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第九十五話

着地した俺はハンスを降ろして

背中の創業祭を引き抜く。


是非、剣技を試したい。


魔王から伝授された大量のデータ。

これは歴代の魔王達によって

蓄積された情報だ。


 かつて剣を使う魔王がいたのだろう

剣技もあった。


時間停止や転移など再現不可能な術が

ほとんどだったが体を動かす

体術関係なら、完璧でなくても

俺の身体なりに再現できそうだ。

 

 結局の所、近接物理攻撃とは

状況に応じてどう体を動かすのか

そう言う事だ。


 それに必要な筋力・持久力

瞬発力・などなど

これらをイメージ通り忠実に

再現出来るかだ。


 再現可能にするための鍛錬だが

この生物では無いこの体には必要無い。


 手近な悪魔に切りかかる為ダッシュする。

瞬間襲う違和感。

これは友達の自転車を借りた時の

感覚に近い。

 再現を試みようとしている

俺の肉体と情報元の肉体との誤差によるものだ

さすが力のアモン、速すぎた

剣を振りかぶるタイミングを逸した。


 やり直すのも格好悪いので

そのままタックルで弾く

飛ばされる悪魔の速度をよく把握して

再度ダッシュ。

魔核の位置を良く把握して・・・って

小さいな、俺のが野球のボール(170cm時)

ならビー玉くらいしかないぞ。


 まあ斬ってみよう。


 ベネットのをそのままコピーしただけの

大剣、アモン製創業祭を振る。


やばい


大気が抵抗なく切れていく手ごたえが

俺の手から伝わって来る。

いや

握っている先の剣自体が

まるで血の通った俺の身体みたいだ。


弧を描くスイングの最中

最も切断力の高いポイントが

刃の上を滑るように光って見える。


斬りたい物がその光が最大に輝く

瞬間とポイントに合わせるように

動く、自分はもちろん

相手だって動いている。


刹那


まさにその瞬間にしか

存在しない最大の切れ味の世界だ。


まるで精密な時計の歯車の様に

全て速度や大きさの違う歯車達が

その瞬間に合わさるような感覚。


刃が対象を通過する

自分の刃の速度、角度は当然

対象の固さや材質、

今どのくらい切れているかまで


その刹那の瞬間に全て俺に流れ込んで来る。


切った後のスイングも雑にはしない。

家に帰るまでが遠足であるように

用が済んだら終わりではないのだ。


音は出なかった。

振動させる事無く刃は通過した。


 絶命した悪魔は飛ばされながら

分断された体、それぞれの質量

空気抵抗の差から分離を始め

地面に転がった。


「汚っねぇ・・・。」


 悪魔耳が、ヨハンの呟きを捉えた。


えー上手行ったつもりだったんだが


後で聞いたところ

このセリフの意味はズルい

という意味だったそうだ。


武術に関しては俺よりヨハンの方に

数年では埋められない技術の差があると

自負していたそうだ。

 現にそうだった。

組手の時、俺は動きは本気だった。

でも、結果はサンドバックだ。

それがたった数日の内に

本人がなんの鍛錬も無しに逆転した。


うん

キタネェな


 斬り終わった姿勢、そこから繰り出せる

剣撃と最適な敵の位置を連続で解析していく

4体葬る頃には、最初に感じた違和感は

消え失せていた。


 残りはチャッキーとヨハンが片づけていた。


「ハァ・・・ハァ、怪我人を」


息がまだ整わないというのに

ヨハンは治療に移ろうとした。


俺はヨハンの肩を掴んで止め

「見てみな」と言った。


 俺に言われてヨハンは

周囲の人だかりを見る。


そこにはハンスが既に治療を

開始している姿があった。


「なっ・・・ええ・・・アレ?」


気が付いた様だ。

同じ魔法なのに

治療のペースがヨハンとは

段違いに速いのだ。


「兄貴・・・あれっておかしくないか」


俺はほくそ笑む

おかしくないのだ。

昨日の晩、俺は構想中だった

圧縮言語のレクチャーをハンスにした。


圧縮言語

長い文章を短い単語で同じ意味にする造語だ。

良く使用される文節などで分けることで

色々な呪文に対応できる。


ハンスは呪文の圧縮に成功したのだ。


ちなみに完全人化した俺は

圧縮はおろか、全文読み上げても

一度も成功しなかった。

いいもん

エンチャントインキとスクロールがあるもん。


「アモン様!」


いきなり目の前にゲカイちゃんが現れた。


「うぉッ」


この認識の解除は怖い。

見えているのに気が付けない。


なんて例えるか

マネキンだらけの部屋で

一体だけそっくりマネをした

人間がいきなりバァってやった時の

ビックリ

が、近い感覚かな


「今の魔法の件も含めて打合せがしたい

隠れ家にいけないか」


ゲカイちゃんを褒め頭を撫でながら

俺はヨハンにそう言った。


「いいぜ、じゃあ回収してくるわ」


ヨハンは踵を返して

治療とは別の人だかりに向かう。


「バリエアの平和はぁぉ俺がまもっ!!」


勝どきを上げているチャッキーを

捕まえるとヨハンは戻ってくる。


 ハンスの治療が終了するのを待って

俺達はヨハンの隠れ家に移動した。


 途中、昼飯用の食材を購入したが

ヒドイ

しなびた根菜が堂々と売っている。

ベレンなら新鮮なのが

もっと安く売ってるのにーやだー


 散々文句垂れた俺を見たヨハンは

主婦みたいだと揶揄した。


 料理はヨハンとハンスがやってくれる事になった。

俺は必要無いのだが、このメンツだと

俺だけがお預けになってしまうので

食いづらいから一緒に食ってくれと言われた。

それもそうだ。

完全人化して頂くことにした。


堅い話は食後という事になり

普通の会話でにぎやかな食事になった。


食後に俺はゲカイちゃんに

解除の際のセリフとポーズの

指導をする。



  いいぜ ヘ(^o^)ヘ

        |∧

        /

てめえが

何でも思い通りに

出来るってなら

         /

      (^o^)/

     /( )

    / / >


   (^o^) 三

   (\\ 三

   < \ 三

`\

(/o^)

( / まずは

/く そのふざけた

   幻想をぶち殺す


「・・・・ポーズとセリフに意味は」


「無いよ。でもカッコいいでしょ」


「くっーーいいなぁ俺もやりてぇ」


喜んでくれたのはチャッキーだけだった。

何でも命令してくれって言ってたわりに

ゲカイちゃんにあっさり拒否された。

何か怒らせたっぽいし


女の子は難しいなぁ。

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