第十五話
「やりすぎじゃ・・・無駄に命を散らしおって」
女神はその美しい顔を冷酷に氷付かせ、そう吐き捨てた。
「見損ないましたよアモンさん。あなたはやはり悪魔なのですね」
神父は残念そうに下を向いたまま俺を見てくれない。
「・・・最っ低!」
エルフはゴミでも見るかの様に嫌悪を遠慮無しで顔に出す。
狼狽える俺。
「なんだよ。命がけで頑張ったのに、なんだよソレ
見るな・・・そんな目で俺を見るな・・・・・・・
うわぁあああああああ」
ボヤを消火し終えた俺は一人、森の中で練習する。
予想される皆のリアクションに対して最適解を模索中だ。
今のはパターン1【予想外】だ。
「・・・・うわーの声がちょっと裏返ったな」
消火作業をしている内に自分のした事の重大さに
気が付き青くなっていた。
「やべぇ・・・・どう見てもやりすぎだ」
ジェノサイド。
それもあっという間だ。
もう武器のレベルじゃない兵器クラスだ。
圧倒的な差があった。
虐殺しなくても気絶とかさせて
改心させ味方に・・・・無理。
あれだけの数をいちいち手加減して気絶とか
現実的じゃない。
まず、ベアーマンが生理的に無理。
文明も土人レベルだろうし信仰しそうもないし。
味方にするメリットは無いな。
そもそも攻めてきた理由はなんだ?
エルフの方が悪だった場合は?
俺のした事は悪いコトになってしまわないか。
なんて事だ
これじゃ俺はまるで悪魔じゃないか。
悪魔か
いいのか
いや、待て
んーーー善悪はこの際いいか
味方にエルフがいて、その村が襲撃されたのだから
身を守っただけだ。
殺しに来ましたけど反撃しないで下さい
そんな理屈が通るハズがない。
うん
今回は防衛戦だったんだ。
それに「やれ」って言ったのヴィータだし
・・・これだ!!
パターン2【なすりつけ】
早速、練習しよう
「オ・・・俺は嫌だったんだ。こいつがやれって言ったんだ
見てくれこの刻印を俺は逆らえないんだ。俺は操られていたん」
ダメダメダメ
カッコ悪いにも程がある。
・・・・。
あんだけ強いのに
このダメダメさは逆に恐怖を与えるか・・・。
いやダメだ。パターン2は却下。
次、行ってみよう
パターン3【放心】
「目標をセンターに入れてスイッチ・・・・目標を」
痛い痛い痛い。うわー、これ扱いに困るだろ。
幽閉されそうだしノーマルに戻るタイミングも難しい。
ウーン保留。
次、パターン4【覚醒】
「フハハハ!!これが力か!僕はこの世界の神に」
いるいるいる。神もう居るし
松田に撃たれそうだし
絶対バットエンドしか待ってないぞコレ
はいダメー
次いってみよー
パターン5【不敵】
「んー?お前は今まで食ったベアーマンの数を覚えているのか」
食わねえよ誰も
怖いよ
〇安だよ
その時点でダメだよ
んーでも個人的には有りだな
保留っと
次、パターン・・・・いくつだ?あっ6だ【冷酷】
「・・・依頼を遂行したまでだ。」
いいねー
カッコいいねーコレ
なんかプロって感じがバリバリする。
人によって引きそうだなー
でも今までの中では一番イイぞ!
パターン7【呆然自失】
これが実質一番の候補だ。
俺じゃない。憑依したナニかの意志だという事にしてしまう。
人間状態なら安全ですよと思わせる。
パターン7の利点は仲間の3人以外のエルフ達に効果的な事だ。
「これは・・・俺がやったのか?!」
更に降臨の後遺症に襲われるアモン。
激痛が襲う。
という演技。
「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛」
もう藤〇竜也みたいに悶え苦しむ
「な゛ん゛で゛だ゛よ゛ ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛」
地面に転がり
靴を片方脱いで手にハメ
顔に押し当てグリグリ動かす
踏みにじられているのだ
「僕ば悪魔ぢゃな゛い゛。信じでぐれ゛よ゛ー」
『何を独りでコントをやっておるのじゃ。
終わったのなら早う戻ってこんかー』
腕の聖刻がチクチク痛むと同時にヴィータの声が聞こえた。
「えぇ?ナニ聖刻ってそんな機能あるの?
もしかして全部聞こえてんの?」
『我のオススメはパターン5じゃな。別に2でも良いぞ
確かに命令したのは我じゃ、責任は我にある』
やばい、本気で恥ずかしい。
『・・・心配しとるような事態にはなっておらん
胸を張って堂々と戻って来い』