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第六十二話

魔王ババァルが公開処刑される?


意味が分からない。

魔女裁判?

魔王だぞ

とっくに転移で自陣に戻ってるハズだぞ?

護衛はどうしたんだ

影のなんだっけ

13将の何位だっけ

あれ

あれ


「公開処刑の場所はどこですか」


横からハンスが酔っぱらいA.Bに聞いてくれた

俺の頭の中は同じ問答がループしている。

やり取りは聞こえてはいた。


「とにかく行きましょう時間がありません」


「あ・・あぁ」


俺の肩を軽く叩くとハンスはそう促した。

店への支払いを済ませると俺達は

公開処刑の場所である、噴水公園近くの

野外ステージみたいな場所まで移動する。

既に大勢の人でごった返していた。


 ステージ上には数人の人が居た。

中でも異彩を放っているのが中央の人物だ。

板に三か所穴が開いていて、それぞれに

両手首、首とはまっている。

足には鉄球が付いた鎖のアミュレットだ。

服装はこの間と同じ服装だが

所々破れ、体のあちこちに暴力の痕跡が

見られる。

 綺麗な赤い髪は乱れ一部に黒い塊が

こびりついて髪を固めている。

凝固した血液だよな。


 俺はデビルアイを起動して確認する。

初めて自分の能力を疑った。

中央の罪人は間違いなくババァルだ。


「何やってんだよ・・・。」


 後になってからも

この時のセリフの意味が特定できなかった。


魔王のクセに捕まり下等な人間に

いいようにされているババァルに対して言ったのか


最重要人物をこんな目に遭わせてしまっている

無能な悪魔軍団に対してなのか


攻撃力0の女性に、こんな仕打ちが出来

更に晒し者にしたうえ処刑しようとする

人間達に対してなのか


気に入った人は

守ってやれると

どこか軽く考えていた

自分自身に対してなのか


 大体、後になってから考えるのも

どんなモノか。

当時の感情を冷静に理解できるモノだろうか

後悔なり反省なり事件をカテゴライズ

分析する行為であり

自分自身の事であっても

きっとこうだったんじゃないかなと

想像という行為になってしまう。


 とにかく

ババァルの姿を見た俺は

何か

スイッチみたいなモノが入った。


気持ちの整理とか関係無く

時間は無常に進む

その中で人はいつだって

最善だとその時判断した行動をしている。


俺もそうだ。


「ヴィータ。例の茶番を今やるぞ

そのついでにババァルを救出する。」


「救出?本末転倒ではないかババァル討伐は

我の目標じゃぞ。」


「ヴィータ。いいか、ちゃんと聞いてくれ」


うまく伝わるかな


「今、目の前で行われるのは魔王討伐じゃない

権力とその行使者が真実関係無く自分の都合のみで

無実の人に罪を着せ、潜在的な反抗の芽を摘む

目的で見せしめとして殺人が行われるんだ」


もっと上手く説明したい

太郎助けてくれ


「これは魔王討伐じゃない。殺人だ」


分かってくれ

しかしヴィータは冷静だ。


「結果的には好都合ではないか

どのみち魔王は討たねばならん」


やべ

キレる


「じゃあ俺は人類を殺しまくるぞ」


こうじゃないのに


「人はいつか死ぬよな。寿命はもちろん

怪我や病気とかで、それをさそれをさ

どうせ死ぬんだから同じだろって

殺す理屈だよな。結果的に同じってさぁ」


呆れるヴィータ。


「極論じゃ。話にならん」


そのまま自分の腰に手を当て

ヴィータは説教口調になる。


「冷静になれ、目的を思い出せ

あやつを仕留めなければ今後大勢の人が

苦しむ事になるのじゃぞ」


そう言われて俺は言葉を繰り返した。


「目的・・・冷静・・・。」


目的。

そう言われ思い出す。

俺の居た現代社会は悪魔側がほぼ勝利を収めた

世界だ。あんな風じゃない未来がいい。

ただ

それは神側が勝利する世界でなければ

ならない事では無いのだ。


「今後、大勢の人が苦しむのを避けるんだな」


満足気に頷くヴィータ。


「そうじゃ、目の前の出来事に流されてはいかん」


いや、違う。


「なら尚の事、この処刑は阻止だ

丁度いいからって見過ごしちゃダメなんだ。

これを善しとすれば今後、無実の人が

偽りの神の名で大勢殺される事になるんだ

そうなれば神は死んだも同じだぞ。」


「なっ・・・。そんな事には」


言葉に詰まるヴィータ。


「なる。」


教科書にだって乗っている本当の黒い歴史だ。

これは、その始まりの方だ。


「一見冷静なようだが目の前のエサに流されているのは

ヴィータ、お前の方だ。」


黒い歴史の始まり

冷静に考える

目的


こいつはもしかすると


それまでの勢いがピタリと止まる。

顎に手を当て考え込む俺は

一つの結論に辿り着いた。


「どどどどうしたんじゃ。」


俺の様子の変化に同様するヴィータ。


「やっぱり阻止だ。これは悪魔側の計画だ」


俺は自分の推論を二人に伝えた。



聖都を偽女神を掲げて制圧。

人々と入れ替えで多くの下級悪魔が呼び出される。

その段階で魔王喪失。

こうなれば下級悪魔は存在のため人々に恐怖を

否が応でも与えなければならなくなる。

神の名を使い、為政者と悪魔にとって都合の悪い人物を

主に敬謙な信徒からだろう次々と粛清。

人々は

無実と知っていながらも保身のため見殺し

保身の為に密告や疑心暗鬼が渦巻く。

不安・恐怖・強者への媚びへつらいだらけになる。


その為に魔王はここで撤退してもらう

それならば護衛がいないのも計画通りだ。

護衛では無かったのかもしれない

こうする為に魔王に気づかれず付き

この事態を起こすタイミングを待っていたともとれる。


 ベネットは短期的な収穫を目的とするなら

人々を恐怖に陥れるのは有効だと言っていた。

 それをそのまま鵜呑みにして

長期的視野からその様な手段は取らないと

悪魔側がそうすると

こちらは勝手に誤解してしまっていたのだ。


 今回の降臨は悪魔側は一位だ。

召喚出来る下級悪魔の数も一番多いと予想される。

統制を取るより

そいつらを暴走させるバーストを発生させ

審判の日を待たない勝負に出てきたのだ。


幸い神側は下位で人々に認知されていない。

偽女神で恐怖によって人々を縛り

早目にこの体制を構築してしまえば

こちらが何を仕掛けても全て後の祭りだ。


「じゃが・・・・。」


これだけ説明してもまだ迷っている。


「じゃがもバターも無い。ヴィータ、お前は何だ

神だろ、救う者だろ。」


「そうじゃ・・・しかしそれは神と、それを信じる者を」


「そんなケツの穴の小さい事言ってるからダメなんだ

魔王も救ってみせるぐらい言ってみろ」


「・・・無茶苦茶じゃ」


ああああもううう


「うるせぇ!!!!!やれっ!!」


「はいっ」



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