第四十三話
アモンを探すとはどういう事だ。
4m級の悪魔がこんな平和な街を
ウロウロしていたら
そりゃもう町は大騒ぎさ
悪魔姿ではない人化した俺を探している
となると、アモンが人化している事を
知っている人物になる。
思い当たる人達で今この街い
来ている人物などあり得ない。
ヴィータなら探す必要は無い
聖刻を使用すれば呼び出せる。
プリプラが単独で来るとも
考えにくいが精霊の風の力を
移動に補佐すれば時間的には可能だが
プリプラはそこまで熟達してはいない
旅の様子を見る限り、その技術は
習得していない。
単純に同名の別人。
それが一番可能性が高い。
行く必要は無いな。
「いいなぁ兄ちゃん、あんな美人が知り合いとは」
行かねば。
話しかけてきた酔っぱらいAがそう言った。
酔っぱらいBも同意し、注意もしてくれた。
「あぁ、心配だぜ。アモンに会わせてやる
って騙して、そこいらにシケ込む輩がいても
おかしくないぜ」
「美人?」
ん
ヴィータか
聖刻がぶっこわれでもしたか
「行ってみるか。場所はどこですか」
探し人は中央の噴水のある広場で
アモンを探していたとの事だった。
俺は酔っぱらい達に礼を言うと
金貨と自分達の伝票を渡して
余った分を謝礼代わりにした。
「って、おいおい多すぎるって」
慌てふためく酔っぱらい達に
手を振ってハンスと共に急いで店を出る。
渡した金貨は実は蒸着で作成した
厳密には違法な金貨だ。
偽物と言っても、もう俺でもオリジナルと
見分けがつかない。
完全にコピー出来ている。
重たいばっかりで柔らかい金は
武器としては使い道が無いのだ。
これまでの旅では価値が無かったが
人里関係なら便利だ。
「ヴィータ様ですかね」
ハンスは、そう予想しているみたいだ。
まぁアモンを探す美人ってキーワードじゃ
そう考えるわな。
「いや、これ使えば事は済む」
俺は聖刻が刻まれた辺りを指さして
ハンスに答えた。
「壊れている感じはしないけどなぁ」
噴水のある中央広場。
地元の人間なら知らない者はいなかった。
そこいらの人にちょっと尋ねただけで
その場所はすぐに分かった。
そして問題の人物が立っているであろう
場所もすぐに見当がついてしまった。
一か所だけ、不自然に人がいない。
ゲロ吐かれた電車の車内で起きる
あの現象だ。
今回の場合は汚いから近寄りたくない
では無く、むしろ逆の方向の理由だった。
近づいてみて、その人物がヴィータで
ない事はすぐに判断出来た。
赤いロング髪の背は高目の女性だ。
これは人違いパターンだな。
でもせっかくなので話しかける事にし
近づく事にした。
顔が判別できる距離、丁度人垣の
ラインに並び、その人物を見る。
うっわあああああ
女
そう女
もう女女女
ヒゲや筋肉が男っぽさのキャラクター表現なら
もう、真逆の女キャラ全開
色っぽいわ
顔は美人には違いないがヴィータとはタイプが違う
ヴィータが近づきがたい高見にある高貴な顔なら
その人物は親しげを感じさせる、愛嬌のある顔だ。
目も大きくは無いが
ナニ
ひじきでも付けてんのかって感じの
まつ毛の加工具合。
困ってる様な印象を受ける眉毛の形
鼻は整っているのだが高くは無い
一言で言って
ヴィータがモデルや女優なら
その人は近所で愛されている評判のおねえさん
が
何らかの事情で夜の仕事をしている感じだ。
顔の作りの印象とは違い
もう体が
あ
もう
すごい
乳袋ってレベルじゃない
ボディペイントじゃないのかって
感じで胸の形まるわかり
そしてデカい
巨乳を超えて奇乳とか魔乳とか言うレベルだ
そしてフィギアスケーターが着るような衣装の
あの肌色の布の部分が
生で肌
やばい
どんな作りになってるの
どうやって体にくっついてんのコレ
見る角度によっては
見えちゃうんじゃないの
ゲームキャラならジョイスティック動かしまくりで
ベストポジション探しちゃうよ
そんな感じの上に一体型のロングスカートの
下半身なんだが、スリットがチャイナドレス
もう
お店どこですか
行きますよ
「どなたかアモンさんを知りませんか」
そう言いながらキョロキョロする美女。
何も知らず迂闊に前を通る人は
なんかデバフにやられた状態になって
急ぎ足で退散する。
「知りませんゴメンなさい急いでます」
街角アンケート状態が続いている。
かく言う俺も人垣から抜け出せないでいた。
なんか、このラインが絶対防衛線だ。
どうしたものかと考えあぐねていたら
見つかった。
目が合う。
燃えるような赤い瞳が一瞬光る。
その瞬間に分かった。
デビルアイだ。
いや
それの上位互換だ。
俺を発見出来た喜び。
本当に嬉しそうな表情になると
その美人は叫びながらこっちへ走って来る。
「アモンさーん」
走って来る。
が
遅い。
運動神経皆無な女子の走り方そのまま
大した距離じゃないのに
まだ
こっちに来れない。
「もー探しましたよー」
そして
すごい
胸が
すごい
走る動作で左右に揺れる
胸がすごい事になっている。
例えるなら
例えるなら
デンプシーロールを食らっている
スライム最大金冠が二匹いる
回転に入ったら止めようがあらへん
「・・・いけません」
ハンスはボソっと呟いた。
俺のインデイアナはジョーンズでも問題無いが
お前のアークは失われていなければマズいんじゃないのか
それでもいいのか聖職者。
ぜってーガバガバにチクるからな
「ババァル様!?」
俺に向けられた
デビルアイ上位互換に気づいた背中の
創業祭が声を上げる。
「え・・・あれが魔王なの」
えーとナニ
魔王のランクって胸のでかさで決まるの?
でも
魔王の乳なんだから
まさに
魔乳
言葉に偽り無しだ。
大した距離じゃないのに
やっと俺の目の前まで魔王は来た。
魔王が近づくに比例して人垣が避ける。
なんかアジの群れに鮫が来たみたいな状態だ。
おいハンス
お前まで下がるなよ。
大した距離じゃないのに
魔王はハァハァ言ってる。
ハァハァ言う声もやばい
なんだ、なんかピンク色の煙が見える気がする。
すっげーいい匂いが魔王から漂ってくる。
鼻の下をのばす
俺はこの表現の由来になる動作を
ついしてしまう
だって嗅いじゃうでしょ
女子だってそうしてもらう為になんかつけてんでしょ
ほっそい腕は自分の膝に当て
馬飛びの台みたいな姿勢になってる魔王
だから疲れるような距離じゃないでしょうに
そして重力に従う豊かな胸
いかん
ガン見しちゃイカン
でも
見ちゃう
男の性ってやつだ。
俺は魔王の両肩に手を添えると言ってのけた
「ババァ結婚してくれ」