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第四話

「お召し物をご用意せねば。」


ハンスはそう呟いた。

ハンスの目の前には身体を拭き終わり、

元々あった布を股間に巻き着けただけのヴィータが居た。


あれですわ。

まんま小学生相撲大会ですわ。


流石の俺も同意だ。

これ連れて歩いたら奴隷商にしか見えんぞ。


「なんじゃ、こやつなぞ全裸であろう」


ヴィータが俺を指さす。


「周りの人が落ち着けないんだよ。」


返事する俺にハンスの突っ込みが飛んでくる。


「アモンさんが近くにいて落ち着ける人もいませんが・・・。」


「俺の場合は服装の問題じゃないだろ。」


 とりあえず俺たちはハンスの荷物の中から適当に見繕い

着替え用のシャツ的な服を選ぶとヴィータに着せてみる。


 いい感じにダボダボで裾が膝近くに来る。腰の辺りに先ほどの

タオルをベルト代わりに巻くと。まぁなんとか見られる程度になった。


「後は靴だな。」


 ハンスからナイフを借りた俺は、倒木をザクサク切り出す。

この体の腕力はハンパない。硬目の木材など、まるで抵抗を感じず

バターの様に切っていける。

 なぜか機嫌良さそうに待っているヴィータの足の裏に切り出した

木片を当てては切って調整していき、さほど時間もかからず左右分の

靴底が完成した。

 我ながら見事な出来だ。4m級の巨人が持つと爪楊枝のようなナイフで

10cm程度の木片を高速で緻密に削り上げるのた。


「悪魔って器用だったんですね」


ハンスが変な風に関心しているが、普通の悪魔はこんなことしないと思うぞ。

アモンの場合は中の人が米粒にお経を書いたりする民族の人だからだが

説明する必要はないので「普通だ」と言っておいた。


 その後は、近くの茂みから枯れ掛けの藁っぽい植物を適当に集め

ほぐして編み込み帯状にすると足の甲部分のパーツにするのだが

 さすがに小さすぎて靴底とのドッキングに難航する。


「なぜデカいままなのじゃ?小さくなって作業すれば良かろう」


 作業に四苦八苦する俺を見てヴィータがそう言った。


意味が分からない俺に更に言葉を続ける。


「どうせ、その姿では人里に入れんのじゃ。もう今から人に化けて

置いても良いじゃろうに」


人に化ける?


「えっと・・・そんな事出来るの?」


「出来るんですか?」


俺もハンスも驚いている。

はぁ?何を当たり前の事をといった感じでヴィータは説明してくれた。


「神は言うに及ばず天使も上位になれば、人、獣などに姿を変え

勇者を助けたり、神器を渡したりするぞや。悪魔も種類によっては要職に

ついている人間に成り代わったりしておるじゃろ」


あ、なんか出来そう。


「お主・・・見た所ロード級のデーモン。出来ぬハズは無いが」


「ロード級!」


俺とハンスが驚く。


「・・・・って、どの位偉いの??」


自分でも間抜けな質問だと思うが仕方無い。

これは俺がメイクしたキャラじゃない。

メニューも開けないのでレベルも分かりません

正式種族名も分かりません。

仲間だったと思わる悪魔がそう呼んだからアモンと名乗ってるだけで

それが固有名詞なのか種族名なのかも分かりません。

犬のおまりさん状態なのだ。


「確か・・・それより上は魔王だけだったかと」 


ハンスが教えてくれた。

ありがとうハンス。

しかし二人とも不審に思っている様子。

そらそうだ。なんで自分の事が分かってないんだ。

仕方がないので大司教になんか技使われて記憶がかなり曖昧だと嘘をついておいた。

しばらくはコレでやり過ごそう。

VRゲームとか理解させられる気がしない。


 そんな理由でやり方忘れちゃったのと

ヴィータに教えを請うたが「そんなんイメージじゃ」とのつれない返事。


 取り合えず挑戦してみることにした。

イメージするのは一番イメージしやすい姿がいいだろう。

曖昧に念じたものが細かいディテールを伴い実体化するとは思えないからだ。


 一番になるのは、それはやっぱり元の姿だ。

しかし、そのままではマズいだろう。

〇ニクロの普段着もこの世界ではオーパーツになってしまう。

服装は目の前のハンスをそのまま真似る事にする。

これからの行動を考えるとその方がやりやすい。

つか、この世界の普段着が全くイメージ出来ない。

後、黒髪もこの世界の普及率が分からないのでどこにでもいそうな

ブラウンでいこう。


 方針が決定後は気合。

目を閉じ強く強くイメージする。


「うぉおおおおおお俺は人間」

思わず声がでてしまう。

「早く人間になりたぁーーーーー」


「うるさい。もぅなっとるのじゃ」

ヴィータに後頭部を殴られた。

そのままでは届かないのか、棒切れで突っ込みやがった。

痛いよ。


俺は湖まで駆け寄り写る姿を確認する。

イメージ通り出来ていた。服の成分はなんというか

人でいうと爪や髪の毛を材料したような感覚と言おうか

自由に動かせない体のパーツで出来ている感じだ。

繋がっているのだが痛みなく普通に脱ぐ事も出来そうだ。


 重大な問題が一つ解決した。

これからは、人に会う事が可能になった。


 喜ぶ俺はご機嫌で作業を終わらせ、やっと聖都に向けて

出発する事が出来た。


 元々の悪魔の姿、そのイメージが正確に出来ない為

戻れなくなっている事が発覚するのは少し先の話になる。

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