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3話

ずらし作業+加筆修正



 ゴブリン、赤とか白とか黒とか色は色々あるけど大体同じ顔をしているよくわからない小人のような魔物だ、その生態は人を襲い食ったり玩具にしたりと度の過ぎた悪戯好きとして知られている。


 無邪気に襲い掛かってくるゴブリン達は、あまり頭がいい方ではないのか空中でお互いぶつかったりしている。

 だが、それが逆に軌道や行動が読めなくて厄介だ。


「燃えなさい」


 ファイアは特に狙いを定めず前方を焼き払った、牽制か。


「ジン、貴方私の中の(ファイア)以外の魔法は読んだことは?」


「ない、初級ができないのにそれ以上のものを読む時間なんてもったいなかったから」


「そう! ヒール、しばらく壁役頼めない!?」


「時間稼ぎですね!分かりました、大丈夫です!」


 ひるんだゴブリン達がそろそろまた飛びかかってくるところでファイアが飛びのき代わりにヒールが前に出る。

 ゴブリン達はとにかく目の前にある獲物から襲うようで一瞬で群がられ噛み付かれるヒールであったが――――。


「癒しを」


 その一言で柔らかそうな肌を突き破らんとする牙は肌を突き破るどころか押し返され、ぱっと見甘噛みされてるようにしか見えない状態になった……なにそれ。


「ジン! ぼーっとしない!」


 ファイアが俺の前に来ると額同士を合わせ目を閉じる。

 すると俺の頭の中に、始まりの魔法の様にファイアの火炎魔法の使い方が渦巻いて来た、その中から自己主張の激しい魔法が一つ……中級魔法「ファイア・セイバー」?


「呪文は覚えた?今すぐ唱えられる?」


 頭の中に使え使えと激しく訴えてきておいてよく言う、始まりの魔法と同じ理屈で頭の中にあったんだ、額を離した途端消えはしたが今なら、今だけなら唱えるだけなら簡単だ。


「任せろ、どうしたらいい?」


「私の胸に手を当てて唱えて頂戴、それで私はアレを発動できるから」


 なるほど……いや理解できない自分で唱えたらいいのでは? と思うがそれでも一応は俺の魔法だからか、魔法といえど姉さんの胸を触るってなんか恥ずかしいな。

 俺は半信半疑でファイアの胸元に手を当てた。


「違う、こう!」


 しかしファイアさんは、俺の手を掴み自分の胸、おっぱいを鷲掴みさせる――――心臓とかそういうことじゃないのか!?

 恥ずかしいから避けたのに!


「え、えっと」


 羞恥心でちょっと呪文を忘れかける、七年も魔法に打ち込んできたとは言えこちとら健全な男子、いきなり女性のおっぱいを鷲掴みにして冷静さを保つなんて……。

 それも姉さんそっくりの同世代の女の子に。


「ぐぃっ、癒しを!」


 そんなこと思っている間に今にもヒールの柔肌は突き破られてしまいそうになっていた、ホントそれどころじゃなかった、ゴブリンを体にぶら下げたヒールが地面に膝をついた。


「ヒール! クソッ……」


 名前を呼んだことで少し盛り返した感はあるが長くは持たないな。人化したものは一つの命となる、死んでしまえばそこで終わり、それが人化魔法デメリットとも言われているところである、命である以上寿命も出てくるが、今はそんなこと言っている場合ではない。


「赤き炎よ、剣を以て、我が敵を切り伏せろ! ファイア・セイバァァァァ!」


「心得たわ」


 ファイアの手の内に炎が渦巻き、赤い刀身の片刃剣が現れた。まるで物語に出てくる宝剣のような奇抜な炎を模した刀身に実際に炎を纏い燃え盛っている。


「いくわよ!ヒール!」


「大丈夫!癒しを!」


 ファイアがゴブリンを切った、正確に言えばヒールごと、しかし切られたはずのヒールは切られた直後にそんな事なかったようにくっつきそのままバックステップでこちらへ戻ってきた。良かったこれで助かった、そう思った矢先。


「ゲゲラッハ!」


 見れば二体のゴブリンを切りそこねていたらしく、ファイアが対峙していた。

 レッドゴブリンとブラックゴブリンだな、顔に切り傷を負っているので掠りはしたようだが間一髪のところでヒールから離れたと言ったところか。


「行くよ!」


 ゴブリン目掛け駆け出すファイア、ゴブリンも釣られて飛びかかるように迫って来るがこれは左右からの挟撃だ。

 両手持ちしていた剣を片手持ちにしさらに空いた手にも「剣よ」と唱え先ほどと同じ剣を出して二刀流にしすれ違いざまに切りつけ剣を手放す。


「ゲラァッハ!?」


 突き刺さった剣が赤く光るとゴブリン達の断末魔と共に爆散した、危機は去ったようだ……今度こそ何とかなったな、っと安心したら腰が抜けてそのまま座り込む。


「癒しを、癒しを、癒しを」


 ヒールが絶え間なく癒してくる癒し連打だ……ちょっと鬱陶しい。


「いや別に癒さなくていいぞヒール」


 腰は抜けたが、別に怪我しているわけでもなければ魔力を使いすぎた訳でもない。


「そうですか? では」


 手を差し出してくるが、いや女の子に起こしてもらうのはなんかダメだろ。

 俺はその手を無視して自分で立ち上がる。


「一人で立てる」


 急がなければ、普通だったらこんなとこにゴブリンなんて居るはずがない。

 何せ七年もここで魔法の練習をしていたのだ昨日のゴブリンですらおかしいのに今日は五匹も居た、何かがある。


「2人とも急いでここを離れるぞ」


「家に帰るの?」


「ああ、母さんたちにゴブリンの事伝えないと、昨日のがたまたまはぐれた一体とかなら良かったっがこんなに居たんじゃ巣があってもおかしくない」


「私たちで倒すのは?」


「論外だ、そもそもあの程度の数でこれじゃあ死にに行くようなものだ」


 またヒールを盾にしてファイアが燃やすってか?その間に俺は食われるし、ヒールだって長くは持たないだろう仮にファイアがさらに上の魔法を使えるようになるとかあってもゴブリンの巣なんてのが本当にあったら無理だ、それに巣ならまだいい、集落でも作られていた日には俺たちは街総出で引っ越さなければならなくなる。

 ゴブリン自体が弱くとも増える力と数の暴力は舐めてはならない、そういった慢心がいくつもの街を滅ぼした、らしい。


 ともかく街で強い人ら、俺の両親やらゾックのとこの親御さんなんかに一先ず相談しなきゃならない。


 俺たちは他にゴブリンが居ないか後をつけられないか周りを警戒しつつその場から足早に去った。

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