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第七十七話

 異変に気が付いたのは、エルフの里まで

後数キロの辺りだ。


「どうかしたんですか?」


背中のチャッキーは俺の様子の変化を

察してそう聞いて来た。


そんなにわかりやすいのか俺。


「敵襲だ。ヨハンが戦闘中だ。」


「マジっすか!?」


 デビルアイ望遠モードで確認すると

里前広場ど真ん中にヨハンが立っている。

 周囲には数体の下位悪魔の死体が

転がっている。

 ヨハンは腰を落とし如何なる方向からの

攻撃にも対処出来る姿勢で構えている。


 バルコニーには弓を構えた数人のエルフ。

あの装備は精鋭だな。

彼等が周囲を注意深く見回している。


 昼間、ヨハンは400m先のチャッキーを

察知していた。

 熟練のエルフ戦士は頭上の精霊から

敵の位置を教えてもらう事が可能だ。


 その彼等がこの状態だ。

この事実から敵の見当はついた。


魔神13将・10位 影のダークだ。


 ババァル救出後に俺は記憶に残された

アモンサイクロペディアから13将の

記述を繰り返し読んだ。


 ババァルを保護すると決めた以上

彼等と戦闘になるのは避けられない。

相撲に限らず、どんな勝負の世界でも

大金星・大番狂わせがある。

 一位と言っても下位との差は僅差なら

僅かな隙で敗北も十分有りうるのだ。


どんな技を使うのか?

弱点は?


事前に準備出来る事はやっておいた。


 ましてや試合では無い、律儀に

一対一で戦ってくれる訳も無い。

俺は数体を相手しての戦闘も考え

頭の中にいくつもの対応策を練ってある。


「チャッキー、ベランダに降ろすぞ

そこで観戦しててくれ。」


「何言ってんすか。俺もやりますよ」


昼間に感じた以上の闘気を背中に感じた。


「いや、今回は見て覚えてくれ

これから聖都で相手してもらう

悪魔っつうモノがどういうモノなのかを

知らなかった、で死にたくないだろ。」


「・・・分かった。」


渋々ながらも納得してくれた様だ。


「急激な加速減速で一瞬でベランダ前に

飛び込むからな、しっかり掴まっていろ」


俺が、そう言うとチャッキーは俺の

後頭部から両足を首に両手は角に

しっかりとホールドする。

俺は右手を回しでチャッキの背中を

そっと押さえる。

 この右手はチャッキーが落ちない様に

支える目的では無い。

 重力操作で彼の体重を限りなく0に

しておく為だ。

 こうすれば音速で行われる加減速での

慣性で挽肉にならないで済むのだ。

 大気の摩擦は大気操作でほぼ無風にする。


「行くぞ」


 そう言って一秒でベランダ前に到着。

エルフ戦士達が音を立てビクっとするが

すぐに俺だと気づき安堵の息を漏らした。


「アモンかぁ脅かすなよー」


エルフ戦士の内の一人はプラプリだった。

兜のバイザーを上げながら文句を言った。


「敵襲だろ、俺がやる。こいつを頼む」

 

俺はホバリングしたまま転回し背中を

ベランダに向けた。


「おい、チャッキー降りろ」


チャッキーは固まったまま動かない。


おいおい嘘だろ

こんな時に・・・。


「え?アレ!!今何が起きたんすか?!」


良かった死んでいない。


「着いたんだよ。降りろって」


 チャッキーはわたわたと背中からベランダに

飛び移った。


「あれ?俺の靴どこっすか??」


振り返るとチャッキーは片方しか靴を履いて

いなかった。


知らないので無視して俺はヨハンの元まで

ゆっくりと飛んで移動する。


背中の方でチャッキーの叫び声が聞こえた。


「俺の靴どこっすかあー!!!」


 俺はそよそよと空中を漂いヨハンの

後方3m上2m位まで来た。


「ヨハン。チャッキーの靴見かけなかったか」


 近くで見るとヨハンは満身創痍だった。

ただ傷自体は浅く、派手なだけで深手と

呼べる傷は無い。


 ただ妙なのは、傷はあらゆる方向から

一種類の刃物で付けられたモノだ。


「靴が必要って事は生きてんのか

良かったぜ。兄貴、気を付けろ敵は」


「影に隠れる奴だろ、雑魚掃除ご苦労さん

後は俺に任せろ・・・つか俺にやらせろ」


影のダークについては

ちょっと

いや

かなり

結構

頭に来ているのだ。


「おう・・・頼むぜ」


振り返ったヨハンは何故か顔面蒼白に

なっていた。

傷は多いが元気なハズなんだが

まぁ俺が来た事で緊張がほぐれて

疲れがどっと押し寄せたってトコロか


 体中の傷の具合を確認しながら

ヨハンは里に戻って行った。


 しっかりとした足取りでヨハンは

ベランダまで来た。


「ヨハンさん大丈夫っすか!?」


駆け寄るチャッキーにヨハンは手で

平気な事をアピールした。


「体は大したことねぇが、恥ずかしいが

正直ブルってる。」


「アモンさん・・・ですか」


チャッキーも少し青ざめた顔だ。


「あぁ、ありゃヤベぇな・・・・

殺気に縮こまるなんてガキの頃以来だぜ

しかも、あれ俺に向けたんじゃないんだからな」


バルコニーには腰を抜かして尻餅をついて

ヘタり込んでいるエルフもいた。


「あんなのが聖都にいるんすか?」


冗談じゃないと言った感じでチャッキーは漏らす。

笑いながらヨハンは答えた。


「全員アレ以下だから安心しろ」


 ヨハンの様子が気になったので耳その他で

探ってみれば、言いたい放題だな。

聞いていなかった事にしよう。

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