入学
少年、一夜快は今日から高校一年生だ。そして九時、入学式が始まった時。一夜はまだ家で気持ちよさそうに寝ていた。
~五分後~
「ヤッバイ、やらかした。」
一夜は時計を見ながら無意識下にそうつぶやいていた。デジタル時計には九時五分と表示されている。数秒固まった後に時計を布団に投げ、昨日たたんでおいた制服に手を伸ばし素早く着替える。着替え終わったのが九時七分。自転車で家から学校まで飛ばして十五分程度だが時間が時間なので焦って鞄を取り、母親から高校の入学祝いで買ってもらった通学用靴を履く。
そして靴を履き終わらないうちに家のドアを閉め、鍵をかける。
(マズイ。両親に無理言って始めた一人暮らしの七日目で早くも寝坊、しかも学校の登校日とは)
そんな事を考えながら、出せる限り最大限の速度でアパートの階段を降りる。そして降りたときの速度を維持しつつ、近所の駐輪場に向けて走る。駐輪場に着くとカラビナで家の鍵とつなげてある自転車の鍵を取り出し、自転車のチェーンに鍵をさす。一回捻ると“カチッ”と言う音を立ててチェーンが外れる。そしてチェーンと鍵をつなげたまま鞄の中に放り込む。そして自転車にまたがり、全力でこぎ出す。
昨日の雨のせいか桜は全部散ってしまっている。時折見かける水たまりには、茶色くなった桜の花びらが見える。来年は咲いてるといいなと思いながら、こぐ足によりいっそう力を入れる。
学校に着いた時、学校の時計の針は九時二十五分を指していた。予定表ではもう入学式は終わり、各々がクラスで自己紹介などをしている頃だ。そんな時、一夜は学校の駐輪場に自転車を駐め、下駄箱前のクラス表で自分のクラスを確認していた。どうやら「1-4」が自分の組らしい、そう思った一夜は右下に書いてある本校舎四階という文字を頭の中にメモする。そして下駄箱で問題発生。どれが自分のロッカーなのか分からないのでひとまず靴は鞄にしまい、鞄から上靴を取り出して前方になげる。そしてダイナミックにジャンプして上靴を履く。そして階段を二段飛ばしで駆け上る。四階についても足は休めず、むしろ速さを上げて廊下を爆走し「1-1」「1-2」と順に教室を通り過ぎる。そして「1-4」の札が見えないまま突き当たりが見えてくる。直感的に右に曲がったが、その際に「キイィーー」っと上靴から本来でてはいけない音が聞こえてくる。このスピードのまま教室に入ると危ないなと思い、速度を少し落として「1-4」という札がある教室を発見する。ドアの手前で一旦立ち止まり一息つく。寝起きから止まらずに走り回っていたため、持久走をした後のように肺が痛む。すこし息を整えた後に教室のドアを開ける。
「スミマセン、遅刻しました。」
恐らく担任の先生と思われる小柄なポニーテールの女性にそう言う。するとその女性だけでなく、クラスメート全員までもが一夜を見る。クラスメート達の顔を見渡したところ知り合いはいない。少しがっかりしていると、担任?がこちらに近づき
「君が一夜くんね、今は怒らないでいてあげるから早く席に着きなさい。」
と女性にしては低めな声で促され、促されるままに前から二番目で一番廊下側の空席に座る。すると横の席の童顔でツインテールの女子がこちらを見て小声で
「私は江野空良。よろしくね、えーっと一夜君?」
と軽い自己紹介と挨拶をしてきたので、こちらも慌てて返す。
「よろしく江野さん」
すると先生がこちらを向き、目で二人に「黙れ」と言ってきたので、二人はすぐに押し黙る。
「え-、私の学級では自己紹介の時間を設けないので、各自てきとーに済ませておくように」
と先生が言う。すると江野さんが
「先生の名前ってなに~?」
クラスメート全員が先生が怒ると思ったのだが
「吉沢恵」
と以外にも先生が答え、聞いたクラスメート全員が驚く。その後、先生は早めに解散といって今日は下校することになった。解散後はコミュ力が高い江野さんからクラスの男子や女子などを紹介してもらい、入学早々クラスメート全員と知り合いになれた。一夜が家に帰ろうと下駄箱の方まで行くと吉沢先生に捕まってしまい、15分程度叱られた。その後、ロッカーの場所を教えてもらい帰された。
駐輪場に行き、
どうも矢野です。
もう一つのトシデンセツの裏話かなにかになると思います。
あと、変更予定があるので何回か見た方が良いと思います