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第八十二話

「お待たせしましたですわー。」


不意に扉が開いてタムラさんが

ワゴンを押しながら入って来た。


「お待ちしておりましたわー。」


嬉しそうに答えるババァル。

ワゴンにはお茶と菓子が満載だ。


人が部屋の手配している横で

何やら話していていたが

こういう事か


いや

これは気が利くのか


とは言え、ここで食事が可能なのは

ババァルとチャッキーだけだ。

ほぼ自分の為だけだろう


ふと菓子を見ると、どら焼きが有り。

俺のより上手に焼けている。

更にエルフの文字で焼き印まで入っている。


見てみれば何やらタムラさんが

勝ち誇ったような顔で俺を見ていた。

ババァルはすっかりタムラ製どら焼きの虜だ。


なんだこれ

これももしかしてNTRになるのか


しかも焼き印が気なる。

元祖とか入れてんじゃねーだろうな

おいおい盗作だろ

って俺のオリジナルってワケでも無いか


「みなさんもどうぞー」


ババァルはそう言ったが

やはり魔神二人は食事を摂取しない

俺も半人化のままが良い様な気がしたので

不要だと言った。


「あら、では私一人で」


「俺は食うっすよ!」


スルーされそうだったチャッキーは食らいついていく


「俺は食うっすよ!!」


分かったから


さて次はナナイだ丁度良いタイミングなので

疑問に思っていた事を聞いて見よう。


「ナナイは食えないのか、

内臓を形成していたみたいだが」


機能していないのは承知の上だったが

本人が何て言うか気になった。


「あぁ形だけで生物としての活動はしていないのだ」


ナナイの解説によるとキメ細かな剣技には

生の肉体の方が理想的なのだが

いかんせん脆弱である事と

細目な栄養補給や体温維持などなど

戦闘に不向きな事が多すぎなので

せめて義体で形だけでも似せているそうだ。

実際の効果は疑問だが

これも本人の気持ちの問題だ。


「よく分かる。俺もやってみようかな」


言ってみたものの俺には剣技など無かった。

俺の言葉が意外だったようで

理解者が居た事にナナイは驚きと喜びを露わにした。

他の悪魔には理解されないらしい。


「後、ババァルをなんで姫と呼ぶんだ」


「成程、そのような質問が来るとは

本当に中身はアモンではないのだな」


そう前置きをしてナナイは説明を始めた。


 魔王は12の王家、まぁみんな親戚で

それぞれの王家から一名代表で魔王を襲名

ババァルは代替わりしたばかりの魔王だそうだ。

先代は激強のじいさんで、込み入った事情で

一代飛ばして孫にあたる今のババァルが誕生したそうだ。

襲名の際、技を引き継ぐのだが

性格が性格だった為か攻撃系はてんでダメで

こうなったそうだ。


「失格とか無いのか」


無いそうだ。

基本、最終決戦以外で魔王は戦闘しないとの事で

その最終決戦で勝った試しが無いので

戦闘力はあまり問題にならないそうだ。


大問題じゃないか

シンアモンが決着を急いだのは正解じゃないのか


そして13将も各王家の家来から1名を選出。


 ナナイはババァルの王家の代々つづく家来の

出身だそうで、幼少期は親友だったらしい。

ダークも近縁の王家の選出だ。


「12の王家から魔神を1名選出?」


俺は当たり前の疑問を言ってみた。


「あぁそうだ。」


「ひとり多いぞ。13将だろ」


ナナイはため息を一つ付いてから説明してくれた。


「それがお前だ。アモン」


 王家に近い者が強力な力を有している。

この悪魔の常識外の存在だったそうだ。

無名の下級悪魔の中から突如として台頭し

最後はオーベルの策を持って挑んだベネットを

打ち破り、周囲を黙らせた。

数を保つため王家関係から脱落させられない

そんな事情から12将が13将に変更になったそうだ。


 長年続く王家の支配に疑問を提示し

圧倒的な力で勢力を拡大している成り上がり


それがアモンだ。


すげぇなシンアモンさん

さすが本物

そっちの話の方が面白いんじゃないか

アモンサイクロペディアにはアモン自身の

記述は一切無いので新鮮な話だった。


 なるほどな、そういう事情があって

それで婚姻がどーたらこーたらで

ナナイはプンプンしているのか

なんか魔界も人間界も

こういうドタバタは同じなのね。


「ババァル」


最後にババァルに聞きたい事

というかお願いしたい事があった。


「んぐ」


 飲み込んでからでいいですよ。


「はい、なんですの」


俺は転移及び時間停止など

継承した魔王の力を俺に教えてもらえないか

お願いしてみた。


「人の話をきいていたのか。それを

させない為に我々はだなぁ!」


ナナイが激昂するが俺は冷静に説明した。


「俺は死んでも魔界には行けない。

死んだら終わり、これは今回限りの事だ」

 

ナナイ達の言うアモンは既に魔界に帰った。

ここでの俺の経験は彼には還元されない。


「それでもなりませんよ姫様

この者は神側の陣営です。」


落ち着いたものの、ナナイは

不機嫌そうにババァルに忠告した。


「最もだ。だからお願いなんだ」


教え導いてくれる師はいない。

そんな俺には貪欲に知識技術を

吸収し選択肢を増やしていくしかない。

自らがだ。


「はい、よろしいですよ」


ババァルは何でも無い事の様に言った。


「「姫様!!」」


ナナイとダークが声を揃えて

ババァルを咎める。


「この方の活躍がなければ私は処刑されて

いましたわ。お二人が残っているのも

この方が手心を加えて下さったからですわよ」


ババァルがそう言うと、二人はしどろもどろだ。


「そ・・・それは、いやしかしだからと言って」


「拙者は刀も頂いたでござる」


ババァルの口の端が吊り上がる。


「むしろ好都合ですわ。

アモンが魔王の器足りえるのか

魔界で試す訳には参りませんもの

ここで実験してみませんこと」


魔王の器

なんかヤバ気なワードじゃないか


迷った俺を察したのか

ババァルは素早く俺の前に立つと

自分の手と俺の手を合わせる。


「あ、ちょ」


「参りますわよー」


チャッキーにやらせれば良かった。

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