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第三十六話

 俺は改めてハンスの後ろに

回り込むとプリプラの治療を開始する。


「信仰心を高めろよ」


ハンスの寿命を消費するワケにはいかない

ハンスの祈りでヴィータは成長した。

そこに繋がりがある証拠だ。

逆にハンスはヴィータから力を

借りる事が出来るハズなのだ。


 最初の壁は診断だった。

当たり前といえば当たり前だが

ハンスにはデビルアイが無い。


 仕方が無いので診断は自分の目で行った。


 プリプラは見た目通り軽い熱傷だった。

真皮まで達していない。

 これなら代謝を加速させてやるだけで治る。


 ハンスは真剣に祈りを捧げている。

黄金の輝きは視認出来るレベルでは無いが

悪魔の組織を伝わって存在しているのが

分かる。


「内の祈りで天から力を授かるイメージで」


適当にアドバイスする。

真面目なハンスは言われた通りに

頑張っている。


 俺は周囲から集まった力のみで

治療を開始した。


「ストップじゃ!」


ヴィータが大声で止めた。

俺は咄嗟に接続を全て解除する。


「オヌシ何をしておるのだ?」


ハンスは膝を着きこめかみを押えている。

頭痛に襲われているようだ。


「何って、ヴィータがやっていたように」


俺は昼間ハンスに行った治療の要領を

ヴィータに説明する。


 説明を聞いたヴィータは腕を組んで

考え込む。

 しばらくしてから俺に解説を始める。


「まず、オヌシの行っている事は

治療ではない改変だ。そんな大層な

処理は人の脳では負荷が大きすぎる」


ハンスの頭痛はコレが原因だった。


「根本的に勘違いをしておる様じゃな

ハタ目には我の行っている奇跡を

トレースしたようじゃが。我は

そこまで複雑な作業をしてはおらん」


分かっていない俺を察したようで

ヴィータは更に詳しく説明をしてくれた。


「良いか。生き物の体であれ、石ころであれ

物体は元の姿を本来の形記憶しておる。

我は元通りになれと命じているだけじゃ

オヌシは物体お構いなしに

力づくで元の形に一個一個並び替えを

行った。治す場合はそんな面倒な事を

しなくても良い」


 笛吹いて「整列」と言えば済んだものを

一人一人抱えて並べた様なものか。

 それは大変な労力かつ無意味だ。


 俺は理解し後悔する。

うーん、やはり師匠に先に聞くべきだったな。


「なまじ悪魔化や人化など変化が得意な事が

可能にしたカン違いじゃな。改変は治癒と

違い本来、存在しないモノまで作るコトが出来る

より高度な技じゃ。驚いたぞ。」


 改めてヴィータがプリプラに奇跡を

行ってみせた。

 言われてみれば実に簡単に行っている。

確かに俺のやり方では大人数を治療する事は

出来ない。

 エルフの里であれだけの負傷者を

治した実績が既にあるのだから、

間違いに気づいても良かった。


 すっかり出来ると思い込んで

ハンス君を酷い目に合わせてしまった。

 素直に謝る俺をハンス君は

「貴重な体験をさせてもらいました」と

笑って許してくれた。


 失敗は成功の母だ。

今回の事で「治療魔法」の確立は

大きな前進をしたと思う事にしよう。


 それに今のヴィータの行った

治療を改めて解析して今後の目途は

ついた。スマンがハンス君

また実験に付き合ってね。 


 プリプラの治療が終わると

夕飯になる。

 メシの質がなんというか上がっている。


「せめて、何か役にたちたいしー」


「ですね。このままでは肩身が狭いです」


 プリプラとハンスの言だ。

なので先ほどの俺の申し出はハンスには

渡りに船だったようで、今後の実験にも

「是非に」との事だった。


 ハンスは何だかんだ言って実は結構強い

生身の組手で俺はかつて簡単にのされている。

聖都では、なにやら勇者の付き人みたいだし

今回みたいな「魔将なんたら級」でない

レッサーデーモン位の相手ならそこそこ

やるのではなかろうか。

 そこで思い出す。


「これハンスなら使えるんじゃないか」


170cm級悪魔化して生成する。

エッダちゃんの槍だ。 


「これは・・・エッダさんの」


「劣化版だけどね。聖属性は自前で装填

しないと、ただの槍と変わらん」


目が輝くハンス。


「お借りしてもよろしいのでしょうか」


「いや、あげるよ」


 創業祭と違って材料は地中の金属成分だ。

いくらでも作れる。


「ハンスさんばっかり、ずるーい」


ムクれるプリプラ。


「申し訳ありません」


いや、ハンス君は悪くない。


「お前は里の連中並みに精霊使いこなせよ

それでも聖属性が生成できないとこの槍

意味ないから」


 攻撃・防御・回避など全ての動作に

精霊の風の効果を里のエルフ戦士達は

上手に使いこなしていた。

 プリプラにも出来るハズだ。


「えー・・・。」


「・・・その内風属性の武器作ってやるから」


「絶対だよー」


嘘です。

風属性なんて全く分かりません。

作れる気がしません。


「あ、武器で思い出した」


俺は体から悪魔剣「創業祭」を

取り出した。

 ヴィータが鍋を持って後ずさる。


「ちょっと、近いのぉ」


プリプラとハンスも嫌そうなな表情だ。

昼間の恐怖が蘇るのであろう。


「ちょっと待ってろよ」


地面にぶっさすと、さやを生成する。

内側には貴重な銀を貼った。

確か邪気を払う効果があるので

上手くいけばヴィータの傍でも平気になる。


 出来上がった鞘に創業祭を収める。


「どうだ?」


見た感じ、禍々しいオーラみたいなのは

放出されていない。


「お・・・やるではないか」


ヴィータと鍋が戻ってきた。

鍋持ってくなよ。


 俺は更に鍔を加工し、魔核をハメる穴と

ファン、その放出口に疑似声帯を付ける。

これで会話が出来るのでは無かろうか。


思えば

メーテルの親父とか

シャナの首飾りとか

光るのはいいとして

どうやって発声しているのだろうか。


 俺は魔核を創業祭にはめ込む。


「ハンス君、この剣が変な動きをしたら

遠慮無く槍でやっちゃってイイよ

丁度いいテストだ」


どっちもな。

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