第九話
服を脱げと言われた小梅は後ずさり。
真剣な眼差しで力強く答えた。
「ダメだよ。太郎を裏切れない」
ぁスマンそういうんじゃない。
「私・・・私、そんな足軽女じゃないもん」
転生したら足軽女だったのでイケメン上様を将軍にさせてみました。
なにソレ面白そう
次回作はソレでいこうか。
「尻軽って言いたかったのか?そう言うんじゃなくて」
また嫌な仮説が思い浮かんだが考えない様にしよう。
「服が背中、スゴイ破損しているんだ。さっきの要領で直すよ」
首と両腕を回して背中を確認する小梅。
「嘘ヤダ!なにコレー!!最低」
気が付いた様だ。
慌てて木の反対側に回ると服を脱ぎ始めるが
かなり手こずっているようだ。
「お、あくしろよ」(オゥ早くしろよ)
自分で着たワケじゃないしな。現代の服とは勝手が違うだろうし
俺は全裸スタートだから分からない苦労だ。
小梅はギャーギャーいいながら、俺の予想した通りの
答えを喚いている。
「終わるまでは、コレを羽織っておけ」
俺は服の上着を脱いで、小梅が隠れている木の枝に引っ掛けて置く。
予想通り脱ぐ際に痛みは無い
待っている間に悪魔化する。人化状態だとまだ悪魔の力を
コントロール出来ないのだ。
悪魔化してから先ほどの木の枝辺りを見ると
服は残っていた。悪魔化と同時に消えるかとも思ったのだが
分離した時点で体の一部では無くなる様だ。
服は消えずに枝に引っかかている。
これを繰り返せば服を大量生産できるのではとも考えたが
いや最小限にしておこう。
もしかしたら俺自身が減っていくなんてオチじゃ困る。
脱ぎ終わった服を持って木の陰から小梅はでてくる。
服を畳んでいる辺りは好感が持てるが。
それより早い方がいい。
小梅から服を受け取ると俺は早速修理に取り掛かるが
服の修理は想像以上に難航した。
「お、あくしろよ」(オゥ早くしろよ)
ここぞとばかりに小梅が逆襲をしてくる。
「すいません。今しばらくお待ちください。」
俺は鼻をほじる仕草をしながら答えて置いた。
服の修理は金属とは勝手が違った。
熱してくっつけるワケにもいかない、燃える。
元は生物なので単一素材で出来ているワケでないので
うまく操作出来なかった。
ぶっちゃけるとくっついていない。
繊維の切れ端を絡めて胡麻化しただけだ。
なんとか服の修理が終えるが
ダメだこれは
服の修理はこれからは止めよう。
小梅は服を着終えると、くるっと一回転ターンする。
「どぅ、変なトコ無い?」
よく見ていなかったが「大丈夫だ」と言っておいた。
小屋に戻ると二人はまだ起きていた。
打合せ通りの説明をするとヴィータは言った。
「ダメじゃ。元の所に戻してくるのじゃ」
捨て猫かよ。
俺はヴィータを無視してハンスにエルフの村の所在地
それを知っているかどうかを尋ねる。
「大体の場所は分かりますが、行った事は無いので
キチンと案内できるか保証はしかねます」
ヴィータが横から口を挟む。
「近くなんじゃろう。お主が担いでひとっ飛びしてくれば
よかろう」
それを言われて思い出した。
今夜の飛行訓練の目的であった事だ。
「なぁ担いで飛ぶって話なんだが、4m級のデフォルト悪魔なら
3人位担いで余裕でイケるぞ。一気に聖地まで」
「あぁ・・・説明しておらんかったの」
ヴィータた額に手を当て、立ち上がり考え込んだ様子で
ウロウロし始める。
「少し長くなりそうじゃ・・・プリプラとやらは
食事しながらで良いぞ」
ハンスが腰を上げ、木を削りだして作った、フタ付きの大皿を
部屋の隅から持って来る。
あざと・・・可愛らしい仕草で受け取り礼をするプリプラは
早速パクつき始めた。
「結論から言うと、それは出来ん。我が消滅する。
神側と悪魔側、恒久的に同時に存在することは不可能なのじゃ
エネルギー交換・・・というよりは対消滅じゃな
それが起こる。」
見た目には10歳そこら、声も舌足らずで幼さ全開の
ヴィータがなにやら難しそうな単語並べ始めた。
実にシュールだ。
「正確では無いがの、分かりやすく例えるなら。
氷・水・蒸気かの。氷が悪魔のエネルギーで存在の力とする
同じように蒸気が神とエネルギーで存在の力とする
まぁ水はこの世界、人間界じゃな」
「んぇーコレ何のおにふー」
「これら二つが一つ所に存在すると互いの熱が消耗しどちらも
水になってしまう。神も悪魔も失われるのじゃ。
まぁ人間界そのものが太古の昔に神と悪魔の戦の傷跡じゃ」
「結構、固いんでふけどぉー」
「それ以降は互いに人間界を通過せねば相手側に行けなくなった
しかし、水を通過した蒸気は力をほぼ失ってしまい微々たる量で
氷の世界にたどり着けたとしても力の差は歴然
たちまち氷付かされてしまう。行く事はできぬ」
「パンとか無いのー」
「しかし、それは悪魔の側も同じ理屈。では残りの総戦力で水を
舞台に戦をしたとしても大量の水を生産し僅かにどちらかが
勝ち残るだけ、しかもその残り僅かが水になってしまうのも
時間の問題というワケじゃ。」
「お水下さぁーい」
「そこで始まった戦いが、水を蒸気にして
戦力の強大化を図る。相手はその逆
水を氷にしおて戦力の強大化を図る。人類の獲得じゃ」
「氷は無いよねーやっぱり」
「神は人類に救いを施し信仰を得る。
悪魔は人間の欲望に漬け込み魂の獲得に乗り出した。
相手を圧倒敵に凌駕する力をため込む戦いにシフトしたのじゃ
此度の降臨も、その長い戦いの一環じゃ」
なんか、さらっと凄いネタバレしてないか
もう最終回近いのか?
「我の今のエネルギー蓄積量では、お主の悪魔エネルギー放出に
長時間は耐えられんのじゃ。聖刻が奇跡的に成功したものの
ハンスの近くまでが耐久の限界じゃった。今は少し蓄積したが
抱えられての飛行は無理じゃ」
「すいませーん。お醤油とか無いですかぁー」
食ってていいとは確かに言ったが、こいつ本気で食ってるだけだ。
聞いちゃいねぇ。
「無い。無理に食わんでもいいぞ。」
かなり口の周りを汚したプリプラは諦めると
また肉にかぶりつき始めた。
「じゃ女神様以外でひと飛びしゅれば」
「食いながら喋るな。それに本末転倒だ
お前、注文した商品忘れた宅急便のアンちゃんに
玄関まで来られても意味無いだろ」
「飛ぶにしてももうちょい信者が大勢いる地域で蓄積しぇんと・・・・。」
いつの間にか肉にかぶりつき始めるヴィータ。
「まだ食うのかよ」
「あの・・・アモンさんとプリプラさんお二人だと
特別な言語で話されるのですね」
そう日本語です。
話しかける相手の使用する言語で自動で発音してしまう。
意図的に操作出来ない。
変な勘繰りをさせてしまいそうだ。
「話やすいので、ついな。全員に話す時はちゃんとするから」
ハンスの疑問は適当に流そう。
説明を求められても、これ以上は無理だ。
エルフは無宗教なのでエネルギーの補充が出来ない。
そう言うヴィータをハンスは旅の為の物資が心もとないと言う
理由で説得させた。
明朝出発だ。
陣形は
前衛 俺
中央に保護対象のヴィータで護衛に俺
後衛 俺
ハンスは祈り担当
プリプラは笑顔担当
と、言う事になった・・・。
どこに立ってればいいんだ俺。
明日考えよう。