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第十六話

 エルフの里、手前広場に舞い降りると俺は人化した。

正直あのまま逃亡しようかと考えたのだが聖刻がある以上

逃げられはしないだろう。


 今回分かった通信機能、それ以外にもどんな機能があるか

分からない以上ヴィータに逆らうのは得策ではな無い。

 聖刻に神力を送り込み、俺を破壊する事も出来るのでは

ないだろうか。

 恐らく可能なのだろう、だから非力であるにも関わらず

こんな大それた力を持つ悪魔が近くにいても余裕なのである。


「はぁ。戻ってきちまった」


 パターン7でいこう。悶え苦しむのはナシの簡易版でだ。


 入り口付近にはあの見張りが居た。ただ初見の時に見た

包帯をしていない。

 見張りは俺に気が付くと、素早く竹もどきの伝声管に

何やら喋りだした。


「なんだ?敵襲ぅーとか言ってんじゃねぇだろうな」


 俺は念のためマスクを装着すると半人化した。

これならエルフが束になって襲い掛かって来ても

上っ面の皮膚しか傷つけることは出来まい。


 見張りが何かを伝えると、一斉に床を突き破りエルフ共が

降下してくる。それも大量にだ。

 ただ誰も武装していない。それどころか子供まで混じっている

むしろ子供の方が多いくらいだ。


 歓声。それも喜びの歓声だ。頭上の精霊の感じからそれは

伝わってくる。

 良かった。少なくとも今駆け寄って来るエルフには

感謝してもらえているようだ。

 ほっとした俺は一瞬で気分が良くなり叫んだ。


「3ねーーんBぃぐみーーーー」


 もみくちゃにされるタイミングで、そう叫んだが

誰も「金〇先生ーーー」とは言ってくれなかった。


 一通り歓迎された後、里に上るとそこではヴィータが

負傷者達に奇跡を行っている最中だった。

 ハンスとプリプラもその手伝いに忙しそうだ。

無事なエルフや回復を終えたエルフ達は祈りをしている。

今回の事件で信仰するエルフが大量に増えたようだが

里の治世的には大丈夫なんだろうか。

 

 夕刻から戦勝会と合わせた歓迎の宴を開催する事になり

その前に流れていた長との面通しになった。


 プラプリに案内されて、中央のひと際大きい樹木の穴へ

入っていく、中はいくつかの部屋に分かれていて

一番奥の部屋の前には長に付いていた二人の護衛がいた

 俺たちに気が付くとエルフ式の礼をし扉をノックする。


 返事が聞こえ俺たちは部屋へと促された。


「この度は里の危機を救って頂き誠に感謝の極み

里を代表してお礼を申し上げる」


 長は今まで見たエルフ式の礼に加え更に首を垂れる

ポーズを取る。最敬礼なのだろう。


 俺たちも同じ仕草で返す。ただヴィータだけはふんぞり返って

偉そうにしている。

 俺はヴィータの後頭部をふんづかまえて無理やり下げさせた。


 ハンスが一歩前に出ると、聖都への旅の途中である事、

必要な物資を分けて欲しい事、これまでの経緯を説明する。

 長は快く引き受け「里にあるモノ好きなだけ分け与える」と

心強い返事をしてくれた。


「当然じゃ我らがおらなんだら、全て奪われておったのだ

言ってみれば全て我らのモノになっていても」


 俺は「当然」の辺りでヴィータの口を塞ぐと「ありがとう

ございます」と大きな声を出し、その後のセリフ聞こえない様に

してやった。俺もそう思うが言わなくていい事だ。


 戦死者に関しては蘇生の軌跡を一切行っていなかった。


 死者蘇生は治癒よりも膨大な力の損失になる上、更に

この里のエルフには行えないらしい。


 魂が肉体から完全に分離してしまっているので肉体の

復元は出来ても目を覚まさない結果になるそうだ。


 この事に関して長は「フーム」と考え込んだ後

救世主御一行様という事で特別にエルフの生態を教えてくれた。


 それはエルフのイメージを根底から覆す

衝撃的な内容だった。


 死者の魂は里の柱にもなっている樹木の実に精霊が

連れて行く。実の中身はエルフの胎児だそうだ。

 強く希望していれば生前の記憶をある程度持ったまま

新生するらしい。


 里の柱は歴代の里長の成れの果てで、

里長は人型の寿命が来ると樹木化が訪れる。

これが何故樹木が規則正しく並んでいるのかの理由だ。


 樹木は一定の時期になると花を咲かせ、大人のエルフは

いわば花粉を皆でバラまくそうだ。


 つまりエルフには人間の言う男女間、親子間の愛情は存在しない

生殖器も存在していない、どこから花粉を出すのか

気になったが失礼な気がして聞かなかった。

 

 そう言う理由でエルフは死に対して、いや生に対して

人間ほど執着していない。悪い言い方をすると

気軽に死を選んでやり直しを行う。

 完全に自給自足で他種族との交流は必要無い。

取引が無いので店が無い、貨幣も無いのだ。

 長樹木から遠く離れる事は危険なので旅もしない。


なんてことだ


オークに襲われて、今まさに貞操の危機を迎えた

旅の美少女エルフをカッコ良く助け出し

背中から抱きしめて異国の言葉でささやいて

うっしっしな関係になるという

俺の夢が・・・・。


オークに襲われて、今まさに貞操の危機を迎えた

旅の美少女エルフをカッコ良く助け出し

背中から抱きしめて異国の言葉でささやいて

うっしっしな関係になるという

俺の夢が・・・・。(大事な事だった)



旅もしない。

聞くところオークもこの世界には居ないらしい

とどめは性別だ。長以外は立場的にオスだ。

長もメスとして活動するのは樹木化してからだ。

どうしてもなると樹木にぶっかけるしかないのだが

どうしてなの

悲しみが止まらない。


全ては幻となった。

俺の中の夢がまた一つ死んだ。


 先に来訪している長の友人の人族については

宴の後で面会する事になった。

なんでも床に伏せっていて、今は良く眠っているそうだ。

 宴の準備がそろそろ終わるということなので

話はそこまでで俺たちは宴の会場になる広場に向かう。

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