第十八話
降臨の神託を受けた教会本部は神の保護の為
軍勢を率いた。
選りすぐりの聖騎士達と9大司教の「武」担当ヨハン
その補佐の神父数名だ。
両陣営の境目の山脈のひとつの岩山。
教会の修行の場でもあるその岩山が場所。
日時も決まっていたそうだ。
早目に到着し十分に警備をし、その時を待ったのだが
結果的に十分では無かったということだ。
降臨が始まると同時にそれは起こった。
悪魔軍団の襲撃である。
問題はその軍団を率いていた魔神二人。
魔王直轄の配下、13将の序列1位。
力の魔神「アモン」
同じく序列2位
技の魔神「ベネディクト」
力の1号、技の2号・・・・か。
人の対抗出来うる相手では無かった。
一体でも絶望的なのに、2体も同時に襲撃されては
流石の聖騎士達もなす術もなく次々と打ち取られていった。
「私は状況を覆すべく、禁断の秘術を相打ち覚悟で
相手の最大の戦力だった魔神アモンに放ち
見事これを倒した」
ん?
「しかし倒す間際、私はアモンに岩壁に叩きつけられ
重傷を負ってしまったのだ。持っていた貴重な
完全回復薬を使うべく必死に手を動かそうとしたのだが」
あーその辺から知ってるな。
「降臨された神に悪魔達は、もう取りつこうとしていた
急がねばならないのに手は思い通りに動いてはくれなんだ
遂には手から零れ落ち、もはやこれまでかと
諦めかけたその時、信じられない事が起きたのだ」
ここで話を一旦止め、考え込むヨハン。
「今でも信じられない。死にかけた私が見た妄想では
無かったのだろうか。確実に仕留めたハズのアモンが
無傷で近寄って薬を拾って私に手渡してきたのだ」
それなら、驚愕の表情も納得だ。
そら驚くわ
「私は悪魔にすがった。最早、間に合わない
私が拘束の秘術で悪魔を足止めしても神を
連れて脱出する弟子も聖騎士も一人も残っては
いなかったのだ。あろう事か私はアモンに
神を助ける様に頼んでしまった」
頼まれたよ。うん
「何故なのかは今でも分からない。ただあの時の
アモンの表情、あれは人だった。今しがた命の
奪い合いをしていた悪魔の顔とは明らかに違ったのだ」
違ったんだよ。
中身がね
「アモンは願いを聞き入れ、神をお連れになり
脱出をした。薬で回復した私は拘束の秘術で
命続く限り悪魔どもを足止めしたのだ」
そこでヨハンは俯くと力無く続ける。
「気を失うまで秘術を行使した。その後は分からない
私は森に倒れていたそうでなエルフに助けられた
この森のエルフには若い頃の知り合いがいてな
私の事を覚えていてくれたのだ・・・・しかし
神様がその後どうなったのか・・・・」
そこでヴィータが踏ん反り返り偉そうに割って入る。
「ご苦労じゃったのうヨハンとやら。」
ワケが分からないと言った顔をするヨハン。
「我が女神ヴィータじゃ。その後アモンは仲間に
傷を負わされながらも逃げのび力尽きる前に
この二人に我を託したのじゃ」
黄金の輝きを放ち出すヴィータは癒しをヨハンに
施しはじめた。下手に言葉で証明するよりも
この方が説得力があるだろう。
「おぉ、この力・・・これはまことに」
「本当にようやった人の身でありながら
あそこまで術を行使し、寿命を使い切らんとは
流石は大司教と言ったトコロかのう」
寿命を使い切る?
MP=寿命ってコトかよ
「お主はここで養生しておれ。聖都には
この者達に任せて置け」
「結局、私の判断は間違っていたな。流石は勇者様だ
ハンス、お前が来てくれて助かった」
「いいえ、一緒に行っていたなら私は既に亡き者であったでしょう」
首を静かに横に振るハンス。
何かを察したかヴィータの嘘に突っ込みを入れる様子は無い。
「・・・・少し眠る」
そう言うとヨハンは目を瞑り、直ぐに寝息を立て始めた。
素人目にも衰弱が激しいのが見て取れる。
ヨハンの邪魔にならないように俺たちは部屋を
そっと後にする。
俺は珍しく静かにしていてくれたプりプラを手招きし
二人から離れると、外の光が差し込む窓代わりの穴まで
移動する。
聖刻があるので離れたトコロでヴィータには筒抜けかも
しれないが、二人だけで話をしたいという意志は伝わるだろう。
何も言わずついて来てくれたプリプラに
俺は意を決して自分の仮説を話す事にした。
「プリプラ、お前はもう死んでいる」
「あたたたたたたたたたたたたたっ」
返事の代わりにプリプラはカン高い奇声を発し
攻撃をしてきた。
おい、この場合攻守が逆だぞ。