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お侍さんの異世界転移 ~奇跡の刀と記憶の断片~  作者: TAKUTOJ
1章:木の刀と獣人村の用心棒
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赤と緑、と相場が決まっている

このページを開いてくださりありがとうございます。

「先生はなんで道場をやってるんですか? 初代様なんですよね?」

 唐突な少年の問いにも男は眉一つ動かさない。縁側で足をぶらぶらさせている少年の横に座り、男は庭園の石段を見つめた。


「まぁ、ここが開業したての新興の道場であることは間違いないよ」

 すっと左手を少年の頭に載せて男は誇らしそうに続けた。


「なぜ道場をしてるのか」

「はい」


 自分がした質問を男は繰り返した。答えてもらうために少年は頷く。頭にやられた手の感触が温かくて、少年はくすぐったくなった。

 少し溜めを作ってから男は真面目な顔でこう言った。


「それはね……」


 ごくりと少年の喉が鳴る。


「わたしが強いからだよ」


 ポカンとした少年の見上げる視線の先には悪戯が成功した者の顔、勝利者だけが許される誇った者の顔があった。




――――――




「もう……化かしあいは始まっているのか……?」


 京之助である。



 森の中を歩きに歩き、ようやく辿り着いた村は、今まで歩いてきた森とは一線を画す竹林の中に作られた村だ。うっそうと茂っていた森は、やや等間隔に見える竹林へと姿を変える。陽の光が入り込み、明るさを取り戻したような感覚にとらわれた。京之助は少しの眩しさを、目を細めることで歓迎する。竹林に差す光は幻想的な色合いを演出していた。歩きながらではあるが、両手を天に向けて伸びをする。


 村は男たちが出払っているため、女子供が多いようだった。騎士団が到着すると、村人たちは彼らを大いに歓迎する。


「ゾゴルさん、いらっしゃい。いつも巡回ありがとっ」

「旦那たちのおかげで安心さぁ、まぁ最近ちょっときな臭いけど」

「ここらにもよく出るようだな」


 魔物が、という副音声が届くのは、もちろん状況を理解している者たちのみ。つまり京之助以外のすべてだ。だが彼も最後の「ここらにもよく出る」に反応していた。


(つまりこいつらのようなお化け物の怪がたくさんってことか、恐ろしいところだな)


 ガクガク震えながら盛大な勘違いをしている男を他所に会話は続く。一定の報告やら近況やら、緑の谷の統治機関からの連絡事項を村人に、またいつの間にか輪に入っていたらしい村長に告げると、村人たちもやっと京之助について言及し始めた。会話の初めから気づいてはいたものの、騎士団長の話を遮るわけにもいかないため待っていたのだ。


「で、ゾゴル団長、そちらの人族の御仁は? それとも捕虜かなにか?」


 見たこともない出で立ちの京之助に違和感を感じているのだ。蒼の着物に灰色の袴、反りのある剣と思しきものが腰に三本。赤みがかった茶髪に黒目、捕虜にしては武器の携行を許されているというちぐはぐさ。ノースガレリアに見られる人族の特徴である、銀髪蒼眼ではないのも彼らの不振さを増す要素であった。


「ああ、彼はキョウ殿だ。湖の畔でな、拾ってきた。よくわからんからあの方に判断を仰ぐことにしたのだ。悪いがしばらく村でも厄介になる。なぁに、悪いやつではないと我々が保証しよう」

「あい、わかった。いつも通り我が家に宿を準備しよう。来なされ」


 村長らしい人物がゾゴルガーグの発した“あの方”の部分に少しだけ眉を上げたのを京之助は見逃さなかった。そして捕虜という物騒な言葉。人間と妖怪の間にある敵対関係を垣間見た気がした。


 京之助は最初に話しかけてきたオーク(多分この人と当たりをつけて)に近づいて小声で囁く。


(おい、朝起きたら葉っぱに包まれて、村も人もなぁんにもなかった、なんてことないだろうな?)

(はぁ? 何言ってんだおめぇ!?)


 早々に訳のわからない人族の弁を放っておいてオークは村長宅へと足を進めることにした。村長宅に着いた彼らは早速フォレストウルフの素材のうち、獣人の村が必要とする牙と爪、肉を幾つか取り出して村長に見せる。


「ほぅほぅ、たいへん状態が良いですな。さすがゾゴルガーグ殿達じゃ。全部でよろしいかの? ちと不足がちでな、怪我人も多いゆえ」

「かまわんよ、もちろん。一部はキョウ殿が狩ったものだ。状態のいいのがほとんど彼のものだが、それも我らにまかされている。悪いが魔石は譲れん」


 素材の良さに愛好を崩すも、すぐに村の現状を思い出してはため息をついたり、感心したり忙しく表情が変わる村長を、彼ら曰くのイカレタ人族は見ていた。


(コロコロと表情が変わる人妖だな。あれか、妖術の始まりか?)


 部屋の奥の方にいたオークの一人を捕まえて、今から大事な話をしますよと真面目な顔で迫る。


「お前は、狸や狐が化けて人をだまし、歌をもって幻聴を聞かせ、厄災をもたらすことを知っているか」

「なっ!? お前、絶対に村でそんなこと言うなよ!」


 オークは至って真面目ぶった物言いを一刀両断して、彼の両肩をがっちりと捕らえつつ揺さぶった。やれ化け方が中途半端だ、やれ尻尾を隠せてないだとかものすごく失礼な着物の男の態度に慌てふためく。



 オーク一行の旅はどこか頭のおかしい人族によって前途多難な混沌へと導かれていくのであろうか。


 ここ狐と狸の獣人たちの楽園で。

お読みいただきありがとうございました。

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