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第二十四話

「ダメじゃ。元の所に戻してくるのじゃ」


 だから捨て猫かよ

エッダも同行してエルフの里まで帰ってきた。

勇者とはいえレベルはそんなに高くないのか

徒歩以外の移動が無いようなのだ。

 はやく馬車や気球を入手出来るイベントがあると

いいね。


 野宿で問題無いと彼女は言ったが

今しがた襲撃さればかりだろうに・・・。

 

里までの道中で知りたい情報は入手できたが

はい、さようならというワケにもいくまい。

なにより俺自身が名残惜しかった

やっと出会えた「まともな人」だ。

 まぁ真の姿を晒せばこう親しくはしてくれない

のだろうが、ちょっとの期間ならいいだろう。

騙そう。

 

 そんなこちらの状況を聞く気も無い

このバカ女神は偉そうにふんぞり返っているのだ。


「なんでヌシは単独行動に出ると何かしら

拾って帰ってくるのだ・・・悪いクセじゃぞ」


 説教を垂れ始めた。

たまには逆襲をするか。


「そうだな。済まなかった」


俺は頭を下げるとキッパリと言い放つ。


「全部、元の所に戻して来るよ」


ウンウンと満足気に頷くバカ女神。


「そういうワケでヴィータ」


「なんじゃ」


「まずは一番最初に拾ったお前からだ」


「あっ!」


「あの洞窟に放り込んでやる!来い」


 里の入り口で一通りの寸劇をやった後

夕飯になる。

 エルフの里では家族という単位が無いので

全員分を数名の調理担当が一気に作り

見張りやパトロール以外の手の空いている者は

一斉に食事になる。


 メシで思い出した。

俺は背中のエルフ製リユックっぽい物から

ブツを取り出し、調理担当の一人「タムラ」さんの

所まで行く。

 ブツは岩塩だ。丁度、岩山に行った時に

発見し「塩が足りない」と言っていたのを

思い出し持って帰ってきたのだ。


 タムラさんは大層喜んでくれた。

なんでも塩が無いと戦力に影響するそうで

本当に困っていたようだ。

 糖分などと違い、植物から採取出来ない

入手は苦労するのだろう。


 昼、長と話した時に塩が欲しい物リストに

無かった。

 やはり、どんな組織でも上と下では意見が違う

偉い人に聞くだけでは全てを把握する事は出来ない。


 夕飯に出てきたフルーツの蜂蜜漬けは

本来なら保存食なのだが、俺たちの強い要望

(女子の)で出てきた。

ヴィータもプリプラも、そしてエッダちゃんも

目の色を変えて食いまくっていた。


 早目に食べ終えると俺は単独行動に移る。

「里前の広場に居るから」とハンスに伝え

席を立った。


実はもう我慢の限界に来ている事がある。

それを何とかするのだ。


日本人なら誰でも世界の何処に行ったとしても

コレ無しでは長くは生きられない。


風呂だ


もう入って無くて三日目だ。

限界だ俺は風呂に入る。

川での水浴びとか、頭おかしいんじゃねぇの

細菌だらけキレイになった気がしない


 エルフは火を禁忌としている。

里の中はもちろん直下の広場に作るワケにはいかない

 人目に付かない変身場所が丁度良く条件を満たしてくれた。


 万が一全焼しても里まで延焼しない事。

それでいて里から近く、人目に付きにくい場所


 今日の昼の時間、実は戦闘や交渉よりも

露天風呂作成に使った時間の方が多い。


まず地下室を掘り、岩を鉛でハンダ付けし

壁や支柱にしていく

そこから近くの川まで蒸着応用で作り出した

真鉄のパイプを給水用と排水用の二本通す。

 給水側には貯水曹を設け、小石・砂・炭などで

浄水する。

 壁と同じ要領で床を作成

一番大きな一枚岩を削り出し浴槽とする。


 周囲をお城の石垣風に適当に岩積み上げ

目隠しにした。


 ここまでは事前に出来ていたので 

後は浴槽に貯めた水に小出し悪魔光線を照射し

40度程度まで加熱してやる。


出来た。


 早速、衣服を脱ぐと、かけ湯をし

俺一人だからしなくても良かったかもだが

しないと気分が悪い、もうマナーというより

儀式なのだな。


お待ちかねの入浴だ。


「うぅぅぃいいいいいいいっ」


謎の掛け声を発しながら浴槽に入る。

もうちょい熱い方がイイか

半人化して入浴しながら悪魔光線を照射

ジョワッジョワッ

着弾した箇所が瞬間沸騰する。

 そうしてから人化する。

 

「うむ、いい湯だ」


 湯に浸かりながら昼の一件を自分の中でまとめてみた。


エッダの到着は俺達が対ベアーマン戦勝会してた辺り


その時に聖騎士団と大司教とすれ違いになった。


ヨハンが保護されたたのはその前、ハンスと出発した辺りか


それからエッダの到着までの間に洞窟は崩落した事になる。


仮定1

俺の居た降臨は囮で他に本命があった。

エッダが遭遇したのは本命の方。


仮定2

悪魔軍団が俺の様に人化し偽装している。


うーん

ヴィータが本物の女神なのは間違い無い。

やはり仮定2の線が濃厚か

 

どっちにしろヴィータは悪魔に襲撃される。

明日には出発しよう。

相手が悪魔軍団では

ベアーマンと違い余裕の勝利とはいかない

敗北も十分有りうる。

後、早目に聖都に偽装の一件を・・・・


うん?


なんで神側の思考なんだ

ダークエルフに会う為にも

いやいや

それ関係無しに

俺は悪魔サイドだろ

襲撃に合わせて味方の方に戻れないものだろうか 


「んー今夜殺されるかもしれないし

今日の話の後で決めればいいかー」


 ヴィータが出がけに言った。

「寝る前に部屋まで来い」

その時が俺の最後かもしれない。


 半人化しておけば良かったのだろうが

それだと風呂の気持ちよさは味わえない

完全人化状態の俺は接近者にまるで気が付かなかった。


「ナニを独りでコソコソとやっとるのかと思えば」


「ちょヤダースッゴーイ温泉が出来てるー」


「エルフには入浴の習慣が無いはずなのに離れにテルマエが」


見つかった


女子軍団だ

どうせあいつらは

製作者の俺に感謝も無く

自分達だけの為に俺を追い出すのだろう


そして案の定追い出された。


フリチンのまま放り出され

着替えが投げつけられ

「覗いたら殺す」と言われた。


俺はカジノで全てを失った男の様な状態で

里へトボトボと帰る。


パンツを履きながら悪魔サイドへ帰還すると誓った。

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