表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/123

第六十八話

「お願いいたします。」


即答だ。

目力が違う、洞窟内で見た感じに近い。

先程までの老人のそれではない。


コイツもハンスと同じ人種だ。

堅物キャラだ。

冗談が通じないタイプだ。


「今、戦えるというのならば、この魂

喜んで差し出しましょう。」


 パチパチと拍手するババァル。

その拍手の後、上位版デビルアイで

ヨハンを走査する。


「あら、流石にこのままじゃキビしいですわね」


何がキビしいんだ?

俺もデビルアイでヨハンを走査してみるが

うん

ただの老人です。


「何がどう困難なんだ」


俺は素直にババァルに尋ねた。


「神への忠誠が強すぎで手がつけられませんわ

あなたに刻まれた聖刻で全身ビッシリなイメージ」


それは手がつけられん。


「ですので。神を捨てなさい。」


凄い事をさらっと要求する。

相手は神父、それもトップに立つような人物だぞ。

その相手に神を捨てろとか

出来る訳無い、仮に出来たとしても

何年も掛かるんじゃないのか

それこそ修行に費やした時間と同じ位に


「・・・捨てました。お願いいたします。」


即答するヨハン。

えー嘘ーっ

俺もババァルも疑いの目たっぷりだ。

二人ともデビルアイで再び走査する。


「あらあらまぁまぁ」


ババァルの驚きっぷりから察するに

ヨハンは神を捨てるのに成功したようだ。

俺にはさっきと何が違うのか分からん。

ただの老人だ。

聖刻と同様なら

発動していれば分かるのかもしれないが

スリープ状態では判別出来ない。

それも見抜けるのだから

流石は上位版と言うべきか

恐るべしババァ。


「スゴイですわね。あれ程の信仰を

瞬間で捨て去るなんて・・・・」


ババァルが初めてヨハンを認めた瞬間である。


「では、アモンさん契約して御上げなさいな」


「え?俺、出来ないよ」


どうやってやるんだよ。

全くイメージ出来ない。


「出来なくないですわよ。悪魔ですもの」


「いやいやいや、やった事ねぇし、魔王やってよ」


ハァーっとため息をつくババァル


「こっちに臆病者がいると思いませんでしたわ」


「臆病?やった事無いから分からない

経験者に任せようって普通の判断だろ」


ジト目になるババァル。


「あら、ではあなたは異世界で人間だった

時に目から怪光線出してらしたの?」


「いいえ」


なわけあるか


「では生身で音速飛行してらしたのかしら?」


「・・・いいえ、出来るかなーって思ったら出来た。」


もしかして悪魔の契約もそうなのか


「本能的にやりたく無い事を都合良く

やらない為に他人に押し付けようとしてる

だけですわよ。」


「でも先生、やった事ないのは本当なんです

それに飛行やビームと違って相手がある事なので

失敗を回避し成功率の高い方を選択するのは

アリだと思います。」


ここでヨハンが割って入る。


「どちらでも構いません。早くして頂けませんかな」


「すいません。もう少しお待ちください」


なんで悪魔の俺の方がへりくだるんだ。

逆だろ。


「こちらの方がお望みなのは戦闘力ですわよ

あなた私の戦闘力御存じでしょ。」


0です。はい


「あ、何でもって言っても適任みたいなのあるのね」


「そうですわ。自己の能力を超える願いは

叶えられませんわ」


玉を7個集めると出てくるドラゴンも

同じ事を言っていたな。

地域や宗教によってはドラゴン=悪魔だから

あれも悪魔の契約だったのか?


「ほらーほらーだから、そう言う基本的な事も

知らない初心者なワケじゃんオレって」


自分でもいい加減見苦しくなってきた。

認めよう。

嫌なのだ。

中身が人間の俺は、やはり悪魔の力を恐れている。

特に物理的な力でどうこう出来ない

得たいのしれない力が怖い。

宇宙人よりお化けを怖がるタイプだ。


 結局、俺がやるハメになった。

俺はババァルの助言と

アモンサイクロペディアの知識を

その場でなんとか覚え

儀式を行った。


「望ミヲ言エ。」


「演技しなくても同じですわよ。」


うるさいな

こういうのは気分が大事なんだよ

テンション上げてかないと


「力を・・・我に全盛期の力を」


 実はこれは言わなくてもイイ

心の中に願っている真実と差異があるのか

その確認だ。

神の加護が消え、悪魔への警戒を解いたヨハンの

心は丸見えだった。

強く願う願望。

それは全盛期をも超える力を欲している。

これはヨハンが嘘を言ったのでは無い

全盛期とは終わってから、そう呼ばれる時期で

全盛期真っ最中のヨハンも更なる力を欲し

体を鍛え続けていたのだ。

もっと、もっとと

そう思っていたのだ。


 ここで先程のババァルの言葉の意味が分かった。

もっと強い力を授けるにも俺の力を超える力は

授けられない。

 これがババァルだったなら

例えばババァルが10分でどら焼き20個食うなら

ヨハンは最大でも19個って

なんだこの例え

いらないか


 ともかく俺は力を授けるのだが、ここで考えた。

人間の肉体は脆過ぎる。

所詮、カルシウムとタンパク質だ。

強大な力と言ってもたかが知れている。

人間の組織の限界値の力を与えたとしても

鋼の肉体を持つ悪魔に対しては

物理的には何も通用しないだろう。

 本物の悪魔なら

骨がひしゃげる程の力を与えて

それでも悪魔にダメージが入らず。

騙したと叫ぶヨハンに向かって

「望ミハカナエタ、通用スルトハ言ッテイナイ」

と言うのだろう。

使う方の問題ですよと


 今回はそうじゃない。

全盛期プラスアルファだ。

ヨハンには望み通り聖都の悪魔を葬ってもらいたい。

悪魔を肉弾戦で圧倒出来る体を持ってもらう。

なので、骨の組成から見直す。

カーボンを骨の中にハニカム状に内蔵させ

大幅に強度を向上。

筋肉繊維は細胞内に金属を埋め込み

神経の電気伝達でソレノイド効果を出す様に

仕込んだ。これで反応速度とパワーはかなり上がるハズだ。

他にも色々弄った。


 人間の肉体でありながら

機械のような力と頑丈さを兼ね備えた人間。

文字通りの魔改造だ。


やべぇ

楽しい


俺は、ついつい夢中になり時間がかなり掛かってしまった。


「上出来ですわーやればできる子だと信じていましたわよ」


熱い、フラフラする。

目が開かないやり過ぎた。


「なぁ、鏡ってないか」


若い男の声がする。

ヨハンだろう、全盛期って何歳になるのか知らんが

最高の肉体の状態時まで戻した。


「今は、我慢なさって、アモンさんこんな

状態ですのよ。」


ババァルが気遣ってくれる

ありがとう

でも鏡くらいなら楽勝だ。

砂利素材から抽出してあるガラスを生成

その片面に金属膜を貼るだけだ。


「ほらよ」


俺は姿見サイズの鏡を作る。


「こぉおおおおおおっふぅうううう」


なにやら呼吸法ですか

格闘家みたいなって

確か9大司教の「武」担当だっけ

格闘技の心得くらいあるのか。


 ようやく調子が戻って来た。

次やる時はもっとゆっくりやろう

負担が思いのほか大きかった。


 俺が目を開けるとそこには

なに

怒ると皮ジャン破けそうな若い大男が

上半身裸で色んな構えを取っている。


もちろんマチョメンだ。


誰って

ヨハンだよな

すっげぇええ

若い頃すげぇえ

年取るの怖ぇええ


「ふーっ大司教ヨハンは今日死んだ。」


声もしわがれた老人ではない

ノイズの少ないまったりした低音だ。


ちかおがあきおになった感じ


「ここに居るのは、一格闘家

ヨハン・ブルグ。ただの男だ」


振り返るヨハン。

その顔は皺など無い

精気に満ちた顔。

色々持て余していそうだ。


「ヨハンブルグ・・・ヨ ハンブーグ・・・。」


ヨハンの名を繰り返すババァル

まて何を言う気だ。


「よっ!!ハンバーグ」


仕方ない乗るしかない

俺は絶叫した。


「ハンバァアアアアアグっ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ