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第百二十話

[審判の日]

そう呼ばれるのはゲーム内だけで

あの大虐殺がこちらではそう認識された。

これから起こるのは「降臨際」と呼ぶそうだ。


昼間は盛大なパレードと

教会による発表が行われた。

残りの9大司教の同意を得たパウルが

遠征から戻り次第セドリックの父を

新たな帝王にする事。

セドリックはガバガバと正式に婚約

ベレンを新たな聖都にして

暫定として首都機能を代行し

新帝王の元、バリエアを復興する計画。


「だってさ」


昼間の盛大なパレードに合わせて

街道では大量の出店が連なった

俺は見た事も無い食い物を適当に

見繕って土産として持ってきた。


「ふーん。聞くと、なんか普通だね」


カルエルは必要では無いが食事は可能なので

二人で木に持たれながら

適当に食い漁った。


「そういえばお前、お呼びとか掛からないの」


「無いねー忘れられているみたい」


カルエルは笑顔だ。

まぁその方が好都合だな。


「なぁ・・・終わって即、電源落ちるかな」


「いや、しばらくは経過を見ると思うよ

その、しばらくがいつまでなのか

全く分かりません」


だよなぁ


夕暮れが辺りを支配し始めた。

これからは闇の時間だ。


「じゃあ、そろそろ行くわ」


「頑張ってね」


『まったねー』


いや、最後のお別れのつもりなんだけど

まぁ小梅だし、しょうがない。


逢魔が時が過ぎ、夜の闇にベレンは包まれる。

それを拒むように、この都市は明りを灯し

闇に浮かび上がっている様に見えた。


眼下には、まだ惨劇の跡が痛々しいエルフの里。

後方には灰の砂漠と化した東の地。

遥か先の前方にはぬかるみ、塩にやられ

枯れ始めた木や植物たちが目立ちはじめた

バリエアの地。


審判の日がスタートした。

俺はベレンに向けてゆっくり飛行する。

水色の光と赤い光を左右に従え

ベレンの教会前広場に黄金に輝く

ヴィータがどんどん巨大化していく

半透明で外郭が黄金に輝いている。


すんげぇでかい

高崎に来たのかと勘違いしそうだ


俺は「ヒーローの歌」を

高らかに歌いながら三つの光に

接近していく。

死なない程度のオーラも開放。

その歌声とオーラにベレン市民の

恐怖が流れ込んでくる


おれはジャイアンかよ


俺目掛けて水色の光が先行して来る。

四大天使が一人・愛と水のブリだ。


良かったー

ミカが先、あるいは両方同時だったら

キツい戦いになる所だった。


「もーっやっと来たぁ」


青い髪はショートボブ

タレ目で若干丸顔

幼い顔立ちに似つかわしくない成熟したボディ

もう、狙い過ぎで引くデザインだわ。


「ウルぽんとラハっちの仇っーー」


その呼び方はどうかと


「食らえっー神槍メイサラティ!」


専用武器である三又の槍を構え

無防備に突っ込んでくるブリ。

聖核を隠す事もしていない。

デビルアイで胸の中央にあるのが見えた。


無防備なのには理由がある。

ゲームの設定では

こいつには物理攻撃無効だ。

簡単な話で全身水なのだ。

隠していない事から聖核も

物理攻撃では破壊出来ない。

熱による攻撃も蒸気に状態が変化するだけ

なので一時的な足止めにしかならない。

ゲームなら魔法職の出番なのだが

この世界には魔法が無かった。

そういう理由で防御しなくて良いのだ。


こいつの為に穴掘り作業した。

俺はバケツ(蓋付)を強くイメージして

変化し突っ込ん出来たブリを収納する。

飛行の為に背中の翼はそのままだ。


蝙蝠の羽を生やした巨大なバケツが

「勝った」と笑いながらベレンの

空を舞う。


「槍がああああああああ」


神槍で内側から突かれるのは

マズいので閉じ込める際に

蓋で腕を切断しておいた。

切断面は水しぶきになるんだな。


穴掘り作業は

地下に巨大な鉛蓄電池

要するに車のバッテリーだ。

ガラスと鉛と希硫酸で準備しておいた。


罠のポイントに急行し着陸すると

俺も内側をガラスでコートし

電極をブリの聖核に刺す

地上スレスレまで伸ばしておいた

罠の電極を結合した。


ブリの聖核はあっと言う間に

酸素と水素に分かれ力を失う。

ブリの身体はただの水になった。

こうして一瞬で

天使を捕えた悪魔ではなく

水を入れた巨大なバケツになった。


すかさず、バケツ形態から

デフォルトサイズに戻る。

ミカは俺を襲撃するよりも

別の事を優先していた為

襲われる事は無かった。


バケツ形態で死亡という

最悪の最後だけは避けられた。


で何を優先していたのかと言うと

武器の回収だった。


ヴィータの保護じゃないのね。


パウルに根回ししておいたのが

功を奏した。

適切な避難誘導が行われているのだろう

罠ポイント周辺には民衆がいなくなっている。


ミカは拾った槍を空に翳すと

槍の先に光の輪が出来、槍はそのまま

輪の中に入っていった。


この世界から完全に消えた。

じょうろを作成した時と似た感触を

感じる。これは天界に戻したのか。


歩くのが面倒くさいのか

地上スレスレを滞空しながら

ミカは無防備に俺の方にやって来る。

160cmくらいの人間サイズだった。

俺も合わせて170cmサイズになる。


「ウルとラハを倒したのもお前か」


感情が読めない。

単純に質問しているように思える。


「ああ、それがどうした」


俺の返事を聞いたミカは拍手をした。


「すげぇ!天使長クラス3体なんて記録だよ」


挑発でも嫌味でもない

純粋に新記録を賞賛しているように見えた。


「今回の12将はやるねー」


情報が古いな

教えてやってもメリットが無い。

「まあな」とだけ言っておいた。


四大天使の最高位・天と炎の天使長ミカ

はっきり言ってこいつにはお手上げだ

アモンの天敵といっていい。

力を開放した状態だと

炎のボディになるので物理攻撃が効かない。

開放前にダメージを与え得ても

開放と同時にチャラだ。

聖核も炎なのでどうにもならない

外の酸素を頼っていない

核の内側から天界由来の酸素で

燃えているので水中だろうが

宇宙空間だろうが燃焼がストップしない。


アモンでは勝ち目が無いのだ。


そして攻撃は俺の身体を構成する

金属粒子を気化できる高温が出せる。

専用武器・炎の剣の一振りでお終いだ。

ただ

ここで使えば市民も無事じゃ済まない。


「まぁ僕が勝つ事に変わりは無いんだけどね」


急につまらなさそうになったミカ。

例の変な感触、俺の頭上が光った。

即座に光の照射範囲から逃げようとしたが

力が入らない。

ヨタヨタする俺に鎖の束が襲い掛かって来た。

まるで意志をもった生き物のように

鎖は俺の四肢に絡みつく

らめぇ

あ、力が全く入らない。

これはアレですわ。

以前ヴィータに使用されたアイテム

それの対魔王用ですわ、あかん


実に簡単に拘束されてしまった。


「ぶっ殺す前にききたいんだけどさぁ」


「何だよ」


首から上は多少動くが

悪魔光線は出せない

体内の圧を上げられない。

会話程度しか出ないなこりゃ


「ウルの武器が回収出来て無いんだけど

どこにやったの」


「さぁ、宇宙の何処かを彷徨ってるよ」


先程も俺への攻撃よりブリの武器回収を

優先していた。

ウル・ラハ戦も追撃より

奴らの武器回収を優先させていたって事か

この世界に残すのは都合が悪いという事だな。


「そうか、じゃあいいや。殺してお終いね」


訂正

人間の手に渡らなければOKっぽいな。


動けなくなった俺をミカは

デビルアイの天使版で見ている。


「あれ?核がみつからない。どこ?」


「さぁどこでしょう」


「ああ、いいやもう面倒くさい」


そう言うとミカは右手に専用武器

炎の剣「レイバーン」を生成した。


「全部、燃やせば一緒だよね」


なんて短絡的な奴だ。


「待て、ここでそんなモノを使えば

ベレンだって無事じゃあ済まないだろ」


失敗した。

それで思いとどまる奴じゃないな

大陸半分焼き尽くしても

何にも感じて無さそうだし


「まぁ、人間はここだけじゃないし」


やっぱりだ

完全にゲーム感覚だ。


ミカの剣に炎がまとわりつく

ガバガバの剣が可愛く見える程の

凶悪な聖属性だ。


チャージしていなくとも

一都市ぐらい焼くんじゃないかコレ


「はいお終い。」


そう言って剣を振りかぶる。


動けないし

これは詰みだな。


「ばっかもーん」


ヴィータの声が響く。

ふと見上げれば巨大ヴィータは

外郭が適当になって崩壊し始めている。

足元の本体が離れたせいだろう。


 アスリート系の見事な走りで

俺達の所に見る見る迫って来た。


走りながらドレスのスカートに手を

突っ込み鎖を引きずり出すと投げた。


ミカ目掛け鎖の束が襲い掛かって来た。

まるで意志をもった生き物のように

鎖はミカの四肢に絡みつく


「らめぇ!」


俺達は並んで拘束された。

なにコレ

二人とも動けない

なんて情けない最終決戦なの。


俺達の元まで来るとヴィータは

ミカの剣をあっさり奪い取り

光の輪出すと、そこに放り込んだ。


「あー何てことすんだ。駄女神」


「プギャーざまあ」


拘束された二人はもがきながら

それぞれ悪態を晒す。


「くっ、この事はエグザス様に

報告するからね駄女神一人で

怒られてよ。審判途中放棄とか

折角の勝ちが台無しだよ」


「ほぅ、エグザスの命令で

ミカ嬢は動いておったという事か

よかろう、ならば我はユノに

キッチリ話をつけるでな」


丁度いい

俺にも文句がある今言おう。


「おい、ヴィータ。俺のどこが

こんな短気で見境の無い阿呆と

似てるっていうんだ」


「はぁ、僕がお前に似てるって?」


「「全然、似て無いよ」」


おい

被らせてくるな。


「アモン、今縛を解いてやる」


「おぉ頼むわ」


「そうはさせないよ」


ミカはなんと鎖を強引に引きちぎった。


「ばっバカな?!」


驚くヴィータにミカは解説した。


「これ一回使ってるでしょ」


使用する度に効力が落ちるタイプの

アイテムだったのか。


「それに今の僕は通常より強化されてる」


急いで俺の鎖を解く為

駆け寄ろうとするがヴィータは

水の球体に取り込まれて浮いた。


「なっ?これはブリの技では」


まとわりついた鎖を適当に解くと

そこら辺に捨てるミカは

続けて解説した。


「先に退場した3天使分の力も

流れ込んでいるからねぇ。ふふ」


あれか

どの順番で倒しても

残ったのが強化される仕組みか


「神殺しをする訳にはいかないからね

そこで見ていてね駄女神」


水球の中で黄金の輝きを放ち出す

ヴィータだが水の膜で中和されている

感じだ。


「本来は守りの防壁なんだけど

無茶しないでね。中で暴れれば

ケガするよ」


赤いオーラを纏い出すミカは

俺の方に振り返り言った。


「更にはエグザス様からも助力して

頂いているからねー。最強だよ」


神力を見る見る上昇させていく

力でゴリ押しする気だ。

・・・もしかして俺と似てるのか?


「今の僕は何だって出来ぃるさぁ!」


拳を構えるミカ。


この緊張の場面に

全く似つかわしく無い

カワイイ声が響き渡った。


  いいぜ ヘ(^o^)ヘ

        |∧

        /

その少女は突然俺達の前に出現した。


てめえが

何でも思い通りに

出来るってなら

         /

      (^o^)/

     /( )

    / / >


顔を真っ赤にして

目には涙を浮かべている。


   (^o^) 三

   (\\ 三

   < \ 三


そんなに恥ずかしいなら無理に

やらなくていいんだよ。


`\

(/o^)

( / まずは

/く そのふざけた

   幻想をぶち殺す


最後までやり切った。

律儀なゲカイちゃんである。

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