第五十三話
太郎は小梅の様子を見に女子部屋へ
俺はそのまま男子部屋に行く
話を始めるのは太郎が戻ってからだ
まてよ、太郎のこっちでの名前は
俺が付けた名前【カルエル】で合ってるのか
ハンス達の前では太郎と呼ばない方が
混乱させないだろう。
うーん
名乗らせればいいか
「なんじゃ・・・騒がしかったようじゃが」
なんかヴィータの様子が変な気がしたが
こいつ小梅とそんなに仲良かったっけか
まぁ、適当に大丈夫だと言っておいた。
そうこうしていると太郎が入って来た。
「皆さん初めまして。私は天使カルエルと申します」
合ってた。
太郎は改めてハンスとヴィータに挨拶をした。
二人も挨拶と自己紹介をする。
ハンスはもう知っているので、ヴィータにも
伝わってはいるのだろうが、ここで自分から
俺達三人の中身と関係をざっと説明した。
ヴィータは特に驚いた様子も無い。
やはりハンスから聞いていたのか
あるいは聖刻から得た俺の情報で知っていたのだろう。
しかし、けじめと言うかなんと言うか
自分の口で打ち明ける方が良いと思ったのだ。
「ふむ、悪魔と天使とエルフがお友達とはの」
そういうお前は女神。
こんなにいるのに人間はハンス君だけだ。
がんばれ人類代表。
「プリプラは?」
一緒に来るものかと思っていた小梅の姿が見えない。
俺はカルエルにそう聞いた。
プリプラと言われ一瞬、誰だソレと言う顔を
したが直ぐに気が付いたカルエルは答えた。
「疲れているみたいだから寝かせておこう」
まぁ居なくても問題は特に無い。
あいつ自身がどうするか、それによって行動に
影響を左右される人物はいない。
「じゃ始めるとするか・・・ハンス君
ベレンの街で起きた事はヴィータに
もう話したか」
「いいえ、アモンさんからの方が良いかと
思いましたので、街並みとお土産の説明
ぐらいしか」
「そうか、じゃ最初からだな。」
俺はまず偽聖騎士団がベレンに立ち寄って
いない事、そこを飛ばしてもう聖都に
入っている可能性について話した。
「フム、その3・4位の魔神ならば可能じゃの」
ヴィータからは驚きも、焦りも感じられない。
冷静に努めているのでは無く、本当に冷静だ。
この辺りは流石は女神、大物だ。
「勇者ガバガバ様の身に危険が迫っています」
それに比べ、冷静に努めているのがバレバレなハンス君だ。
一刻も早く駆け付けたいのが見て取れた。
「その事なんですが」
カルエルが割って入る。
俺達三人の話は本当に三人についてだったので
俺もカルエルの持っている天使側の状況については
初耳だ。ちゃんと聞いておかねば
「もうバリエアに入っています。
明日、歓迎式典が催される予定です。」
「なんですって。」
「ほう、早いのぉ」
ハンスは驚き、ヴィータは感心している。
俺は特に何も言わなかった。
「勇者は先程、私が彼女の故郷の村まで
送り届けました。アモンに会ったのは
その帰りです」
「無事なのですか、ガバガバ様は」
ハンス君、必死だ。
話の流れ的に無事なのは分かりそうなものだが
大丈夫という確信が欲しいのだろう。
「実は危ないトコロでした。騎士団を見るなり
剣を抜いて襲い掛かかりそうでしたよ。
そこで止めて説得して隠れてもらう了承を
得ました。・・・彼女、直情的ですね」
何故そこで俺の方を見るんだ。
「・・・良かった。」
安堵の息を漏らすハンス。
余程、心配だったのであろう
文字通り胸をなでおろしている。
「ガバガバとやらには悪魔を見抜くスキルがあるのか」
俺はカルエルにそう聞いた。
「うん、邪な者とそうでない者を見抜く目があるよ」
「俺も見破られるかな」
俺にはそれが問題だ。
「バレバレだね」
笑ってそういうカルエル。
まぁ薄皮一枚の下は悪魔だからな、
そこで完全人化して、もう一度聞いてみた。
「これでもダメか」
顔色を変えるカルエル。
「やっぱり、たけちゃんはスゴいよ」
「たけちゃん止めぃ」
興奮したカルエルは俺を賞賛し
ガバガバの前で悪魔化するなら
この状態で説明してからにした方が良いと
アドバイスをしてくれた。
勇者の残りのパーティは天使指揮の元
各々、城周囲の街に潜伏しているそうだ。
「お前ら天使は何人居るんだ
なんで見す見す入城を許した。」
入城前に術を破って阻止とかできそうなものだ。
俺はカルエルにそう質問した。
「天使は上位は僕だけ、後は数人の下位天使が
城の奥でごく一部の上層部と居るだけなんだ。
城のほとんどの人は天使が滞在しているのを
知らない状況なんだよ。」
寿命MP魔法の秘術と同じ扱いなのか。
「それに城下町の人々は既に術中に落ちてからの
入城だったんだ。強引にいけば僕等の方が
悪魔と思われかねない。」
秘密にしていたのが裏目に出たのか
そんな中で勇者だけでも逃がしたのは
良くやったと言うべきか。
それに非戦闘系とは言え魔神13将が二人だ。
四大天使クラスに出張ってもらわなければならない。
ここで俺はずっと気になっていた事を
カルエルに聞いた。
四大天使はどこで何してる。
ヴィータにも聞こうと思っていたのだが
こちらは望み薄だ。
魔王も俺をわざわざ探しにウロついていた位だ
パワーリソースが供給先の居場所を感知出来ない。
これは神側も同じだろうと思っていた。
そうでなければ悪魔に頼らずさっさと呼べばいい。
それをしないという事は、魔王と同じように
神も四大天使を含む天使全般に意志疎通は
口頭に頼るしかないのだ。
「こんな大変な時に四大天使はどこで何をしているんだ」
「・・・全くだよね」
カルエルは困った様にそう言った。
その言葉から俺は予想した。
恐らくプレイヤーバランス修正の為に
すぐに登場出来ない仕組みになって
いるのだろう。
「お主の上司は誰じゃ。何と命令されておるのじゃ」
ここでヴィータが口を挟んできた。
「え?・・・上司」
焦るカルエル。
ギクッという音が聞こえてきそうだ。
知らないんだろうな
替わりに俺が答える。
だって俺が設定した本人だもん。
「天使長、ミカは平和維持の為に
地上にカルエルとその部下を派遣した」
手に余る緊急事態の時の連絡方法は
カルエルには無かったような。
しかーし、その悪を許さない正義の目は
常に地上を見ておられる。
ピンチの時はその炎の神剣レイバーンを手に
颯爽とデュォワっと光と共に現れてくれる
ハズなんだが・・・。
「なんと・・・よりにもよってミカ嬢か」
がっくり項垂れるヴィータ。
えーなんでー天使で一番偉いんだよ
一番強ーいんだよ
なんで
なんでガッカリするの
「せめてラハ坊だったならばのうトホホ」
今まで動じなかったヴィータが
トホホとか言ってる
え
ダメなの
メイと五月が
レアだけど
レアじゃなかったー
って踊るぐらい
ハズレなのミカって