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第七十二話

「兄貴、大変だ。チャッキーが」


風呂上りに果実の汁とミルクを混ぜた

特性フルーツミックスを楽しんでいる俺に

ヨハンは血相を変えて言ってきた。


「また、死んだのか」


今回は何もしてないぞ。


「大量の鼻血を出してぶっ倒れている」


覗いたな。


「だから止めておけと・・・。」


俺は風呂場まで戻ると殺人現場みたいな

状態になっているチャッキーの頭を

掴み脱衣場まで引っ張って来て

その辺に転がした。


 一応デビルアイで走査し問題無い事を

確認すると、竹で組んだベンチに

寝かしてやる。


 全く人の至福の時間を邪魔しやがって


「兄貴・・なんだこの飲み物、氷が浮いてる」


当然こちらの世界には冷蔵庫は無い。

この時期に氷など

お目にかかれるハズ無いのだ。


「飲むか?」


 俺は左手でガラス製のコップを

右手は冷却で氷を作り放り込むと

タムラさんが見学ついでに持って来てくれた

フルーツミックスの入った水筒を取り出し

注いでやる。


「すげぇな創造の力なのか」


横で見ていたヨハンは驚いている。

悪魔光線に比べれば大した事ないのだが

それは本人にしか分からない事だ。


「何か凄い音がいたしましたが」


仕切っただけの脱衣場の向こうから声がした。

ババァルも上がった様だ。


「チャッキー転んだだけだ心配ない」


言わないでおいてやろう武士の情けだ。


「そうですの。後、良い香りがいたしますが」


そっちが本命の用件だろ。


「飲むか?服着終わったんなら持ってくぞ」


「いただきますわー」


俺は「何だこりゃ美味ぇ」とやたら驚いている

ヨハンを尻目にもう一杯作ると運び

そして全部溢しそうになった。

ババァルは服を着ていなかった。


「だからー」


俺は目を伏せながら床に飲み物を

置き脱兎のごとく撤退する。

ババァルはクスクスと笑っていた。


 半人化で良かった。

俺もチャッキーの二の舞になる所だった。

 さて、フルーツミックスの続きを味わうとするか

人化した瞬間、俺は大量の鼻血を噴き出し倒れた。

こういう仕組みなのか


 復活したのはチャッキーと同じタイミングだった。

仲良く並んで転がっていた。


 俺は掃除をしてから里まで戻る。

俺とチャッキーはヨハンの部屋に

ババァルは以前ヴィータが泊まった部屋に

泊まる事になった。


 それにしても、女神と魔王が宿泊した宿って

なんか凄いな。


 俺はヨハンの部屋で本命中の本命の

問題というか課題の話に入った。


「秘術・・・そればっかりは兄貴にも

言えねぇよ。勘弁してくれ」


「そんな責任を負った奴は

昼間死んだんじゃなかったのか」


困り果てた様子のヨハン。


「いや、マジでコイツは危険なんだ

広まったりしたらヤバいんだよ」


俺はMP=寿命の話を振る。


「そうだ。兄貴は直に見てるだろ

二つ使っただけで、あの有様だ。」


「神の行っている奇跡をそのままトレースなんか

するからだ。いいか、あいつらはこの世界の

サイクルから外れた別の世界の住人だ。

存在の力の制限が無い。それをそのまま

この世界の者が真似すればああなる」


例えれば

人間が一本のロウソクで

残りの蝋を瞬間で燃やし通常では

あり得ない火力を出す。

これが教会の秘術だ。


神は蝋ではなく、この世界にノズルだけ

出した火炎放射器だ。

本体は元の世界に有り、こちらからは見えない。

火力も燃焼時間もロウソクとは比較にならない。

こちらの世界から見た時には小さな金属のノズルから

永遠に炎を上げている様に見えてしまう。


「だから寿命以外の力を元に奇跡を行使するんだ」


「その理論は大昔に在って、失敗したとの事だぜ」


「ヨハンは試したのか」


「いや・・・試そうにもどうしたらいいのか

全然、見当もつかねぇよ」


うーむ、自覚は無いのか


「お前、昼間の模擬戦で近い事を

既にやってのけているんだが」


銀色のオーラ。

勇者の家系エッダちゃんも使っていた

アレと同種の力だ。


模擬戦の最中、デビルアイでじっくり

観察させてもらったが、あれは体内から

発生してこそいるものの、力の根源は別だ。


「銀色のオーラだって?」


 やはり可視化までは来ていない。

エッダちゃんの場合は槍という媒体自体が

既に可視化出来る範囲まで強力なのだろう。


ここで寝ていたと思われたチャッキーが

割って入ってくる。


「俺おれオレそれ知ってるかも!!」


 聞く所によると勇者の剣も輝くそうだ。

稽古中にそのモードになるとチャッキーでも

手が付けられない強さになるそうだ。

聖都内では「加護」と呼ばれていたそうだ。


「その通りだな。ヨハン、お前の拳はもちろん

体中にその加護が宿って攻守とも破格に上昇していた」


 エルフの精霊は頭上にいて、

同じ様な事をしている。

特定の信徒には神の力が距離や時空を超えて

当人の力として行使されているのだ。


「え、でも・・・あの時の俺は神を捨てていた」


「お前が神を捨てても、神はお前を捨てなかったんだろ」


信頼、相手があっての関係だ。

一方的な都合で自由になる事は無い。


「つまりだ・・・えーと」


「あーーー俺喉乾いちゃったなー」


話を続けようとする俺の腕を引っ張るチャッキー。


「ちょっとアモンさんと飲んでくるぜぃ!」


強引に俺を部屋から連れ出そうとする。


「なななんだよ。一人で行けば」


抵抗する俺に囁きながら怒鳴るという高等技術を

使うチャッキーは言った。


「気ぃ利かせようぜ。しばらく独りにさしてやろう」


見ればヨハンはまるで女の子のように

両手で顔を覆い、肩を震わせていた。

あー

察し


「そうだな・・・ちょっと行ってくる」


俺達はヨハンの返事を聞かず

部屋をそそくさと出て行った。

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