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第二十二話

「もっと無いんですかなツァ」


 蜂蜜の土産を受け取ったベアーマン族長は

そう言った。


 何調子こいてんだ滅ぼすぞテメェら


「蜂人に味方してお前ら滅ぼしてもいいんだぞ」


 若干キレ気味に、そう言うと両手あげ仰向けに倒れる族長。

だからソレ逆効果だって・・・。


 エルフの里に戻ったのは昼頃になってしまった。

近くの見えない場所で人化すると、蜂蜜壺のでかさにビビる。


 持ち歩いて旅なんて無理だ。小分けして残りは里に

置いて行こう。

 生身では、とても持てる重さでは無いのでマスクを掛け

半人化して担ぐ。

 ベアーマンも蜂人も人やエルフから見たら巨体だ。


 土産は想像以上にエルフ達を狂喜乱舞させてしまった。

まぁ蜂人以上の戦闘力が無いと基本入手出来ないだろうから

レアなのは分かる。


 踊って喜んでいるプラプリを捕まえて

俺は里長に面会を申し出る。

 プラプリは直ぐに手筈をつけてくれた。

というか蜂蜜の匂いに釣られて里長も

すぐソコまで来ていたそうだ。


 どいつもこいつも、どんだけ蜂蜜好きなんだ。

フンターさんかよ。


 俺はベアーマンとの交渉の結果を伝える。

思えば相談も無しに勝手にやってしまった。

怒られたり拒否られたりしたらどうしようかと

焦ったが、そんな事は無く普通に感謝された。


 物々交換の件も快諾してくれたが

レートその他モロモロが今後の課題になる。

ただベアーマンを防衛の戦力としては

不安の方が大きいとの事だった。

言葉を濁していたが要するに信用できないらしい。


 岩山に帰るなら不可侵で手打ちでいいのかもしれない。


 歌の件は驚きと共に感謝された。

やはり安全が一番だ。


 里長に促され広場に行き

早速、「ヒーローの歌」を伝授するが

大勢に取り囲まれ超恥ずかしかった。

 ニヤニヤみているプリプラがムカつく。


お前の安全に為にやってんだぞ


 流石というかエルフは音楽のセンスが抜群で

二回目には楽器演奏が混じり、ハモる奴までいた。

軽く敗北感を味わう。


 さて、日が暮れる前にもう一往復だ。


そう思って里を出ようとする俺を呼び止める者がいた。

他のエルフ達よりも頭ひとつデカイ

体つきも華奢ではなく健康的だ。

青い髪は背の中程まで伸びていて

バラけないように先端を紐でまとめている。


「誰だお前は?」


「・・・・失礼な、聖刻で分かるじゃろうに」


昨日は治療で大量に力を消費していた為、

むしろ幼児化していたヴィータだったが

今日は補充が上回ったようで高校生位になっている。

エルフ族の大きいサイズの服を着ているのだが

それでもキツイのか、なんかピッチピチで

おおう


「すいません、あまりにお美しく変化されていたもので

分かりませんでしたぁ」


思いっきりバカにした顔(ベアーマンを参考)で

そう言ってやった。

 それにしても「聖刻で分かる」とはどういう事だ。

俺の方から何か出来るのかコレ。


「それならば仕方無いのぉ」


少し顔を赤くして言うヴィータ。

通じてないや。


「夜、少し話がある。疲れておる所悪いが

寝る前に部屋に来るのじゃ」


「仰せのままに」


大袈裟にかしこまって俺はそう言うとベアーマンの

集落へ向かう。  


 集落の近くまで来ると、高性能デビルアイが

異常を感知した。


 どうやら戦闘中らしい。


「またか、何故だ。何故、平和に生きられない」


今度の相手は誰だ。まぁもう誰が相手でも

後の面倒はみてやらんわ


 高性能デビルアイで確認すると相手は

なんと1名の人族とおぼしき人物だ。

 ベアーマン側が一方的に追い詰めているようだ。

人族は逃走を試みているのが分かる。


 エルフ相手の時もそうだったが

ベアーマンは自分達が優勢だと相手をからかう

ような戦い方をする。

いい加減、頭に来た俺は加速して突っ込む


「森のー平和を乱す者はーゆるさなーい」


 俺の声に気が付いたベアーマンはバツが悪そうに

攻撃を止め、集落の方に引き返し始めた。


 人族側を庇う位置に減速無しで着地する俺は

逃走するベアーマン達の背に声を掛ける。


「事情によっては後でお仕置きだからなー」


 そう言ってから俺は人族に振り返る。


「怪我は無いか」


「あ・・・悪魔?!」


あ、そうだ悪魔状態だ。

やべ

なんとか胡麻化そう。


「いいえ。私は森の妖精です」


「嘘だっ」


羽織っていたローブを素早く脱ぎ去ると

背から槍抜き構える。


・・・ナタが出てくるかと思ってた。


パッと見、人族の女子だ。

金属製の鎧を着込んでいる

洞窟で見かけた聖騎士達とは

メーカーが違う感じで

豪華さは控え目、実用本位な印象を受ける。


 そして問題は槍だ。

騎乗しながら使うタイプの槍で

ソフトクリームのコーンみたいな部分が先端になっている。

その先端が微妙に黄金色に輝いている。

俺にダメージを与える事が可能な武器だ。


「ほう、いい槍を持っているな」


「家宝だ」


「よく見せてくれ」


「駄目だ。勇者の家系エッダ・ヒリング参る」


そう言うや否や、エッダは槍を突いてきた。

良く訓練された動きだ。

だが、悪魔状態の俺の脅威では無い。


 俺は下腹部目掛けて突かれた槍を軽く躱す

ついでに槍を奪い取る。

 先端部に触れないように気を付けた。


 圧倒的な腕力の差がある。

エッダは簡単に武器を奪われてしまった。


「あぁっ・・・・」


狼狽えるエッダに構わず俺は槍に注目する。


4m級悪魔からすれば、孫の手位な感じだ。

高性能デビルアイ走査モードで作りを素早く

解析しておく。 


「かっ・・・返せ!」


 解析を終えた俺はそう訴えるエッダを見下しながら

ゆっくりと告げる。


「無抵抗の者に攻撃を仕掛けるとはな

何が勇者の家系だ」 

 

「悪魔には問答無用だっ!」


エッダはそう言うと腰からサブウェポンである

剣を引き抜き構える。


 こちらの剣は普通の鋼の剣のようだ。

凄い眼力で睨みつけてくるが

今ので勝てないのが分かったのだろう

必死に勇気を振り絞っているのが分かる。

エッダの恐れが俺に伝わってくる。

俺の中に何とも言えない喜びが沸き上がる

飢えが満たされていく感じだ。


こいつの恐怖は中々に美味だ。


いかんいかん

悪魔の体でも俺は人間だ。

コレを楽しむ様では俺もベアーマンと同じだ。

もう少し味わいたい気持ちを俺は抑える。


「そうかよ。返すぜ・・・ホラよっと」


俺は槍を投擲する。


ビュォオオオン


上下角45度で打ち出された槍は

300ヤードを超えても、まだ上昇していく。


やべ

もっと弱く投げるべきだった

遠すぎか

ま、いいか

向こうが悪い

殺さないだけ感謝しろ


「あっーーーー・・・・」


人間の目では視認する事が困難になる程

離れてから槍はやっと落下に移った。

エッダは見る見る涙目になっていく。

ちょっと可愛い。


「じゃあな。せいぜい頑張って探すんだな」


俺は翼を起動させ飛行して、その場を後にした。

完全膝カックン耐性でエッダを確認するが

動いている様子は無い。

呆然としている。


そう言えば家宝とか言ってたっけな

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