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第五十八話

 ヴィータは女子部屋に戻っていき。

ハンスはそのまま就寝。

カルエルは馬鹿

じゃない

馬化してガバガバの村へと夜中に出て行った。

丁度、朝に着くタイミングだそうだ。


 半人化の俺は寝なくても大丈夫なので

夜なべして不足物の作成に入った。

昼間のヒーローショーで使ってしまった火薬やら

偽金貨やら、その他の生活必要品だ。


 一通り終わると研究の時間だ。


魔力伝導率のやたら高い金属

行く先々で地面や岩から蒸着で手あたり次第

集めたなかでも希少な金属だ。

 多分これがミスリルでいいんだと思うが

俺には同じ金属か違う金属かは分かるが

元素記号に書き起こせないので

特定はあやふやなのだ。

鉄や金は分かりやすいのでまず間違いないが

後は重い軽い固い柔らかいなどで適当に

使える使えないを判断している。

 使えそうなモノ、希少なモノは

体内に保有している。

 

 そのミスリルを顔料などと加工して

魔力のこもった文字を書けるインキの

作成に取り掛かる。


 これは創業祭から思いついたことだ。

同じ材質のはずなのに創業材は

いとも容易く俺の体を切り刻んだ。

初めはベネットの技のなせる所業だと

思っていたのだが、実際に自分が使用してみると

刀身に刻まれた文字に魔力が通うと

剣を振った時のブレや速度などを補正する効果があったのだ

 カッコイイからではなく意味があっての刻み文字だった。


 ならば同様にいわゆるスクロール。

広げたり名称を言うだけで魔法が発動するアイテム

これを応用で作れないだろうかと考えている。


 ハンスなどに魔法を覚えてもらうのだが

発動まで数分かかりますでは実戦で使えない。

魔法を覚える手助けにもなるだろうし

実戦でも有効だ。


そうやって朝まで過ごした。


 朝になるとまず村長夫妻に昨夜の騒ぎを謝罪する。

快く許してくれた。

 前日の女神の奇跡の功績で多少の事で

俺達の不快を買うような行動や態度は無いようだ。

しかしだからと言ってそれにあぐらをかくのは嫌だ。

 キチンと謝罪する。

朝食はお世辞にも豪華とは言えないが

出てくるだけでも有難いし

こいつらは焼いただけの肉でも文句が無い連中だ。

 皆、喜んで頂いた。

朝食の会話の最中に村長夫妻に農耕指導の話を

持ちかけた。

 非常に興味を持ってくれた。

朝食の内容からも見て取れるように

この村の農耕は良くない状況だった。

 朝食後に関係者を集めてくれる手筈になった。


「そういえば、プリプラの姿が見えないが」


食後のお茶を飲みながら俺はヴィータに

そう尋ねた。


「ショックが大きいようじゃな。食べたくないと

床に伏せったままじゃ」


 俺と違ってあいつは現実世界に帰りたい欲求が

大きかったのだろう。

 太郎に会えれば戻れると信じていたようだし

うーん

ほっとくしかないか


 村長から準備が出来たと声が掛かり

俺達は畑に出張る。


 俺は農夫達にそれぞれの野菜の種を説明し

植える作業に皆で取り掛かった。


「終わったかや、では我の出番じゃな」


楽しみにしておれと言っていたヴィータ。

そのお楽しみがこれから始まるようだ。


「何をする気だ」


俺はやる気マンマンのヴィータにそう聞いた。

なんか、こいつの生き生きした姿は不吉を覚える。


「フフフこれこそ我が力。豊穣の女神本領発揮じゃ」


片手の人差し指をもう一方の手で握る。

なんか忍者っぽい構えだな。

足は力士がシコでも踏む様に大きくがに股だ。

ちょっと女神としては、どうなのそのポーズ。

1・2のタイミングで軽いスクワットのように

体を軽く上下させる。

すんごい力を入れているのが分かる。

そして3のタイミングで大きく伸びる。


 ヴィータはその動作を繰り返した。

これは・・・・まさか・・・


 農夫達も見様見真似で同じように動き出す。


あれだ

夢だけど夢じゃなかったやつだ。


結果は


大豊作だ


それも

タバコ一本吸ってるぐらいの時間でだ


 正に奇跡。

感涙しながら女神に祈りを捧げる農夫達。

俺が慌てて完全人化するぐらいの祈りだった。


 昼メシは早速収穫した作物でこしらえた。

俺は収穫の際も大きい実がなったのは

食べずに次の種にするように指導する。

これを繰り返せば大きい実が当たり前になるのだ。


 バーベキューよろしく、村の広場で

村のみんなと昼食を取っている所に天使が舞い降りてきた。


「ヴィータ様」


降りてきた天使はそう言ってヴィータに片膝をついて畏まる。

村人達は驚くがヴィータの奇跡を目の当たりしている人々なので

耐性が出来ているのかパニックにはならなかった。

まぁ女神に仕える天使の図だ。

おかしくはないわな。


「ご報告が」


降りてきた天使はカルエルだ。

てっきり馬状態でガバガバを背に乗せ

パッカパッカ戻ってくるものと思っていた。

それが天使状態で一人で飛んで戻って来たのだ。

報告の内容はなんとなく想像がついた。


「勇者はもう村にいませんでした」


「どういう事ですか」


女神に報告しているのにハンスが質問した。

俺は食いながら聞き耳を立てた。


「それが、どうやら私が送ったにも関わらず

勇者は村には入らず、そのまま何処かに

旅立ったものと思われます。」


流石は勇気ある者。

危険だからと隠れるのは性に合わないか


「探しに行く許可を下さい」


ハンスがヴィータにそう申し出る。

女神に言ってるのに今度は俺が答えた。


「駄目だ。ハンス君はこれからベレンの教会に

俺達の渡りをつけてもらう仕事だ。

これは替わりがいない」


俺に振り向きながら反論するハンス。


「しかし」


「カルエル、ガバガバを探せ。お前の方が

ハンスより広範囲をより速く捜索出来るはずだ。」


俺は食いながらそう言った。

カルエルは答えるよりヴィータに

許可を取りにいく。

この辺は上手だ。

誰が一番なのか周囲に認知させる行為だ。


「私も、そう考えます。よろしいでしょうか」


そこで、ようやくヴィータはかぶりついて

回転食いをさせているトウモロコシから口を離し

口の周りにトウモロコシの粒や薄皮だらけの顔で言った。


「ん、なんじゃ。カルエルではないか

ガバガバはどうした?連れてくるのでは

なかったかや」

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