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第二十話

 清々しい朝だった。

悪魔状態なら食事も睡眠も排泄も必要ない俺だが

人間状態だと全て必要になる。

 

 久しぶりにベッドで寝られたお陰で爽快だ。

早目に起床した俺は、そっと部屋を出て

見張りに用事を説明し、ヴィータ達に言伝を頼んでおく


 今日は物資の補給とヨハンの様子見で一日滞在予定だ。

俺は俺で俺でしか出来ない用事を片付けて置くことにした。


 里から見えない森の中程まで来ると悪魔化し

上空へ、風下に移動すると。悪魔耳、悪魔鼻に意識を

集中する。


 昨日のベアーマンは若いオスだけの戦士で構成されていた

女子供老人を含む集落が近くに存在するハズで

そこに昨日以上の戦力が保有されてないとは言い切れない。


 俺達が去った後に襲撃されては意味が無いので

二度と襲わないように話を付ける必要があるのだ。


 場合によっては、また皆殺しだ。


 昨日の皆殺しは俺自身が高揚したせいだ。

悪魔状態だといわゆる悪感情が悪魔の食事になるようだ

それも文明レベルが高い方が美味い。


 なので本当ならエルフ連中を恐怖のズンドコに

陥れた方が悪魔的には正しいのだが、

今の悪魔のOSは一般的な日本人若者男性である 

たけしくん なので出来ない。

 

 やはり和平交渉を成立させるのが理想だ。


「さぁーて、ドコにいるのでしょうかねー」


どうせツァツァやかましく騒いでいるに違いないので

すぐ見つかるとタカを括っていた。


 そしてその通りだった。

ただ、なんだ、なんか変だぞ。


 鼻と耳で特定したエリアを高性能デビルアイ望遠モードで

観測すると、なんと朝から戦闘中だった。

アホか

どんだけ戦闘民族なんだ。


 戦っている相手は初めて見る知らない種族だ。

どうも蜂が人型になったような感じの生き物だ。

蜂人と呼ぼう。


 ベアーマン側が襲われいる側で劣勢だ。


ざまあみろ、エルフの気持ちが少しでも分かるといい


昨日の絶望に膝を着き、ただ泣くしか出来なかった

エルフの子供達を思い出す。


大人はいい


何をしようが、どうなろうが、自分の責任だ。

だが、子供はダメだ。絶対にダメだ。


 そのベアーマン側にも子供は居た。

恐怖におびえ必死に母親にしがみ付いているのが見えた。


「・・・・・・見えなきゃ良かったんだがな」


 仕方ない、どうせ行くつもりだったし


「森の妖精。出動だぁ」


 瞬間的に音速まで加速する。

進行方向の大気をベルトコンベアの要領で回し

ソニック・ブームを起こさない様にした。

 ちなみに大気操作はエルフの精霊が行っている事を

見よう見まねだ。


 切り裂いて飛んでも俺にダメージは無いが

体表の温度がスゴイ事になるのと

珍走団がカワイくなる程の爆音のせいで

面倒なのだ。


 もう瞬間移動と変わらない状態でベアーマンの

集落上空まで到達した。


「森をーーーーーー荒らす者はーーー」


ありったけの大声を出したら

気を使って止めたソニック・ブームの並みの

音量になった。

これでは何の為に静かに飛行したのか分からない。


「許さなーい」


小さくするのも変なので

そのままの大声で続ける。


「俺はぁああ!」


戦いの中心部向けて自由落下する。


「森のぉおおお!」


蜂人もベアーマンも戦闘どころではないようだ

上空を見上げて唖然としている。


「妖精ぃいいいいい!」


我ながらナイスタイミング。

いい読みだった。

言い終わると同時に着地した。


ズドーーーン


舞い上がる土煙。

下半身が地面にめり込んだ。

これではカッコ悪いので

すかさず軽くジャンプして

脱出する。


「おはよう!みんな、森の仲間たちよ」


 土煙が晴れるタイミングで笑顔を作る。

毎度の事だが、笑顔が功を奏した事は

この世界に来てから一度たりとも無い

 

やっぱり今回も攻撃で出迎えられた。


「ギィギィーーー」


 近くにいた蜂人の一匹が反射的に槍を突いて来た。

腹より上の重要な臓器がある当たりを狙ってくる

哺乳類型の体の弱点の知識を持っているのか。


 俺は笑顔で槍を受ける。


例によってデビルアイで解析済だ。

回避の必要無し。


ガッ


全く刺さらない。

勢い余った蜂人は前のめりになる。


「ギ!?」


 最初が肝心だ。

俺は笑顔のまま、槍を奪い膝を使って折り、

次はその持ち主を、掴んだ場所から手あたり次第

脚 ブチッ

羽 ブチィ

最後に頭 ブチィィ

と引きちぎって行く。

 

「話し合いをしようじゃないか」


頭から顎を引っこ抜きポイ捨てしながら

笑顔で蜂人軍勢を見る。


「「ギィー」」


一斉に襲い掛かってくる蜂人軍団。


バカなのか


流石虫ケラ


「話そうっつてんだろがーー」


面倒なので首振り悪魔光線で一掃した。


ボボボボボボボンボン


記録的なコンボが決まったな。

変な匂いが辺りに充満してきた。

まさかこれが奴らの狙いか

沸騰した彼らの体液は強力な毒になるとか


クソ

俺は罠に嵌められたのか


しばらく様子を伺うが何も起きない。

考えてみれば当たり前か

光線で焼き払われる事を前提なんてするはずない。


 飛んで逃げている蜂人に

追撃の悪魔光線を放ち全滅させる。


しまった。

一匹ぐらい情報収集用に

取っておけばよかった。


まぁいいや

どうせこの後

お前らの巣に乗り込むからね

必ず見つけるよ

森の妖精はいつでもそばにいるんだよ


 蜂人を仕留め終えると

俺はベアーマン側に振り返る。


 彼らが身動きをしていないのは

完全膝カックン耐性で確認済みだ。


 振り返ると俺は唖然とした。

ベアーマンは全員、両手を伸ばして

仰向けに寝転んでいる


何してんの

やる気あんのかコラ

ふざけてんのか、ア?


 聞いてみれば絶対服従のポーズなんだそうだ。

勢いで悪魔光線を打たなくて良かった。


・・・打っても良かったかな

出展


恐怖のズンドコ  「恐怖のどん底」の誤用。とあるキャスターがやらかした。

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