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プロローグ

落ちたしとりあえず設定は隠してここから一話目に移植、後サブタイトルで詰まるので普通に数字でカウントします

あと少し加筆修正

 僕、サラシティのジン!

 今日は今年十歳になる子供に始まりの魔法が授けられる日、僕もお姉ちゃんみたいなかっこいい火の魔法をもらうんだ!

 魔法を貰いに行く前にお姉ちゃんの部屋に顔を見に行く。


「お姉ちゃん起きてる?」


 お姉ちゃんは一年前から病気で今ではほとんど寝たきりになっている、お父さんもお母さんも寝てる時は無理に起こしては駄目だと言うので静かに部屋に入る……お姉ちゃんは起きていた。


「あら、ジン……おはよう、どうしたの?」


 僕の姿を見たお姉ちゃんは体を起こそうとするが僕はそれを慌てて止めた。


「わっ! 寝てていいよ! 今日はこれから魔法をもらいにいくからお姉ちゃんにあいさつして置こうと思って」


「そう、ジンももう十歳なのね」


 そういってお姉ちゃんは明かり窓の方を見つめる、滅多に外に出なくなったお姉ちゃんはもうどれだけ時間が経っているかがよくわからなくなっているみたい、お医者さんが言うにはもうながくない? って事らしいんだけどよくわからないや。


「僕もお姉ちゃんを同じ火の魔法をもらうんだ!」


 お姉ちゃんの魔法は一度だけ見たことがある、とても綺麗でそれまで特に魔法に興味なかった僕が翌日から魔法が欲しいというようになったほどだ。


「ジン、それは分からないわよ……魔法は誰だって平等、何がもらえるかなんてわからないの」


 魔法にちすじは関係ないってお父さんが言っていたお父さんは聖の魔法使いで聖騎士をしていてお母さんは氷の魔法使い、そしてお姉ちゃんは火の魔法使いだ、だから僕も別の魔法になる可能性だってある。

 けれど兄弟そろって同じ魔法というのも珍しくはない、近所のゾック三兄弟はみんな暴の魔法という珍しい魔法をもらっている

「でもカイ達はみんなぼう? 魔法って言ってたもん」


「彼らは三つ子だからよ、それにカイ、サン、トウはそれぞれちょっとずつ派生が違うから厳密には同じとは言えないわ」


 魔法の派生、伸び方とかどういう方向に得意になっていくのかということだ。

 お父さんは聖の魔法でも守り、聖盾魔法というのが得意で、お母さんは氷の魔法でも氷結魔法が得意、お姉ちゃんは火炎魔法という派生だ。


「だったら僕も火の派生魔法がいい!」


「もう、そういうことではないけれど……いいわジンが火の魔法を貰えるのお姉ちゃん祈ってるから早くいってらっしゃいな、遅れるとまた来年までもらえなくなるわよ」


 それは大変だと、僕はお姉ちゃんの部屋を飛び出して行った。


「いってきまーす!」


「いってらっしゃい、気を付けるのよ?」


 お母さんに声をかけて急いで街の広場を目指す



 走って街で一番おおきな広場に行くとそこには僕と同じぐらいの子供たちが集まっている。そのまんなかに白いおひげのおじいさんが立っていた。


「それじゃ、次の子、前へ」


 どうやら列に並んで順番に魔法を授かっている様だった。

 呼ばれた子は「君は……氷魔法!」と言われて喜びながら帰っていく。

 その子の足下には氷の粒が転がっている、魔法は授かった瞬間に使い方が分かり練習を重ねることによって様々な事が出来るようになるのだ。

 その後も魔法の授与は続く、水魔法、雷魔法、風魔法、人化魔法、契約魔法、火魔法……羨ましい。

 授けられる法則性は全くないがただ同じ魔法が連続して授けられる様子がなかった、僕は自分の順番に火魔法が来ることを祈った。


「次の子、前へ……君は―――火魔法だ!」


「やったっー!」


 その場で跳ね飛び手から火花を散らす、のは僕の一つ前の子だ。

 僕は絶望した、この流れでは僕は火魔法を貰えない、お姉ちゃんと同じ魔法は貰えない。

 そう自覚した僕は「ちょっとトイレ」といい列から離れた、列は僕を飛ばし僕の後ろの子がおじいさんの前に行き土魔法を授けられていた。僕はホッとして一番後ろに並びなおした。列を乱したらまた一年魔法を貰えなくなるからだ。

 水魔法、氷魔法、木魔法、契約魔法、時間魔法「わぁーすげぇ!」珍しい魔法に周りから歓声が上がるあの子は将来凄い人になるだろう。


 土魔法、鋼魔法、火魔法、チッ、風魔法。

 次の僕の順番まで後七人……。

 氷魔法、鋼魔法、闇魔法、光魔法、木魔法、竜魔法、火魔法!


「くっ」


 また後ろに、そう思い後ろを見るがもう誰も居ない、流石にこの街にまだ魔法を貰っていない子供はいないようだ。


「次の子……君は、そうだな火魔法が欲しいのか」


 僕の奇行はおじいさんにはお見通しだったようだ。


「しかし残念ながら始まりの魔法とは神が授けるもの、列の順番でどの魔法か決まるわけではない、諦めて授かりなさい」


 特に順番などは関係なかったんだ、たまたま同じ魔法が連続しなかっただけで、僕はもしかしたら火魔法を授かれるかもしれない、気持ちをしっかり決め僕は前に出た。


「君は……残念だが、人化魔法だ」


 人化魔法……魔法に当たりはずれはないと言われている、相性の差のような物は確かに存在するが優劣の差は鍛錬の差でしかない。


 そんな中でも人化魔法だけは違う。

 人化こそできる物の対象を自由に操れるわけでもなく、また人化した相手と交渉しなければならず相手を人にする以上は衣食住全てを術者が賄わなければならないのでとてもお金がかかる魔法だった。


 僕は下を向いて家まで帰った。


「おかえり、なさい……どうだった?」


お母さんは僕を見てお声をかけてくるけど僕は何も言わず、お姉ちゃんはまだ起きていたみたいだけど顔も合わせず自分の部屋にひきこもった、ごはんも食べずにそのまま眠ってしまった。


 翌朝、部屋で寝ていたらお姉ちゃんが起こしに来た。


「おはよう……」


 気落ちした僕はまともにお姉ちゃんの顔を見れなかった。特に返事もせず寝ぼけた目を擦りながら起き上がる、この時はなんだろうとしか思わなかったけど、よくよく考えたらおかしいと分かったはずなのに。


「これ、ジンにあげるね、お姉ちゃんの魔法だから」


 それは一冊の本、一冊の本になるまでの膨大な魔法が記された魔法書だった。火炎魔法は確か最上級までの火の魔法全てを使えるようになる魔法、お姉ちゃんが使える魔法がここには全部詰まっているんだ。

 それを僕のベッドの上におくとお姉ちゃんはそそくさと出て行ってしまった。


 僕は表紙をめくった。


 そこには初級火魔法ファイアの呪文と成功のコツが書いてあった。

 僕はベッドから飛び起きて部屋から出てお姉ちゃんのお部屋に向かった。

 ドアを勢いよく空けて部屋に入った僕はお姉ちゃんが起きているかも確認せずに中へ入ると。


「お姉ちゃんありがとう!」


 とお姉ちゃんに飛びついた。けれどお姉ちゃんはぴくりとも反応しなかった、どうやら寝ているみたいだった。

 それじゃ起こしちゃ悪いと思い僕はそのまま家を飛び出して裏山で魔法の練習をすることにした。

 魔法は誰でも使える。けれどそれは始まりの魔法に限った話だ。

 他の人からもらったり買った魔法書の魔法は練習しないと使える様にはならない。

 だから僕は一生懸命練習することにした。


 初級のファイアはそんなに長い呪文でもない。

 けれど……お姉ちゃんコツが全然分からないよ、なんだよぐーっとなってパッて、近道はないって事かな、呪文唱える練習しよう。


「あか、き、とも…しび?よ、たいきを、くらい?もえあがれ、ふぁいあ!」


 何も出ない、まあこんな途切れ途切れじゃダメなのは自分でも分かる、ひとまずスラスラ言えるようにならないと。

 けれど自分でもスラスラと読める自信がある魔法もあるそれは昨日貰った人化魔法、これは早く口にしろと言わんばかりで頭の中に渦巻いている、だけど僕はこれを拒否してファイアの練習に戻る。


「あかきともしびよたいきをくらいもえあがれ、ふぁいあ」


 詰まることなく読めたけど棒読みだからかこれまた何も起きなかった。

 けどめげない、お姉ちゃんにもらった魔法、絶対に使えるようになって見せる!


 それから数百回呪文を唱える練習をした発動しそうな気配はあったんだけどすぐに霧散する。


「赤き灯火よ、大気を食らい、燃え上がれ! ファイア!」


 自分の中がぐーっと熱くなってパッとそれがすぐ消える。

 この感覚をなんども繰り返している、もう日が傾いてきた、そういえば昨日から何も食べてない気がする……一回帰らないと。


 とぼとぼと帰宅すると家の前に人だかりができていた、何かあったのかな?


「あ、ジン! お前何やってたんだよ!」


 大きな声で叫ぶのはゾック三兄弟の長男のカイだ。


「な、なにってお姉ちゃんにもらった魔法の練習だけど?」


 僕はカイが苦手だった、お姉ちゃんを嫁にするといつも騒いでいるから。


「はぁ!? お前何言ってんだフィアはフィアはなぁ……くっ!」


 いつも荒っぽいカイが泣きべそをかいて走り去っていった何だったんだ?

カイが喚いて居たからか僕はみんなに注目されて騒ぎに気付いたお母さんが家から出てくる。


「ジン! 早く家に入りなさい!」


 お母さんの怒鳴り声が聞こえてきた、帰るのが遅くなったのを怒っているのかな……いやだなぁ。

 家に入ろうとしたら人だかりクモの子を散らすように居なくなった。


「……ただいま」


 怒られると覚悟して下を向いたまま家に入ると何故かぎゅっと抱きしめられた。


「こんな時に! もう!」


 お母さんは泣いていた、けど怒っている。


「どこに行っていたんだい?」


 お父さんは優しく聞いてくる。


「お姉ちゃんに今朝魔法の本を貰ったから練習してたんだけど」


 そういうとお父さんは顔を手で覆い上を向いた、お母さんも泣いている。


「ねぇ、お姉ちゃんは? 寝てるの?」


 しかしその問いに答えてくれる人はおらずお母さんも僕を離してくれなかった。


 ……お姉ちゃんは死んでいた、お医者さんが言うには僕が本を貰った時間には既に死んでいたはずだという、お姉ちゃんはこの本を完成させて息を引き取ったのだと。

 そもそもお姉ちゃんの病気は魔法を使うと悪化する、そしてこの本を使うにはどうしても魔法を使わなければならない。

 だから僕のわがままがお姉ちゃんを死なせてしまった、だから僕は――――本を捨てようとした。


 ドンっという鈍い音と共に僕はふっとんだ。

 何がと思ったら頬がジンっと痛む、お父さんが僕を殴ったんだ。

 お父さんは苦しそうな顔をしていた。


「それはフィアがお前のために作ったものだろう……それこそ命をかけて、ならお前はそれを極めなちゃ駄目だ、お前が欲してフィアが与えたんだ、その魔法を使って世界一の魔法使いになれ」


 お父さんはそういうと僕の頭を撫でて寝室に行った。

 お母さんも僕の頬に塗り薬を付けるとそのまま寝室へと向かった。


 僕は、涙を堪えてお姉ちゃんの本を抱えて裏山に向かった。

 そこからはがむしゃらに魔法の練習をした、魔法は発動しないけど何度も何度も喉が嗄れるまで呪文を唱え続けた。



 しかし魔法は発動しなかった。




 ――――それから七年、俺は未だ魔法を使えない。



「おい、ジンお前まだそんなもん持ってるのか」


 いつもの裏山に行く途中で出くわしたのはカイだった。

 両手に街で一番と二番にかわいいと評判の娘を侍らせている。


「そんなもんって?」


「その薄汚い魔導書だよ」


「姉さんの形見だけど?」


 昔あれほど姉さんを嫁にすると言っていたくせにその形見を薄汚いだと?


「居なくなったやつことなんて忘れろよ、それにどうせ使えないんだろ? その魔法は」


 カイの中では姉さんは死んだのではなく自分を捨てて居なくなったということになっているらしい、それだけ聞くとまだ受け入れていないのかとかわいそうに思えるが、死なせてしまったのは俺のせいだからそれについては何も言えなくなる。


「だから練習してるんだろう?」


「けど練習ばっかでろくに働きもしない、おじさんもおばさんもかわいそうだろ?」


 両親は何も言わない、そもそもこの魔法で一番に成れと言ったのは親父だ。母さんだって応援してくれている。


「お前に何か関係あるのか?」


「チッ……なんもねぇよ、昔はお前の事もう一人の弟ぐらいに思ってたんだがよ、もうそんな可愛げもないな」


 そういってカイ達は立ち去った。彼らぐらいだ面と向かって僕に文句を言うのは、皆陰で魔法が使えないダメ人間だとか言っているらしい。


 けれどそれは火の魔法だけだ人化魔法ならきっと使えるはずだし今まで使ったことはないけれど。



 いつもの定位置に来た、本を開き呪文をしっかりと見てから目を閉じて唱える。


「赤き灯火よ、大気を食らいて、燃え上がれ! ファイア!」


 グッと熱くなる、体中が焼けるように熱い、しかしパッとその熱は引き冷める……失敗か。

 何が悪いのかは原因不明だ先日魔力測定なるものを受けたが常人の二十倍以上あり驚かれこそしたが、魔法が使えなければ宝の持ち腐れだと陰口を叩かれた。

 つまり魔力が足りないわけではない、では何か。

 俺の始まりの魔法が火の魔法を阻害しているのではないか、そう思ったこともあるしかし始まりの魔法は捨てることはできない、魔法には世界の意志が宿るとは言い伝えがあるのでパートナー魔法をないがしろにしている俺を魔法自体が拒んでいるとも考えられると親父も言っていたが。


 何にせよ練習だ、まだ俺は若い、諦めるには早いだろう、それにそれじゃ姉さんがうかばれない。


 思考に耽っているとガサガサという音で現実に引き戻される。

 魔法の練習で狙うための的を設置している木の後ろの茂みからだ、何か出てくるぞ!?


「ゲラッハ!」


 ゴブリンだと!? なんで魔物がこんなところに!

 魔物とは魔族の下位種族で基本的に野生の獣と変わらず人間にとって危険となる存在だ。しかしこんなところに出るとは聞いたことがない。

 街に戻って知らせないと……いやゴブリンはすばしっこい、俺の足ではとてもじゃないが逃げきれない。


 ならどうするか、発動もしない火の魔法にかけて駄目だろう。

 であれば、答えは一つ、人化魔法だ。


 人化魔法なら恐らく使えるはずだ、それを使いこのゴブリンを人化して交渉する、それしかない。


 俺は手をゴブリンに狙いを定めて突き出した。

 頭の中にあれだけ渦巻いていた人化魔法の呪文はすぐに出てこない。当たり前か今更虫がいい、一節であっても口にしたことはないそれでも始まりの魔法、じりじりと近寄ってくるゴブリンに魔法の呪文を唱えた。


「生命の灯火よ、我が意を食らいて、人の身を与えよ! 

 ファイア! ……あ?」


 ここにきての致命的なミス、呪文こそ出て来たものの人化魔法の名前が何だったか分からず、咄嗟に口から出たのは散々練習したファイアだった。


 俺は膝から崩れ落ちた、いや腰が抜けたとでもいうべきか。

 もう俺は助からないだろうゴブリンはそれほどに残虐だ。


 魔法の本も手から離れた、ああ、姉さん俺も今そっちに行くよ。


 覚悟なんてものはできていなかったが俺は自分の最後を見たくなくて堅く目を閉ざした。



 ――――まだか。


 まだ来ないのか、恐怖のあまり俺は再び目を開いた。


 そこには赤い光が灯っていた。

 姉さんの魔導書が光っている、だが、これは人化魔法?

 失敗したはずの人化魔法が発動している、対象がゴブリンではなく姉さんの魔導書だが。


 光のまぶしさを増しそれにゴブリンもひるんでいる、逃げるなら今だが、俺もその光景に目を奪われていた、何故ならばその光は昔一度だけ見た姉さんの魔法に似ていたからだ。


 光が魔導書を飲み込み人の形を成す、ここに魔人が生まれた。


「……ね、え、さん?」


 人化魔法で人となった火の魔法は姉さんにそっくり、いや成長した姉さんという漠然とした想像でしかないものだった。若くした母さんとも言えるかもしれない。


 燃えるような赤い髪に、火を模したドレスを着た少女それがこの姉そっくりの魔法だった。


「赤き灯火よ、燃えろ、(ファイア)


 少女がそうつぶやくだけでゴブリンが炎上して炭になる。


 ゴブリンを炭に変えた少女がこちらに振り返ると、ニコリと微笑んだ。


「貴方が私の魔法使い?」


 これが俺と魔法少女たちとの物語の始まりだ。

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