第五十九話
「という訳でガバガバ捜索班はカルエル
プリプラそれに村でエッダを加えた3人じゃ。」
村長の家の応接間を借り作戦会議になった。
「残りは我とベレン攻略じゃ。」
お腹を空かせて起きてきたプリプラは
何食わぬ顔でバーベキューに参加していた。
プリプラはカルエルとの同行を強く希望した。
俺もだ、そいつは頼んだぞカルエル。
「攻略・・・ヴィータ様、別に攻め落とすワケでは・・・」
困った様なハンス。
「甘いぞハンス君。これは戦いなんだからな」
そうだ。
なにがなんでもベレンを拠点にしなければ
相手は聖都を制圧したも同然なんだからな。
流れによっては悪魔と騙された兵士達が
入り混じった部隊と交戦する事だって
十分考えられる。
カルエル達は旅支度が整い次第
ガバガバの村までエッダを迎えに行く。
一応、心当たりがあると言っていたカルエルだが
その予想がハズレた時は妹であるエッダの見識が
頼りになる。そう考えての決定だ。
「一緒で嬉しい。アバターはダサいけど」
エッダちゃんとも仲良しなプリプラは
この班分けを喜んでいた。
だから、ぶっ殺すぞこのアマ。
ヴィータ班はバロードにもう一日滞在してから
明日、ベレン入りの日程だ。
一日遅らせるのには意味がある。
丁度、ベレンの商人が滞在していて、昨日からの
ドタバタの目撃者だった。
その商人が今さっきベレンに戻った。
噂をある程度広めてくれる事を期待しての決定だ。
旅立つ前に俺はプリプラを呼び止めた。
「・・・何」
不審がってる様子がバリバリだ。
俺をどう思っているのだろうかこいつは
俺の方は全く気にしていないので
どうでもいい。
「これをやる」
俺は夜なべで作ったサークレットを
プリプラに渡した。
こいつも希少なミスリルを含んだ合金で
作成した俺の改心の作だ。
蔦をイメージしたレリーフは光の反射を
計算してありどの角度からでも輝いて見える。
そして実は蔦の模様はこの世界の言語を
崩して描いてある。
そう魔法の装具だ。
「精霊とのコンタクトがより繊細に分かる様に
作ってみた。試してほしい。」
見よう見まねで大気の操作をして以降
プリプラ本人程では無いにしろ
俺にも多少は精霊の声とやらが聞こえる感じが
していたのだ。それをより明確になるように
試行錯誤した結果、今の所の最適解がコレだ。
「うまく使えば、精霊魔法の使い手になれる
・・・かも知れない。」
エルフの里の戦士達は精霊のサポートを受けていたが
精霊からのの一方的な補助だった。
本人がどうしたいのか、より細かく精霊に伝われば
更に強力な戦士になる事は間違いない。
受け取ったプリプラはじっと俺を見ている。
何だよ。
「ダサいのは勘弁しろ」
「ううん。綺麗、気に入った」
まだ見てやがる。
「まぁ、身の安全最優先でガンバレよ」
「うん」
こうしてガバガバ捜索隊は出発した。
その後ヴィータとハンスは村人の治療を行った。
命に関わらない、優先度の低い怪我人や病人は
後回しになっていたからだ。
俺は夜なべの続きを部屋で行う。
次の日になり朝、俺達は出発の準備をしている最中に
村長が飛び込んできた。
なんでも、迎えの馬車が来ているそうだ。
馬車ぐらい珍しく無いだろうにと不審に感じたが
理由はどうやら、その馬車を差し向けた人物が原因だった。
「ベレン領、領主ローベルト・ベレン6世の
招待によりお迎えに参りましたでございます。
私は執事のバルタと申します。」
うわ、ぎょぎょ
仰々しい。
こっちに来てから挨拶は色々見たが
一番エレガントな感じがした。
どうも昨日の商人は領主のお抱えの一人だったらしく
速攻、迎えが決まったらしい。
予想以上の展開に反って怪しくなるが
執事の話だと領主は話半分で残りは
どんな詐欺集団か面白がっている様子だ。
まぁ奇跡だ女神だ。
人づてに聞いたのではよっぽど悪い酒を
飲んでいたのだろうなぐらいにしか思わない。
普通は相手にしないだろうが、その商人は嘘はもちろん
冗談も言わない人物だったようで
領主は、こいつにここまで言わせるとは興味あるわ的な
印象だろうと想像した。
仮に俺達が詐欺集団だったとしても
街で悪さを行う前に捕縛できればよし
野放しで街に入られる方が厄介とも
考えての決定だろう。
あれだけの多種多様な大勢の人がいて
半分以上は流通・観光・冒険の定住者では無い街なのに
治安は優れていた。
犯罪者を逃がさないのはもちろん
起こさせない仕組みが出来ている様だ。
あの見回りの兵の多さからも
それは窺える。
教会→領主と計画していた俺達。
順番が違うが、どのみち領主は味方につけなければ
ならない相手だ。
渡りに船、俺達は素直に招待を受ける事にした。
村の入り口に馬車を停めてあるとの事で
俺達は執事バルタの後を手ぶらでついて行く
荷物は彼の部下の執事が運んでくれた。
そーっと俺は半人化して様子を見る。
特に反応は無いようなのでデビルアイで
彼等を調べるが怪しい所は無い。
普通の人間だった。
ただ心拍数などから察するに
ひどく緊張している。首筋を流れる汗からも
それは見て取れる。
気になったので俺は突っ込んでみる。
「なんか緊張してませんかバルタさん。」
「はい・・・御不快でしたら申し訳ありません。
しかし、どうかご容赦くださいませ」
理由が分かるまで粘るかと考えたトコロ
向こうから理由を言ってきた。
「仕事柄、色々と高貴なお方とお会い出来る機会に
恵まれてきましたが、流石に神様には会った事が
ございません。」
「あれー信じているんですか」
領主の酔狂に仕方なく詐欺集団を相手にいている
ものだとばかり思っていた。
「お恥ずかしい話ですが、ここに到着するまでは
私共も半信半疑でした。しかし、いざ村の様子を
見てみれば、明らかに奇跡が起きた事が分かります」
バルタはそう言うと、村の畑の方を見る。
広がる緑、大収穫で積みあがった野菜の山。
「失礼ながらこの村は活気が少なく
怪我人、病人も多い貧しい村だったのです」
そうだな、俺も来た時そう思った。
振り返ると活気に溢れ、元気な村人達がいた。
彼等は俺達とすれ違う時には深々と頭を下げ
祈りの言葉と感謝の言葉を口にしている。
ふと隣のヴィータを見れば肌が艶っ艶だ。
使用した以上の力の収穫があった様だ。
背も少し伸び、体格は大人と変わらない程だ。
俺の視線に気が付いたヴィータは
ヒソヒソ声で言ってきた。
「なんじゃ、我の身体をジロジロ見よって
さてはご褒美が欲しいのかや」
調子に乗ってるな。
俺は遠慮しておいた。
「やだよ。おまえのおっぱい危ねぇんだもん」