第七十六話
「で、そっちはどうだったのじゃ
毎度毎度、単独行動の度に何かを
拾ってくるが、とうとう死体じゃ
何があった。」
ヴィータの言葉に驚くチャッキー。
「えー死体っすか?!マジっすか」
お前だよ。
俺は順を追って話し始めた。
「フーム、ババァルが転移できなかったじゃと」
それがそもそもの捕まってしまった要因だ。
ヴィータは解せぬと言った感じで首を傾げる。
「アモンよ。ババァルを調べたか。」
「一応見てみたが変わった所は無い
・・・と思いたいが自信がない。
彼女は俺より上位だ。俺の力が
通用しない可能性がある。」
俺の返事を聞いてジト目になるヴィータ。
「彼女・・・・。」
「ん?女性だろ・・・。」
何か変か
「まぁ良い。」
なんか、ヴィータは渋々といった表情だ
俺は気にせず話を続けた。
「魔神の策略だったと思うんだが魔神が
上位の魔王に細工なんて出来るものなのか」
「そこじゃ。ヌシが言うた通り
最上位である魔王の行動を魔神が
阻害出来るとは思えん
が、今回もコレじゃろう。」
そう言ってドレスのスカートの中に
手を突っ込んでモゾモゾし始める。
そして古城でヴィータが繋がれた
例の鎖をジャラジャラと取り出す。
「持ち歩いてんのか・・・。」
何で持ち歩く
そう思う俺の横でチャッキーが叫んだ。
「知ってるぜソレ」
「ほぅ、格闘家と聞いたが知識も
優れておるようじゃの。」
感心するヴィータにチャッキーは
自慢気に語り始めた。
「普段は左程でも無いがガチの時は
丸い方は防御専門、三角の方は
何百光年の先の敵にも攻撃を」
君のコスモは燃えっぱなしだな。
再びジト目になったヴィータは
チャッキーを無視して話を続けた。
「これと同様のアイテムを使ったの
じゃろう。これは対神用じゃが
対魔王用の何等かのアイテムを
使用すれば行動を阻害できうる。」
そんな大袈裟な鎖は巻かれていなかったが
鎖とは限らないか
エルフの里に戻ったらババァルに
聞いてみるか。
「で、ババァルはどうしたのじゃ」
ヴィータに聞かれて俺は古城から
エルフの里に移動した話をした。
「ヨハン様には会いましたか
元気でいるのでしょうか。」
やっぱり気にするよねハンス君は
ここでもチャッキーが横から入って来る。
「ハンスさん。あのマチョメンと知り合いなんすか」
「マチョメン・・・?」
意味が分からないハンス。
そりゃそうだ
さて
正直に言うべきか
「いえ、9大司教のヨハン様が
エルフの里で療養中でして」
同名の人違いとカン違いしてくれたようだ。
「大司教ヨハンは昼間に死んだ。」
俺の言葉に凍り付くハンスとヴィータ。
「と、本人がそう言っていた。」
続く俺の言葉にコケそうになるハンス。
「はぁ?」
「・・・・キチンと説明せい」
どうせ、俺の嘘はバレる。
正直に悪魔の契約の話をした。
「・・・それで、今はマチョメンなんですね」
怒るかとも思っていたのだが
ハンスは想像が追いていかない様だ。
なんかポカーンとそう言った。
対してヴィータ不審に思っているようだ。
「寿命わずかの人間に契約じゃと?」
俺は、その後のババァルとの会話を
ヴィータに説明する。
「ふーむ・・・読めん」
ババァルが何を考えているのか
と言う事であろう。
「単純に裏切った部下どもに
お仕置きするつもりなんじゃないのか」
俺も疑問には思っていたので
考え着いた結論を言ってみた。
しかし、ヴィータは首を傾げる。
「兵を減らすマネを魔王自らが加担する
メリットは無いぞや、あやつは一体何を
考えておるのじゃ・・・・。」
「話をした感じでは、彼女は」
「彼女?」
しつけぇな
「ババァルは世間知らずのお嬢様って感じだ
自分で考える事をせず、言われたまま
疑問を待たずに行動するタイプだ。」
俺の言葉を聞いたヴィータは
なんか可哀想な生き物を見る様な目で
俺を見て言った。
「ベネットといい、オヌシといい
はぁー。」
なんだ騙されているのか俺は
「まぁ良い。で、ババァルを今後
どうするつもりじゃ」
それだ。
どうしよう
「魔神の襲撃が考えられる。エルフの里に
置いておくのは迷惑が掛かるしなぁ・・・。」
殺害されてバーストを引き起こされる
これは避けたい。
「んーベレンにも入れんじゃろうし
処刑しそこなった魔女じゃからな」
良いアイデアが出ない。
バロードの村も考えたのだが
ベレンと交流が深い、
あんな美人はすぐ噂が広まってしまう。
「うむ、ヌシが責任を取れ
お主の計画でこうなったんじゃ
なんとかせい。」
丸投げだ。
まぁでもそうだよな。
「分かった。チャッキーと戻ったら
本人と話して考える。迷惑は掛けない。」
そして今後の予定の話になった。
明日は朝からヨハンとチャッキーを聖都に
送りついでに、俺も聖都の様子を探る。
ヴィータとハンスは基本的に教会から
移動する事はなさそうなので
今日の様な感じで俺が教会に出入りする。
ここでの俺の立場はハンスの懐刀的な感じで
根回しをしておくとのことだった。
「聖都の帰りにカルエルと一度会いたいな」
俺の申し出も許可された。
これは二人も気にしている案件だった。
こうして再び俺は蘇ったチャッキーと
エルフの里に戻った。
「いっやほぉおおおおおおおおぅうう!!!」
夜空を飛ぶ俺の背中にしがみ付くチャッキーは
行きとは違い、元気そのもので
生まれて初めての空の旅を雄たけびを上げて
喜んでくれた。
「夜空を見る度、思い出せー俺は
ナイトライダーだああぁああああ」
うるさかった。