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第七十五話

「仕方が無いのぅ。ふふふ」


 なんで嬉しそうなんだ。

いや、今は好都合だ。

ご機嫌の内にやってもらおう。


 俺は箱の縦のパーツを展開して開いた。

横たえられたチャッキーを

しばらく観察したヴィータは顔色を変える。


 いつもなら直ぐに蘇生するハズの

ヴィータが固まっている事に

不審を抱いたのかハンスが尋ねる。


「どうかされましたか。ヴィータ様」


「こやつ、どうやって死んだか分かるかの」


 やはり普通の死体では無いようだ。

俺は覚悟を決め、魔法陣を取り出し広げると

洗いざらい話した。


「二つあるのぉ」


「使ったのは特殊なインキで書いた

俺の居た世界の言語の方だ。

読めないだろうと考えたので

こっちは普通のインキで書き写した

こちらの言語版だ。」


 ヴィータはオリジナルの方を手に取り

しげしげと眺め、時折うなずいている。

 ハンスはコピー版の方を手に取り

読んでいた。

 ヴィータは魔法陣の上に指を当て

それをスライドさせてブツブツ言っている。


 俺の作った魔法陣は簡単にいうと

雑誌の企画でよくある様な

性格診断でお馴染みの、YES・NOで

分岐していくタイプの図式を

円の中にまとめた構造だ。


「ココじゃ!」


 魔法陣の一か所を指さし

ヴィータは大きな声を出した。

 俺はその場所を覗き込む


「ココはこっちに繋がらないとイカン

折角、円で描いてあるのにココで

循環が途切れておる。これでは

生命エネルギーが全部出て行って

霧散してしまうでな」


 傷を治癒する事は成功したが

そんなプログラム上のミスで

チャッキーの生命エネルギーは枯渇して

しまったのだ。


 俺はまた失敗した。

ハンスの身体を操った時もそうだったが

俺は基本的に僧侶系に

向いていないのかもしれない。

悪魔だし、向いているハズが無い。

しかも今回は人命を損なった。

ショックがでかい

ヴィータがいなければどうなっていたのか

つか

蘇生出来るんだよねヴィータ様。


「蘇生は出来ないのですか。ヴィータ様」


 俺の心の声が聞こえているのか、ハンスは

ヴィータにそう尋ねた。


「いや簡単じゃ。ただ見た事も無い

死に方をしておるので気になっての」


ほっとする俺。

良かった。


「時間が経ってしまっても大丈夫なのか」


 念の為に俺はヴィータに聞いた。

と言うか早く蘇生してもらい安心したいのだ。


「腐っておらねば大丈夫じゃ、今やる。」


ロクにチャッキーの方を見もせず手をかざす。

黄金の光に包まれたチャッキーは

血色が見る見る良くなっていく。


「ん??」


しかし、ヴィータは想定外の事態に

驚いた様子だ。


なんだよ

やめてくれ

生き返らせてくれ


「なんじゃ、こやつは?!」


「どうかされましたかヴィータ様」


「おい、何が起きてる説明してくれ」


驚くヴィータに俺とハンスが詰め寄る。


「こやつ・・・魂と肉体の結合が根本的に

緩いぞ。ここまで緩いのは初めて見た

これではちょっとしたショックでも

死んでしまったりするやも知れんぞ」


はい

かもじゃなくて

そうなんです。


「ホレホレ、見てみぃホレホレ」


ヴィータは手毬でもするかの如く

チャッキーの魂をチャッキーの肉体から

出し入れする。

 そのドリブルの度にチャッキーの

顔色も高速で変化対応している。


「ヴィータ様ーーー!!!」


「やめてあげてーーー!!」


 命をもてあそぶなと

怒られる覚悟していたのに

叱るべき女神本人が命を遊びに使い始めた。

こいつは本当に予想外を攻めてくる。


「ド・・・・ドウすファンゴォオオ!!」


やっとこさ蘇るチャッキーは

死を超越する者の称号を手に入れた。


「なんか目がすげぇチカチカすんですけど」


間違いない

ドリブルのせいだ。


「あれぇ?ココどこっすか?」


「チャッキー君!!!」


意識朦朧といている様子のチャッキーに

抱きついて喜ぶハンス。


「え?ハンスさん。え?なんで」


 俺はチャッキーに事情を説明し

実験の失敗を謝罪した。


「あ、そうだったんですか」


チャッキー君は怒る事無く快諾してくれた。

大物だ。


「ヌシは肉体と魂が分離しやすい体質じゃ

ついでと言っては何なんだがの今回の

蘇生ついでに結び付きを強化しておいたでの」


助かります。ヴィータさまさま


「マジっすか?!」


驚くチャッキー

今まで良く無事だったな。


「じゃが、それでもまだ抜け易いの

十分注意するのじゃ。」


何をどう注意すればいいの?


「ハイ!!分かりました。

ありがとうございます!!」


今ので

分かったの

まぁいいか他人事だ。


ツッコミたい気持ちは山々だったが

今回は立場が弱い。

大人しくしていよう。


「なぁ、こっちは茶番の後どうなったんだ」


 俺は自分が不在の間。

二人がどうなったのかを聞いた。


「それがの・・・大騒ぎじゃ・・・。」


疲れ切った表情になったヴィータは

話し始めた。


 女神ビームで魔女もろとも悪魔を

葬り、ベレンを救った救世主。

 ハンスが持っていたヨハンの

9大司教の証、この二つの事実から

疑う事無き真の神降臨。


 都市に居る全ての人々がひれ伏し

感謝の祈りを捧げた。


 領主ローベルト・ベレン6世は

自分の居城に招き入れようとするも

教会側、特に9大司教「流」のパウルが

強硬に拒否、教会と敵対する事をと領主が

恐れた形で教会入り。


 教会に入ってからは、ご覧の服装と化粧を

施され次々と謁見を希望する要人達と

あの演技で適当にあしらう状況になった。


 ハンスの地位は微妙な事になった。

絶対的信頼をヴィータが醸し出した為

 本来、立場が上のハズの神父も

命令出来なくなってしまっていた。 


「彼を通してからです」


事あるごとにヴィータはそう言い

事実上、神の代弁者たる最高位に値する

地位を確立させられてしまったのだ。


うまいな

後は領主をうまく抱き込めば

ベレンは俺達の思うがままだ。

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