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第九十三話

「何なんだ、あの姉ーちゃん達は」


俺の叫びを聞いて飛び出してきた

ハンスに例の低音ボイスで一括された

姉ーちゃん達は平謝りになったが

それはそれで申し訳なく

俺は不機嫌になった。


「すいません。まだ慣れていないのですよ」


どうもあの姉ーちゃん達はヴィータの

世話やら手伝いをする侍女的存在らしい

それにしてもハンス君なんで

普段は軽い声なんだ。


「衛兵共はVIP待遇してくれたぞ」


「流石、良く訓練されていますね」


「後、俺は何て言って根回しされてるんだ

なんか、みんなビビってるみたいなんだが」


それについてハンスはこう言った。


死を慈悲の隣人とし

灼熱の瞳と鋼を曲げて遊ぶ手を持ち

いかなる空をも駆け抜ける。

女神に悪意を持って近づく者を

同じ力で排除する者

もし彼がその要件であなたの元に

訪れたのなら、遺言だけは聞いてもらえるので

準備しておくように


・・・何の歌詞だよ。


「で、悪意以外は私が受けると」


ハンスはニコやかにそう言った。


「自分だけ日の当たる世界ですか」


 そんなやり取りをしながら

奥の祭壇から二階のヴィータの部屋に上がった。


「おい、ヴィータ入るぞ」


そう言って扉を開けると

そこに立っていたのは

なんか、懐かしいヴィータだ。

エルフの里に到着する前ぐらいの

少女状態のヴィータだった。


「お帰りーアモンお兄ちゃん」


くるっと回転して

ロリッロリな声でヴィータはそう言って来た。


「・・・おい、何してんだ」


「ふふふ、カワイイじゃろう」


こいつ聖刻で聞いてやがったな。

今いちコレのON/OFFが俺には

分からない。


「ヴィータもぉお兄ちゃんの膝の

上で頭なでなでして欲しいなぁー」


拳を握りしめ

プルプル震え出す俺。


「ふふふ、どうじゃロリコン魔神

こういうのが良いのじゃろう

思い起こしてみれば確かに

この位の時のが優しかったかのぉ」


膝の上に乗せ

両の拳でこめかみの辺りを

グリグリ

いつもの俺だが

ここは敢えて挑発に乗ってみよう

俺自身がどこまで耐えられるか

分からんが

勝負だ

ヴィータ


俺はヴィータの脇腹に両手を差し込み

優しく抱き上げるとベットの上に座り

膝の上に乗せた。

自分でも鳥肌が立つほどの優しい声を出す。


「ごめんよーヴィータちゃん

寂しかったかーい」


うわーキモいわ


「はわわわっわああああ」


ヴィータも、これは予想外だったようで

かなり慌てている。


毒を食らわばだ

こうなったら

徹底的にやってやる

死ねヴィータ


「お兄ちゃんもヴィータに会えなくて

とーっても寂しかったんだよぅ」


愛でる

優しく頭を撫でる。

・・・小さい頭だな。


「わわわ我が悪かった止めるのじゃー」


いやだね

このまま死ね

てめェは俺を怒らせた


「かわいいよーヴィータちゃんんんん

ペロペロペロ」


ヴィータの頭に頬ずりをしてやる。

ぎゃー

俺の限界も近い


「助けるのじゃハンスー」


とうとうヴィータはハンスに助けを求めた。

ふとハンスを見てみるとハンスは

ハンカチで目頭を押さえている。


なんでお前が泣く。


挨拶代わりのドタバタが終わって報告だ。


「なのでカルエルは探せていない

こっち何か情報は入っていないか」


無いそうだ。

これは一回9大司教パウルを先に

押さえて置く提案をした。


「それなんですが・・・・。」


ハンスが何やら困った顔だ。


「そうじゃ、アモンも言ってやってくれ」


聞いて見ると、なんと空位扱いになっている

「武」の座にハンスを据えようと

パウルが動いているらしい。

ハンスは乗り気では無いそうだ。


「ヨハン様はまだ存命中ですし・・・。」


とは言え

悪魔と契約して若くなりましたー

などと報告出来るハズも無い。

そう言う意味合いでヨハンは「死んだ」と

自分から表現したのだ。

 俺はそう言ってハンスを説得した。

それに今の立場に明確な役職は無い。

残りの9大司教にしてみれば

神の代弁者として

問答無用で上位にいられるより

同じ立場に立てる方が都合が良いだろう。


「とは言えヨハン様はまだ存命中ですし」


どうもハンスはヨハンに遠慮している様だ。


「もしかして俺に殺してこいって言ってる?」


そう言う俺に向かってハンスは

首と手を物凄い速度で横に振った。


「それにヨハンもハンスが継いで

くれたらって言ってたぞ」


ハンスがあまりに煮え切らないので

もう俺は嘘をつくことにした。

得意では無いが

このぐらいなら事後承諾でヨハンも口裏を

合わせてくれるだろう・・・多分。


そして、その言葉はハンスの中の

何かの撃鉄を下ろした。

ハンスの糸目が珍しく見開き

瞳の奥に閃光が走る。


「本当・・・ですか」


「こういう事に嘘はつけないだろう」


俺以外は


「分かりました!受けます

私が武を継承します」


キメの低音ボイスでハンスは立った。

拍手する俺とヴィータ。

なんかヴィータがニヤニヤと俺を見ている。

こいつ分かってるな。


「で、パウルさんには、具体的に

どー対処すればよろしいでしょうか」


瞬間でいつもの軽い口調に戻るハンス君

ついでだ話すか


「聖都はベレンに移すって事でよろしく」


「はい、聖都はベレンに・・・えええええ」


驚くハンス。

厳しい表情で俺に釘を刺して来るヴィータ。


「謀反はならんと言うたじゃろ」


俺は冷静に答える。


「謀反じゃない。バリエアはもうダメだ」


「「なっ?!」」


お、珍しい

ハンスとヴィータのリアクションが一緒だ。


「なんですって、そんなバカな・・・。」


「・・・・。」


信じられないと言った表情のハンス。

考え込むヴィータ。


「ヴィータは行ってみた方が

理解が早いかもな、だがオススメしない

お前、具合悪くなるぞ」


俺は昼間のバゼル騒動の一件を話した。


「末端の神父ですよ。バリエアには

9大司教が後4名、その中には

最高指導者フィエソロ様だって・・・。」


ハンスは椅子から腰を上げ言ったが

ハンスの話を遮るように

ヴィータが話す。


「が、居てもその有様なんじゃ」


ハンスの狼狽えっぷりに

ちょっと同情した俺は

追加情報も言っておいた

焼石に水だとうは思うが


「ヨハンとチャッキー、後一名

特殊な能力者の三人で悪魔の排除は

始める予定だが・・・・。」


「だが?」


続きを促すヴィータ。

これはトドメかもしれないな


「今日、魔王が聖都内に転移してきた

ババァルとも話したんだ。その後

魔都に戻ったけどね」


椅子に戻るハンス。

戻るというより椅子に尻もちを

突くような状態だった。


「排除が上手くいくとしても

ほぼほぼ戦場に近い状態になる

当然、荒れる。建物はもちろん

信者・住人の心身もな」

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