第四十一話
「幻」はそのままで相手に幻を見せる能力。
ちなみに俺とベネットには効かないそうだ。
自分より上位には通じないとの事だ。
つまり聖都側に3位以上の実力者がいない場合
見破る事は不可能になる。
「四大天使が出てくるまでは無理でしょうね」
そう言いうベネットに俺は反応する。
その部下になる上位天使こそ
俺がキャラメイクしたアバターなのだ。
天と炎の天使長ミカを筆頭に
才と風のラハ
愛と水のブリ
裁と地のウル
この厨二心をくすぐる設定。
悪魔側は読まなかったが天使側はしっかり覚えている。
「まだ四大天使は出てきていないのか」
「来ていれば、ここまで上手く行かないでしょう」
俺の問いに対するベネットの答えは
結論からの推論だ。
ベネット自身に距離を超えて感知する力は無い
という事になる。
「全く何をしておるのじゃ・・・。」
ヴィータは誰に言うでもなく呟いた。
そいつらが来ていればヴィータはもっと安全だ。
悪魔などに頼らなくても済むに違いない。
俺としても早くこの女神を引き取って欲しいものだ。
まぁその時が最後かもしれない。
俺を殺さない
あぁは言ったが所詮、悪魔との口約束だからな。
それにヴィータがやらなくても四大天使が
こんなチャンスを逃すはずは無いだろう。
ヴィータの命令がどこまで拘束力が
あるか分からない。
内緒で狩りに来る事を想定して
準備しておいた方がいい。
実の所、一対一の勝負なら
四大天使相手でも勝てる。
ゲームの設定通りの能力である事が
前提になるが、天使側は長所も弱点も
熟知してあるのだ。
元々はそちら側でプレイするつもりだった為
かなり真面目に事前ファイルを読み込んである。
この場合に役に立つのは想定外だったが
これは十分なアドバンテージだ。
逆に向こうは今のアモンを全く知らない。
ヴィータが情報を漏らす事も考慮してなお
まだ試していない技がいくつもあるのだ。
「幻はまぁ分かるが、磔って具体的に
どんな能力なんだ。」
石化させて十字架に括りつけるのだろうか
ヒッポ〇ト星人みたく
「相手の自由を奪います。特定の事柄を
禁止させる能力です」
簡単な内容ならかなり大勢の自由を奪うそうだ。
複雑な事、複数の禁止などは
内容によって使う力の残量と相談になるそうだ。
これも当然、自分より上位の相手には
通じないそうだ。
「幻の能力を使い、恐らくダッソが神
ジュノが大司教、配下の悪魔が聖騎士に
それぞれ化けて、ジュノが疑う事を禁止して
しまう作戦です。」
「看破のスキルや特別なアイテムでの
鑑定をそれらでパスする気か・・・・
その辺どうなんだハンス君」
ハンスは少し考えてから意見を述べる。
「ヨハン様が言えば大体その通りに
下の者は動いてしまうでしょう。」
「あっさり入城できるって事か」
「はい。残念ながら」
入るはイイ
でも、その後どうするんだ?
俺は自分の意見を言ってみた。
「記憶をいじる力じゃないんだろ
いくら姿が同じで疑う事を禁止されても
聖騎士の家族が中身が他人だと
すぐに気づくんじゃあないか」
「はい。仰る通りです」
あっさり認めるベネット。
しかし
それからの言葉に皆、驚愕した。
「なので近しい者を次々と悪魔に
入れ替えていきます。教会関係者は
言うに及ばず皇帝一族も、政治・軍事から
押さえて行けば最終的には幻も磔も
必要無くなるでしょう」
「えーなんで必要無くなるの」
プリプラ
無理にしゃべらんでいい
「・・・なんという」
ハンスはショックがでかいようだ。
ヴィータは黙っている。
俺は首を傾げる。
「そんなに上手くいくか?
聖都には勇者が居る。そいつはどうする」
レベルがいくつなのか分からないが
自称劣化版の妹エッダちゃんでもイイ線いってる。
ガバガバが、それ以上なのは間違いない。
それが3・4位より上位にいれば
まず最初でつまづく
すんなりは行かないし
敵の行動を見す見す許すとは思えない。
「勇者には看破させます」
ベネットが予想外の意見を言った。
勇者を騙す気は無いという事だ。
即答するという事は
もう勇者対策は準備が済んでいる。
「やっぱり3・4位以上の実力者なのか」
「さぁ存じません。ですが見破って頂きまして
出来ればその場で襲い掛かってくれれば
良い処刑の正当な理由になります
慎重に動く様なら皇帝を乗っ取った時点で
適当にでっちあげて」
ベネットはそこで言葉を一回切り
告げた。
「いずれにせよ処刑します」
完全膝カックン耐性がなければ
許してしまっていたかも知れない。
それ程に意外だった。
ハンスは槍を創業祭に穿つ。
もう全身全霊の全力だ。
俺は左手で槍を掴んで止める。
人の皮膚を貫通して中の悪魔の肉体に
ピリピリとダメージが入って来る。
結構イイ感じに黄金に輝いている。
やればできるじゃないかハンス君。
「なぜ、止めるのです!!」
大声だ
ハンス君にしては珍しいな。
「まだ情報を持ってる。それに
ベネットを始末して止まる事じゃない」
怒りの表情から反省の色
いや
自己嫌悪かな
ハンス君は表情を変え
力を抜いた。
「これからどうするか考えようじゃないか」
「・・・すいませんでした」
「いや、勇者の側近だもんな怒って然りだ
やっぱり大事な人なのかい」
ん
照れ・・・か
この感情は先程と違って
美味しくないな
「はい」
なんだと
それでも聖職者か
畜生リア充なのか
ちょっと処刑に協力したくなったが
流石に言えない