第四十九話
髪、碧眼、細マッチョの中背、正義感溢れるイケメン。
背中の3対6枚の猛禽類の翼はもちろん白色。
俺がプレイするハズだったキャラが
高速で接近して来る。
俺の想像通りならあの中身は・・・。
「たけしー」
上位天使は様子を見るまでも無く
そう言いながら目の前まで飛んできた。
かなりの高さで滞空し二人は相対した。
アモンの中身が宮本たけしだと
知っている人物で俺の作ったキャラの
中身の人物。
やっと出てきたか。
もう会えないんじゃないかと
心配したぜ。
先ほどの反省から、
キッチリ確認してからにするか
「太郎なのか?」
「うん、無事だったんだね」
・・・・。
ふー
せーの
「テメぇ俺をハメやがったな」
軽く、ホントに軽く
右ストレートを天使の顔面に放つ。
壊れ具合を確認しつつ
次のパンチの威力を調整しよう。
「痛っ、何するんだよ」
この位の威力でイイか
「あれー触られている程度で痛みは
無いって話だったよねー^おかしいなー」
左右のワン・ツー
「ちょ・・・やめ」
「ゲームなんだし、ぶっ殺してもいいよね
対戦格闘ゲームみたいにさ」
驚愕の表情で青ざめる天使。
「マジ?」
「最後に聞かせろ、わざとなのか
それとも間違えたのか」
「何が?」
「この悪魔はお前のキャラだろ」
俺のキャラのデーターが入った
USBメモリーは太郎が持っていた。
「後で現地で」と言ったのだから
太郎も自キャラのデーターが入った
USBメモリーを持っていたのだ。
それが入れ違いになったのだろう。
アモンは太郎のキャラだったのだ。
「わざとなワケないでしょ間違えたの」
「わざとじゃ無い?」
俺は殴るのを止めた。
「ふーん、本当に?」
コクコク頷く天使。
「うん」
「証明しろ」
悪魔が悪魔の証明を要求している。
証拠が無いなら
言い張れば勝ち
俺はソレ大っ嫌いだ。
「証明は無理でしょ」
天使は困った様に言った。
俺は用意していたセリフを言う
「じゃあ泣くまで」
「泣くから、もう止めて」
取り合えず少しこずいて留飲が下がった。
聞きたい事だらけなので
殺すのはもちろん、拗ねられても
面倒なのでこの辺で止めよう。
「全部、説明してもらうぞ」
「あ、うん。それなんだけど・・・。」
何か含みがある。
それも含めて聞かせてもらうが
もう一人交えたい。
「場所を変えよう。小梅も一緒なんだ」
「えっそうなの助かったよ。二人とも見つからなくてさ」
探してはいたようだ、今回は流れ星を
見つけたのでよく見たらアモンだったそうで
それで慌てて飛んできたと言っていた。
結果的にはあの無茶な大気圏突入の
おかげ・・・いや計算通り。
バロードの村近くまで天使と悪魔が
バカ話で盛り上がりながらランデブーしていく
ハタ目にみたら、どんな状況だ。
でも、これが理想じゃいけないかね
まぁこの場合は中の人が二人とも
人間だから成り立つ状態なんだが。
いつもの人目に付かない雑木林に着地すると
俺は人化した。
「すごい。ナニそれ」
太郎にも変身するように促すつもりだったが
出来ないのか・・・。
自分が会得した時を思い出し太郎に
アレコレ指導してみるが、さっぱりだった。
このまま天使を連れて村にはいれば
話どころじゃなくなる。
ただでさえ常時光り輝いてるせいで目立つのだ。
変身は諦めて、光るのを止めさせる。
これはパッシブスキルの「加護」なので
止められるハズだ。
四苦八苦している様子から察するに
やはり想像通り太郎もメニュー画面が出ない
状態のようだ。
俺はイメージをとにかく強調して指導する。
出来ると思う事は大体出来る。
よく分からないが、プレイヤーキャラは
そういうものだ。
少なくとも俺はそうだった。
こうして発光を止める事に成功。
その時、頭上の輪っかも同時に消えた。
あれは「加護」に含まれるモノだったようだ。
なんか、まんま蛍光灯のようでおかしい。
次に困ったのが六枚の翼だ。
太郎も頑張ったのだが才能が無いのか
結局、収納する事が出来ず、途中から
小さくする事に従事し、なんとか
服の中に入るまではいった。
不自然に背中が盛り上がっているが
まぁ夜だし、村長の家のあてがわれた
部屋に騒ぎ無しで辿り着ければ良いので
これでなんとかなるだろう。
髪、碧眼、細マッチョの中背、正義感溢れるイケメン。
カーテンでも巻きつけているようなローマ調の服
その背中には絶対何か入ってる感じで膨れている。
足は皮のサンダル、脛までバッテン模様のやつだ。
うん、不自然。
「疲れたよ」
「うるさい。行くぞ」