二人いた。私は小さな穴の中へ連れていかれた

 奴らは人間の魂を魔王へ献上すると言っていた

 魔王は、魂を喰らうらしい

 仕留められなかった、くっ、また村を襲いに来るかもしれない」


「分かったイリシャ、もう大丈夫だ。お前はゆっくり休め」


 イリシャを落ち着かせて村人と冒険者達は、皆一様に覚悟を決め話し合いを始めた。


「恐らく魔族はくるだろう」


「ああ、すぐ準備しよう!」


「よし!ラジュとタルボは見張りに出てくれ!あとは作戦会議だ」


「「了解!」」


 村のサバゲーチームのリーダー、アレクが仕切り作戦会議が始まる。


 速やかに作戦を立て、各自配置に着く。イリシャが来た方角から魔族も来ると想定する。


 マルコはチョコを自分のサポートとして一緒に行動させる事にした。一緒に居ないと身バレする危険がある為だ。チョコには近くで隠れていてもらう。


 各自持ち場に付き魔族を待ち構える。


 配置が終わり三十分程経ったところで魔族は現れた。


 魔族は二人飛んで来た。


 片腕が無いものと胸に刺し傷があるもの。


 既にどちらも深手を負っていた。


 満身創痍の魔族は怒り心頭で村へと向かって来た。


 「来た!予想通り7時の方向。飛んでる。

 なんか二匹共既にダメージ負ってる」


 見張りのラジュが報告する。


「はっ!イリシャめ!

 まあいい、作戦Aだ。クリス、ニック、行けるか」


「「了解」」


 狙撃手の二人が魔族へ魔力無効の魔導弾を撃ち込む。


 魔導弾は見事に命中し魔族達の身体を貫いた。

 魔族の二人は大ダメージを受け地面へと落下する。


 そこへ待ち構えていたリックとエミリーが魔族の脚を撃ち抜く。


 魔族は完全に囲まれた。


「待ってくれ!俺達は魔王様に命令されただけなんだ。本当はこんな事したくなかったんだよ!」


「...お前達にいくつか質問がある。

 この近くに他に魔族はいるか」


 リーダーのアレクが尋問する。


「いない。俺達は戦争が終わって、ここまで逃れてきたんだ」


「魔族は全部で何人いる」


「全体の数は分からない。俺達はずっとここで生きてきたんだ」


「どうやって魔王復活を知ったんだ」


「魔王様から直接テレパシーみたいなのが来たんだ。多分魔族全体に伝わったはずだ」


「魔王は人の魂を喰うのか」


「ああ、生きたまま連れてこいと言われた。アマラン様から」


「アマラン?魔王の名か?」


「いや、俺達の上司だ。魔族を仕切る13柱の組織デモンノルテの一柱だ」


「デモンノルテ?」


「フハハ、知る必要はない!死ね!クソ共!!」


 魔族の身体が怪しく光る。

 囲んでいたチームは咄嗟に一斉射撃を始めるが攻撃は全て光に阻まれてしまった。


 マルコは瞬時に剣による攻撃を仕掛けたが、片腕の魔族は不敵に笑いながら簡単にマルコの攻撃を受け止めた。撃たれたはずの脚で平然と動いている。筋肉の代わりに魔力で脚を操作しているのだ。

 

逆に相方の胸傷の魔族がマルコを襲う。

 

 

 その瞬間攻撃を仕掛けた胸傷の魔族の首が吹き飛んだ。


 後方からライフル銃の銃声が響いた。

 一同が音の方へ振り向くと、病み上がりのイリシャが遥か遠方でライフル銃を構えていた。


 マルコはすかさず片腕の魔族に攻撃を仕掛ける。

 イリシャの狙撃に一瞬意識を奪われた片腕の魔族はマルコの猛攻を受け防御に追われる。

 だが、光に覆われた魔族の身体に中々ダメージを入れることが出来ない。

 マルコが応戦している間に魔力を溜めたリーダーのアレクが剣技を放つ。


「ライトニングスラッシュ!」


 片腕で受け止めた魔族だが、腕は切断され魔族は両腕を失った。


「くそおおお!!雑魚共め!」


 追い詰められた魔族は一旦引き、体勢を立て直す。

 魔族の腕の切れ目から触手のようなものが一本生えてきた。


 魔族にとって脅威は後方の狙撃手である。

 マルコとアレクを相手にしながら、常に狙撃手のイリシャを警戒しなければならない。

 分が悪いと考えた魔族は目の前のマルコかアレクを盾にひとまずこの場を引こうと考えた。

 魔族は再びマルコ達と闘り合う。

 

 そして、魔族の触手がマルコの喉元を捉えた。

 マルコの身体は魔族と共に浮き上がる。

 魔族はアレクの剣が届かない高さまで上昇する。

 そのまま飛び去ろうとした時、近くで隠れていたチョコが飛び出した。


 チョコは魔族の顔面にナイフを突き刺す。

 しかしナイフは通らず弾かれた。

 チョコはそのままマルコにしがみつくと、ナイフで触手を切り離しマルコを救出した。



「チィッ」



 イリシャはこの時を待っていた。


 一連の流れを見ていたイリシャはマルコとチョコが魔族から離れた瞬間、魔族の頭を撃ち抜いた。


 魔族の身体はマルコ達と共に地面へと落下した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ