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第八十七話

 義体である悪魔に金属棒を差し込んでも

場所にもよるがダメージは気にするレベルでない。


 だが人間の身体となると一大事だ。

臓器はもちろん大きな血管、またその付近も

命に関わる。


 更に悪い事にゲカイの魔核は肺や心臓の隣だ。


 人体に差しても問題のないレベル。

注射針程度だと細すぎる。

断面図で見たとき指一本の何百分の一の

面積になるんだ?

 ハンスを操作した時の様に

注射針程度の触手を大量に差す事は出来るが

あの時は命令を伝達するだけなので

あれで十分だったが、エネルギーの補充と

なるとどうだ?

 焼き切れないレベルで補給が出来るか

自信が無いが他に思いつかない。


 抱えて飛んで近場の人々を恐怖に陥れる事も

考えたが、ゲカイを激しく動かし回すのは

良くない。


ハリセンボン作戦やるしかないのか


「・・・兄貴?」


普段なら即決で即行動の俺が

考えあぐねている様子を心配したのだろう

ヨハンが不安そうに聞いて来た。


「うまく行く自信が無いが

他に思いつかない。やるしかないか」


俺は意を決して準備に入った。

その時に変な感触を近くに感じた。

表現するのが難しい

なんか時の歯車が一か所だけ空回りする様な

感覚とでも言うべきか。


とにかくただ事では無いが

脳内アラームが反応しないので

危険が迫っているのでは無いようだ。


「御機嫌いかが、お久しぶりですわー」


ババァルだ。

あの変な感覚は転移か。


「いや、昨日も会ってるだろ」


出現する場所は分かっていたので

予めそっちを向いておいた俺は

そう言った


ババァルは魔都で着替えたのだろう。

ベレンの店で会った時と似た恰好になっていた。

うーん貫頭衣とは破壊力が違う。

後ろのチャッキーが鼻血を噴射しながら倒れた。


「・・・許したまえ」


ヨハンがそう呟くが

誰の何を許せと言うのだろう

後で聞いて見よう。


カテジナだっけ?(カーテシーです)

スカートの両端をつまんで足をクロスさせ

カクってやる挨拶。

馴れた感じでババァルはその仕草をした。

おかしくないですよ。


俺もバルタん爺さんの見様見真似で

挨拶を帰す。


俺を見たヨハンも慌ててそれに習う。


「よく来れたな。聖都内だぞ」


以前、ババァルは教会や聖都などには

転移出来ないと言っていたのを

思い出したのだ。


「皆さんの頑張りのお陰で、聖都内でも

アモンさんの近くなら降りられる様に

なりましたわ。流石に教会は無理そうですけど」


俺自身が強力な悪のパワースポットって事か

後、神への信仰自体が聖都で大きく

歪んで来ている事も影響しているのだろう。

俺は先程のバゼル騒ぎの祈りを振り返って

そう結論づけた。


ババァルの影の中から飛び出す者がいた。

言うまでも無くダークだ。


 ダークは俺に片膝を着いて畏まる。

すると小さな声がババァルの影の中から

聞こえてくる。


「私が居るのは内緒でね。」


って

許す訳無いだろ

悪魔耳をナメるなよ


「コラァ!!チャッキーに

何を吹き込んだー!!」


俺はババァルの影に手を突っ込み

ナナイの頭を鷲掴みして

強引に影から引きずり出した。


「ギャー痛痛痛痛痛痛い」


「このまま潰す。親でも見分けが

付かないぐらいバラバラにしてやる」


ドタバタ喜劇の横からヨハンが口を挟んできた。


「兄貴、今はコイツを助けるんじゃ・・・。」


そうだ

ナナイなんかどうでもいい

ゲカイだ。


俺はその辺にナナイを放り投げると

ババァルに詰め寄った。


「丁度良い。ババァルこいつに悪魔力を

補給する良い方法は無いか」


ババァルは横たわるゲカイを見て言った。


「あら、こちらの方は悪魔ですの」


ババァルは上位版デビルアイを起動させ

ゲカイを走査し始めた。


「なんですのこの方、受肉?」


ババァルのセリフにダークも

起き上がって戻って来たナナイも

驚いていた。


 戦闘におけるメリットはほぼ無い受肉を

選択する悪魔がいる事実はやはり腑に落ちないのだ。


「そうなんだ。これだとダークやナナイに

行った俺の方法だとトドメを刺しかねない」


ババァルはあっさりと凄い方法を口にした。


「粘膜同士の接触で直接注入出来ますわよ。」


「そうか、分かった。」


俺は完全人化するとズボンのベルトを外し始めた。

チャッキーが凄い勢いで止めに来る。


「離せ、これは性的行為ぢゃない

治療なんだああああああ」


高〇クリニックで邪魔な皮を取ってある

俺のは粘膜剥き出しなのだ。


「ダメっすよ!何言ってんすか」


で、女子の粘膜って言ったら

フヒヒヒ


「HA・NA・SE!!!」


 このコントの間にババァルが

何とも百合百合な手段で補給は終了していた。

ヨハンはまた「許したまえ」とか言っていた。


唇も粘膜だよね

ババァルも受肉だっけ

はぁ残念


いや

良かった良かった。


「あ、拭いてやるよ」


俺はお出かけセットからガーゼを取り出し

熱交換で結露させた水分で濡らす。


ババァルの口にはゲカイの血液が

汚れとして移ってしまった。


 ババァルの顎に指を当て、反対側の指で

ガーゼをそっと優しくババァルに唇に当て

キレイに拭ってやる。


 ババァルはその間、なんか見た事も無い

表情になって、体はカチンコチンに緊張していた。


どうかしたのか

まぁ、嫌がらないのだから、いいか


その後でゲカイの汚れもキレイに拭いてやる。

やっぱり女の子はキレイにしてないとな。


 ゲカイ顔色はすっかり健康状態に戻っている。

念の為デビルアイで確認すると

一部、出血箇所があったが

これは病気やケガでない女子特有の

月一のアレだ。

受肉はこんなトコロまで再現するのか。


 完全膝カックン耐性が周囲に接近する

まばらな集団を感知した。


 悪魔光線の音と光が野次馬を呼んでしまったのだ。

場所を変えよう。


「アモン殿。」


ダークも気が付いたようだ。


「分かってる、場所を変えよう。

ババァル!」


「っはい!」


どうした、変だぞお前。


「俺達ごと転移できるか」


「拙者の術で全員影に入れるでござる」


察したダークがより早い解決策を言って来た。


「よし、それで行こう」


誰の陰に隠れるかだが

ここに居ても変じゃない恰好の人物は

ヨハンかチャッキーだよな。


よし


「全員チャッキーの影に!!」


「俺っすか?」


異論は認めない。

皆そう思っている様で

俺の掛け声でチャッキー以外は

素早く行動に移った。

ダークがチャッキーの影に手を当て

何か呟くと、ナナイはチャッキーの影に

飛び込んでいく。

 続いてババァルがスカートを少し摘まみ上げ

モタモタと入って行く。


「兄貴、俺は外でも問題無いよな」


得体の知れない術に警戒しているのか

チャッキー一人を残すのに不安を感じているのか

ヨハンはそう言ってきた。


「そうだな。ちょっと待っててくれな」


確かにヨハンは入る必要は無い。

俺はまだ意識の戻らないゲカイを抱え上げると

チャッキーの影に飛び込む。


 視界が完全にブラックアウトした。

影のは中は一切の光が無かった。

ちょっと怖い


「へぶぅ」


飛び込んだ俺の足が何かを蹴ってしまった。


「あ、ゴメン」


「何すんのよ!」


「なんだナナイか、どけよ」


完全膝カックン耐性が機能しない

当たり前だが通常空間では無いので

センサー系がパニくっているようだ。


「音は漏れるので静かにするでござる

後、発光する技は厳禁で」


最後に入って来たダークが

そう注意してくれた。


ダークが入って来た場所は

すぐ頭上でチャッキーの影の形で

光っており、そこから空とチャッキーが見えた。


これが影の中か

へー


ふと自分の手を見ようとするが

頭上の光が中を照らす事は無い

真っ暗だ。

不思議な感覚だ。


「チャッキーどっか移動しろ」


俺は頭上の光に向かって囁いた。

チャッキーの代わりにヨハンが

答えてきた。


「こっから近くに良い隠れ場所があるぜ

着いたら呼ぶからよ」


「任せた」


俺はそう返事をしてから

抱えているゲカイの様子を見ようとしたが

やはり見えない。

感触から生きているのは伝わってくる。


足の裏に明確な感触が無いが

光が遠のいて行かないトコロを見ると

落ちて行くワケではない様だ。


座れるのかな


俺はしゃがみ込み

片手で地面があると思われる足の付近を

手探りする。


「キャッ」


俺の手は何か柔らかい物を掴んでしまった。


「ごごゴメン」


「何すんのよ!」


「なんだナナイか、どけっつたろうが」


思い切り握ってやる。


「痛痛痛痛痛痛信じらんない最低!」


「静かにするでござる!」


ナナイのせいで怒られた。

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