第三十八話
中間の町、ベレンまで二日の距離
久々に村、というか初の人里に到着した。
一言でいうと貧しい村だ。
荒れ地にあるせいで農作物はロクな物が採れない。
何故こんな所に暮らしているのか
正直理解出来ないが、思えば人はどこにでもいる。
前の世界でも、ほとんど氷しかない土地でも
アザラシやクジラを食いながら生きている人
砂しかない土地に日中は50度という土地でも
人はそこで生きていた。
宿は質素ながら存在したので
エルフの里で貰ったモノをいくつか
金に換え宿代その他を工面した。
「これが・・・硬貨か」
「なんか作りが雑ぅ」
俺とプリプラは硬貨を初めて見たのだ。
エルフの里では使用されていなかった。
ベアーマンや蜂人は言うに及ばずだ。
医者らしい医者もいなければ
当然、治療の施設もない。
村人の健康・衛生状態はひどい状態だった。
ハンスとヴィータは村の中央の広場で
ボランティア活動を始めていた。
俺とプリプラは、その間に宿の手配その他
買い物などをこなす。
その帰り、宿に行く途中で広場に寄って
ヴィータに聞き込みで得た情報を伝える。
「やはり偽聖騎士団はこの村には立ち寄っていない」
「そうか・・・ならば実行じゃ」
「・・・・なぁ本当にやるのか」
力強くうなずくヴィータ。
俺は肩を落としプリプラの元まで戻る。
「やるんだって」
「がんばってねぇ」
楽しそうだ。お前はイイけど俺は
「えー」だよ・・・。
宿に戻ると俺は創業祭だけ持って
人目を忍んで村外れまで移動する。
「神の布教は大変な手間ですな」
「いや、コレは違うと思う。こうじゃない」
背中のベネットは呑気だ。
まぁ恥ずかしいのは俺だけだ。
村外れまで移動する最中に畑をチラ見したが
やる気があるのか疑いたくなる。
こんな痩せた土地なのだから、もっと荒れ地でも
よく育ってくれる。トウキビとかジャガイモ系を
植えれば良いものを・・・って無いのか?
これは、なんとか出来るかもしれない
茶番が終わったら単独行動にしよう。
村外れで4m級の悪魔になる。創業祭も
同率で大きくなってもらいヴィータに聖刻を
介して合図を送る。
返事が来たらGOだ。
こなければイイのにと思っていたが
GOサインが来てしまった。
あーやだ恥ずかしい。
覚悟を決めて俺は翼を起動させる。
一瞬で村の上空、広場の上あたりまで来ると
俺は半ばやけくそ気味に叫ぶ。
ええい、もうなるようになれ。
「フハハハ!愚かな人間共よ。」
すんごい注目度だ。
村人全員じゃないの
みんな俺を見上げている。
ガチのタンクがヘイト取ってるみたいだ。
邪気っていうの
悪魔力のオーラ全開で叫ぶ俺。
加減がよく分からない
怖がってもらわないと困るので
全開だ。
昼なのになんか薄暗くなっちゃってるし
ゴゴゴワァとか大気が震えてるし
木々は見る見る枯れていくし
すごいなコレ
「我こそは魔王軍幹部、コグレ様だー
貴様ら全員を血祭にあげてやるわー」
爆笑されたらどうしようと恐れる俺の
予想に反し、村は一瞬で大パニックに陥った。
気絶する者、半狂乱になる者、泣き出す者
もう阿鼻叫喚だ。
「アモン・・・人間相手にやり過ぎでは」
ベネットは呆れ気味だ。
だって加減が分からないモンしょうがないじゃん
次はもっと上手にやります
いや
今回だけで勘弁してほしい。
「それより・・・どうだ、この恐怖
美味いかベネット?」
村人達の恐怖が俺に流れ込んできているが
正直、大味でマズい食い物が量だけはある
そんな印象を感じていたのだ。
これならエッダちゃん一人の方がイイ。
あれは実に美味であった。
「いいえ、全く食指に反応いたしません
私の趣味では無いですな。低級悪魔なら
この程度でも満足するでしょうかね」
「フム・・・この恐怖を作ったのは誰だー状態か」
「あなたですよね」
ああ通じないか。
だよね。
そんなグルメ談義に花を咲かせていると
群衆の中から敢然と名乗りを上げる者がいた。
「悪魔め貴様の思い通りにはさせないのじゃ」
もうノリノリのヴィータ様だ。
プリティでキュアキュアな戦士の様に
ポーズを決めて校長が乗る台みたいなのに
キメッ決めで立っていらっしゃる。
やべ笑いそう
堪えろ俺。
「なんだ小娘、貴様何者だー」
本当
何者なんですか
「我こそは12柱が一人、豊穣の女神ヴィータなるぞ」
「みなさん大丈夫です。私と共に祈りを」
ノリノリのヴィータと対照的にハンスは
真面目に一生懸命だった。
こんな馬鹿げた企画なのに
本当にハンス君は真面目な人だ。
「フハハハ村人共々、食らってやるわー」
「そうはさせぬー女神びーむー」
ビームって言ってもビームでは無かった
物凄い遅い、でもまぁこの場合は
見えやすく分かりやすいのが一番なので
これでイイのだ。
ほぼ光速で刹那の瞬間だけの光線など
通常の人間には何が起こったのか理解できない。
しかしこれは、 すごい速度が遅いが、神力の塊だ。
まともに食らうのは、これはヤバい。
かと言って躱すワケにもいかない。
ちゃんと食らってやられなければいけないのだ。
それも分かりやすくだ。
プロレスは格闘技とはまた別の才能がいる。
俺は咄嗟に創業祭を盾代わりにして
デビルバリアのタイミングを合わせる。
「ぬぅうううううわーーー」
パパスの断末魔を参考にして
命中と同時にダイナミックに吹き飛ばされる。
飛んだのではなく
吹っ飛ばされた感じになるのが重要だ。
ふっとんだ先でデビルフラッシュ
それに合わせて火薬の詰まった玉に着火。
偽の爆発ドーン
これでやられた様に見えるはずだ。
流石にシャア相手には無理だろうが
村人なら胡麻化せるだろう。
ヴィータ考案
布教大作戦だった。
完全なマッチポンプの猿芝居
騙した訳だが、これで獲得できた信者に
価値はあるのだろうか
疑問だ。
しかし女神びーむ
なんて馬鹿げた威力だ。
デビルバリアを簡単に突き破って
創業祭に直撃だった。
「スマン。生きてるかベネット」
「アハハ、大きい...彗星かな。イヤ、違う、
違うな。彗星はもっとバーって動くもんな。」
いかん
壊れたかも。
出展
パパス ドラゴンクエスト5のNPC。プレイヤーの父親で個性的な断末魔を残し退場する。
アハハ、大きい...彗星かな。 機動戦士Zガンダムの主人公。個性的なセリフを残し表舞台から退場する。