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第三話


「そんな・・・それではヨハン様はもう」


 ヨハンとやらがあの司教の事だろう。

俺の説明に答えてくれたハンスの話。それらを纏めて整理すると


 現世に神が降臨すると神託を受けたヨハン大司教は聖騎士の軍勢を

率いて神の身柄の安全確保に聖都バリエアから出発。

 しかし、その情報が漏れていたのか敵対する悪魔側も神強奪に動いていた。

それで洞窟のバカ騒ぎだ。

 ハンスは地方の神父で呼ばれているワケでもないのだが

居てもたってもいられず、馳せ参じたが間に合わなかった。

 

 と、まぁよくある話だ。

いやいや間に合わなかった事が逆に良かったんだよハンス君


 赤子の引き渡しは断られるハズが無い事を確信した。


 しかし、降臨とはな。


 俺は太郎との会話を思い出す。

確か中盤で予定されているイベントだったハズ 

神・魔王それぞれ12段階の強さをもつキャラが

ランダムで降臨するイベント。

 ランダムと言いつつ、その実は

それまでの流れで勢力差を調整する為に劣勢の陣営には強めのキャラが

降臨してゲームバランスを保つ仕組みだそうだ。


「泣いている暇は無いぞハンス君、早く神様を連れて聖都とやらに行かねば」


赤子を引き取ると言え。


「そっ・・そうですね。アモンさんの言う通りです。ヨハン様の努力を無駄にする

ワケには行きません」


 俯いていた顔を上げ気合の入った表情になるハンス。

おっさんなんかどうでもいい、赤子を引き取ると言え。


 「そうだ。君の到着が遅れた事こそが神の導き。君の役目は

聖都まで神様を無事送り届ける事だと思うぞ。使命と言ってもいい」


「そうですね・・・間に合っていたら今頃、私などは・・・」


先ほどまでは遅れた事を悔いていたハンス。

早く赤子を引き取ると言え。


 拳を強く握りしめ決意に満ちた顔でハンスは言う。

「アモンさん!神様はどこですか。私が聖都までお連れ致します」


 その一言を待っていた、よく言った。

「こっちだ、来い」

 そう言って腰を上げる俺。続いてハンスも立ち上がる。

並んでみると俺はデカかった。帽子込みハンスが2mだとすると

半分くらいなので4m近くにもなる事になる。

  

 可視範囲犬と同じくらいだ。


 むせる。


 俺とハンスは茂みを抜け、赤子を置いた湖のほとりまで来た。

そこに赤子は居なかった。


 赤子を包んでいた布きれが置いてあった場所にそのままあった。

そしてその先の湖で水浴びをしている子供がいる。

 草を踏む俺達の足音に気づき、子供は振り返る。


 一言で言えば美少年。それも神がかった美しさだ。

股間に一物が無いので女の子なのだが、胸はペッタンコ

腰もくびれていない。まだ女性としての変化前だ。


 肩に届きそうな濡れたショートヘアは深い青で朝日に反射する

外延部は水色に輝いて見えた。


 それは赤子と同じ髪の色だ。


「中々に良い祈祷であったぞ。お陰で体もこの通りじゃ」


あっけに取られる俺にハンスが尋ねてくる。


「アモンさん。赤ん坊では無かったのですか」


「・・・成長してやがる。さっきのお前の祈りのせいなんじゃね」


俺たちのやり取りを気に留める様子も無く


そいつは、ヨタヨタと岸辺に戻りながら言う。


「我の名はヴィータ。女神なるぞ」


「じゃあ、そう言う事で、後はよろしくハンス君」


 くだらねぇお使いクエストがやっと終わる。俺は踵を返して

その場から去ろうとした。


「コラーどこに行くのじゃ待てぃ」


 待つかボケ。ハンス共々追手の悪魔に食われちまえよ。

しかし、俺の意図に反して足は止まってしまった。


「ナニィ?!」


強い意志で足を動かそうとすると腕に痛みが走る。

この痛みには覚えがある。俺は痛む箇所を見ると何やら梵字の様な

刻印が光っている。


「フハハハハ動けまい悪魔よ」


腰に手をあて無い胸をふん反り返してヴィータは笑う。


「何で?!」


慌てふためく俺にヴィータは勝ち誇った笑顔で続ける。


「肌に触れたのが運の尽きよの。聖刻を刻ませてもらった。貴様は

もう我の下僕じゃ!逆らう事はかなわぬ」


 そうこの腕は洞窟内で赤子に触れた箇所だ。


「何故、飛行して逃げ続けなかったのか。なぜこの場所に神父がすぐ

現れたのか。疑問にも思わなかったのか?全部偶然かや、んん??」


 おいおい最初から操られいたのかよ俺。


「おい売女、ふざけんなよ」


「我に乱暴な口利きは許さぬ。」


「ヴィータ様、御戯れも程ほどに」


「大真面目じゃ」


マジで冗談じゃないぞ。


「コレ解除しろよ・・・してください」


「できぬ」


段々腹が立って来る俺。


「おいおい、恩人相手にこれは無いだろ」


仮にも助けたのは俺なんだぞ。


「はぁ?恩人?これ以上ないマッチポンプじゃろうが」


ぁそうですね。


「取り合えずは聖都まで護衛してもおうかの」


「おぉそれは心強いですね。私は戦いは不得意ですので」


喜ぶハンスは背の荷物をほどき、タオル的な布を取り出すと

そう言いながらヴィータに渡す。


「いや・・・無理だろ悪魔だぜ俺。そのパーティに混ぜちゃイカンだろ」

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