第十四話
4m級悪魔
爵位を持ち、魔王の次くらいに偉いらしい。
この姿で力を使うとヴィータにダメージが入ってしまうので。
村の端、ベランダ状になっている場所までゆっくりと滞空して移動する。
伝令が降下し前線から兵を撤退させるべく先行して走っていく
陣形は即座に防衛体制にシフト。
負傷した者を抱えてエルフは次々と戻ってくる。
追撃してくる相手は余裕で悠々と歩いて進軍してくる。
やがて、そいつらは姿を見せた。
ベアーマン。
そのままだ。人型のトカゲがリザードマンなら
そいつらは、まんま人型の熊だ。
熊よりも人型なので、脚は長めで上半身はいかつい
なで肩で無くマッチョだ。
身長は3m前後、俺の胸辺りだ。
全身黒い体毛で覆われ、首の下辺りだけ白い。
顔はどちらかと言うと熊よりハイエナっぽく見える。
下等な文明を持っている様で、粗末な防具を身に着けている。
両手の先から伸びる三本の爪が主な攻撃手段なのだろう。
武器を持っている者は少数だった。
村の正面、家などの材料になったのだろう
木々がそこだけ伐採され、ちょっとした広場になっている
そこに俺は陣取り腕を組んで待ちベアーマンと対峙した。
「ツァ!」
俺に気づくと警戒するするベアーマン。
4mの見たことも無い生き物がいるのだ。
まぁ普通警戒するわな
「ヅァツアァ」
「ツァッ」
俺に向けて喋っているのでは無いので翻訳されない。
どっちしろ何を言っても関係ないけどね。
4体のベアーマンが俺を十字に囲む様に包囲した。
「小梅の代わりに聞いてやる。プリプラをやった奴は
この中にいるのか?」
ベアーマンの三本の爪。
その幅は修復した服のキズの間隔と一致する。
「ヅァアアア!!」
返事の代わりに攻撃してきた。
正面の奴が切りかかると同時に左右と背後の奴も
同じように爪を振りかざしてくる。
破壊力とは重さだ。
同じ材質で構成されていても軽自動車とトラックでは
どちらが潰れるのか考えるまでもない。
自在に落ちる事が出来る俺は破壊力を上乗せし放題だ。
だが弊害として速度が落ちる。
当たらなければ意味が無い。
当てる為には相手より速い方が望ましい。
なので初手は譲る。
優位を保ったままどこまで重くするか判断するためだ。
ベアーマンの破壊力はデビルアイで解析済みだ。
鋼鉄を上回る悪魔の体にキズを付ける事は出来ない。
どんなに力を入れても爪の方が先に壊れるだけだ。
・・・・にしても遅い。
まだ相手の攻撃が届かない。
悪魔状態の俺の思考速度、反射速度はハッキリいってチートだ。
・・・いいや、もう
左右の敵には拳で、背後は足を後方に蹴り上げ
正面は無視、当たるに任せた。
相手の爪はまるでスナック菓子の様だ。
モロすぎる。
拳は爪を抵抗無く砕くと
そのまま相手の腕の骨を破壊する。
肩をライフルで打ち抜かれた様に左右のベアーマンは
まるで鏡写しの様に同じタイミングで後ろに飛ばされていく。
股間を跳ね上げられた後ろのベアーマンは
俺の背中から発射される様に正面で待機している
軍団の中に高速で突っ込んでいく。
何匹かがその飛んできたベアーマンの犠牲になったようだ。
ボーリングのストライクみたいに舞う。
踵を後ろに跳ね上げた事により俺は前傾姿勢になる。
丁度、正面の奴の爪が頭に当たり爪は砕ける。
力のベクトルが上から下方向だったので
そいつは手首まで砕かれただけで済んだようだ。
「ヅァアアアアアア!」
変な方向に曲がった手首を押え膝を着く正面のベアーマン
顔も短い毛で覆われているので表情が分かりにくいが
まぁ恐怖しているのだろう。
「何だ・・・お前は何者だ」
俺に向けた言葉なので今度は翻訳された。
「俺か・・・」
俺は不敵な笑みを浮かべていった。
「俺は森の妖精だ」
「はぁ?」
「はぁ、じゃねぇ!!妖精だー」
人をバカにしたような変な顔しやがって、瞬間で怒り沸騰した俺は
正面のベアーマンをお試し最大値で蹴っ飛ばしてみた。
ボーーーーン
蹴った俺がビックリする程の大きな音を立てて
そいつは消えた。
飛ばなかった。
リア充でも無いクセに爆発しやがった。
急激すぎる圧で直撃箇所は一瞬で気化の更に上の段階
プラズマ化しやがった。
プラズマ化を免れたが部分は急激な膨張を
パワーリソースにして細かな炎弾となり
360度方向に散った。
被害は甚大だ。
周囲のあちこちの枝が音を立てて落ちる。
正面の待機している軍団も体のあちこちに穴が開き
倒れたり。失敗したバク転みたいになったりしている。
後ろのバルコニーからはヴィータが「バッカモーン」と
怒鳴っている。被害がいったようだ。
だがちょっと待って欲しい。
一番近くにいた俺が最大の被害者だ。
細かい破片が大量当たり
「熱っ熱っ」
と、踊ってしまった。
ふざきんなよ普通爆発とかするかよ
悪魔化した俺にダメージを与えるとは
おのれベアーマン
許さんぞ。
目にでも入ったら大変じゃあないか
「森を荒らす者は許さない!」
まーた、変な顔で俺を見やがって。
「俺は森の妖精ーーーーっ!」
皆殺しだ。もう
鋭いダッシュで軍団に飛び込むと
一見すると物理法則を完全に無視した
減速無しでジグザク一人きり走行。
手あたり次第、殴りつけ(弱で)ていく。
ベアーマンの戦線はあっという間に崩壊した。
散々と敗走を始める。
最初は一々追いかけて倒していたのだが
段々面倒になって来たので、途中からは悪魔光線で
始末していく。
最低値、これ以下だと発動しないレベルで放ったのだが
それでも推定6000度はあるので、次々と爆散していく。
正面の部隊を壊滅させると瞳閉じて翼を広げ
会いたいのに会えない包囲していた軍勢の始末に入る。
包囲していた各部隊は皆、正面の部隊の惨劇を知り
早々に退散を始めていた。
所詮ケダモノか
駆けつけて正面の部隊を助けるとか
一気に村に突入してヴィータを人質に取るとか
すればいいものを
そうすれば捕まりながらも「私に構わず撃てーー」とか
叫ぶヴィータもろとも消し去る事が出来たのに
ま
させないけどね
完全膝カックン耐性のレンジを目一杯広げていたので
部隊の動向はお見通しだ。
敗走する部隊の上空まで来ると
「森のーぉ」
俺は声を張り上げ
「妖ーー精ーーー!」
上空から悪魔光線で片づけていく。
全滅まで30分程度で終わった。
むしろ、引火してしまった森の消化の方が
時間が掛かった。
森の妖精が森を焼いちゃいかんだろ。