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最低学力者たちは学校を征服するようです?  作者: 雪原灯
第1章 格上ランクは弱いです?
8/9

不正行為取り締まり作戦②

僅かな性に関する描写があります。

直接的な表現を避けて、曖昧にぼかしてはいますが、苦手な方はブラウザバックを推奨します。

「湊さん、どうします?」


 連れの一人が話しかけてくる。コイツは委員会入った時から部下として使っている奴で、気配察知が物凄い。


 大抵、私が任されるのは最前線で隠れたりするような役だから、気配というのは一番気にする。


 しかし、気配察知ができる奴というのを見抜くのは早々出来ない。その中で、たまたまコイツを部下にしたら、今までに何回も気配を感じ取り、私たち最前線組を救ってくれている。


「とりあえずー、先生を探すフリをして、軽く探索しよっか。えっと、君とー、君!違う扉からタイミング変えて入ってね。」


「はい、了解。」


「了解っす!」


 探索組に耳につける小さな無線機を渡し、そこから指示を出す。無論、私も付けて、実際に探索する。


「2人は私の入った20秒後。窓側を見にいく感じで。テストらしきものがあったら、例のカメラで撮ってね。」


 ピッ…


 了解の合図だ。バレてはいけないので、このような合図で更新を交信をする。


 扉を開けて、まず私から教員室へと入る。ザッと見回すが、あまり紙の束が見当たらない。慎重に、かつ自然な動作で机を眺めていく。


「…右から2のボードより3番、左のボードから6番。」


 ピッ…


 周りの机に置かれた紙の束を撮りながら、遠くで目に付いた机の位置を知らせ、後から入ってくる部下に撮らせる。


「撤収。」


 ピッ…


 扉をまた開け、静かに礼をして、指定した集合場所へと向かう。


 □ □ □ □ □


「もう一回、そう。そこから再生してくれ。」


「ココっすか?」


 カチカチッ…


 久司に頼んで、俺は学校中の廊下に設置された監視カメラの映像を確認していく。


 テスト前になった今だ。小崎もテストを抱えて、いろいろ巡っていることもあるだろう。


 まだ実力テストの隠し場所が分かっていない俺らには、キッカケを掴むことから始めなければならない。


「アップして、そう。…これ小崎だな。」


 映り込んだのは一瞬。カメラの奥の廊下を右から左へと、何やら紙の束を抱えて走っていった。


 ビデオの時刻は夕方の5時過ぎ。他の教師は会議でいないし、警備員の定時巡回も終わった頃だ。生徒は部活などで、全く見えない。


「コッチは…アレしかないっすけど…。まさか…。」


「それだったら、別の意味で訴えられるぞ…。一応、確認しよう。誰か、湊に連絡取れないか?」


「無線機で取れます。どうぞ。」


 作戦のために無線機で、仕事をコントロールしていた人が俺に無線機を渡してくる。


「助かる。」


 ピッ…ザザッ…


「湊か?峯崎だ。」


「どうしたん?峯崎くん。」


「少し確認してもらいたい所があってな。本棟2階の理科棟に繋がる連絡路があるだろ?その付近の女子トイレを見てきて欲しい。」


「あそこね。了解だよー!ところであったらどうする?」


「そのまま女子トイレに誰も立ち入らないように規制線を張ってくれ。テープは理科棟の用具入れにあったはずだ。」


「はーい、了解だよー。」


 ザッ…ザザッ…


 これでもし、あの場所から小崎に関する何かが出てきたら…。きっと、学校中で大問題になるだろう。


 フフッ…とにやけたのが自分でも分かった。


「今の峯崎の顔、ヤバかったすよ!」


「おっと、いけない。表情に出たみたいだな。ふっ…。」


「寧々さんだけじゃなくて、峯崎まで怖いっす、エグいっす!」


「寧々、山上、ルイ!…証拠探しを始めようか。」


 □ □ □ □ □


 峯崎くんからの報告で女子トイレに到着した。理科棟の用具入れから黒黄の縞模様の規制テープを持ってきてわとりあえず立ち入りを規制する。


「あっ、君たちはココで待機っ!ゼータッイ覗いたりなんかしちゃダメだからね?ゼータッイだよ?」


「それ、しろって事ですかい?いたっ!」


「どっかの熱湯おじさん軍団じゃないんだから、ダメだからね!」


 頬を抓りながら私は言う。


 部下の男子を入り口に張らせ、私は1人トイレへと入る。


 中には誰もいない。それを確認し、個室を1つ1つ見ていく。


「無さそうかな~。よし、次!」


 次々と確認し、4つ目の個室を開けた。


「無いか…あれ?…なんだこれ?」


 便器の下に、何か小さな液の入った袋を見つけた。それを見て、私はすぐに分かった。


 あいつはただの、犯罪者だと。


 □ □ □ □ □


「なに!?やりやがったか…。」


 まさかとは思っていたが、あいつは手を出していた可能性がある。先ほど呼び集めた、寧々と山上とルイの3人に内容を伝える。


「いま連絡があったんだが、本棟2階の理科棟連絡通路の女子トイレであるものが見つかった。」


「おー、気になるぅー!」


「なにが見つかったんだ?」


「なんか、怖いですね…。それってテストだったんですか?」


 首を振り、俺は答えた。


「テストなんかじゃない。それより、もっと恐ろしいやつだ。」


 周りのメンバーも、委員会の生徒も黙り、教室には異様な空気が流れる。


 その言葉は一瞬の静寂と、反応も出来ない驚愕をもたらした。


 □ □ □ □ □


「ハァハァ…コッチだ。急ぐぞ!」


 3人を連れて、目的の場所へと走る。廊下の角で何人もの生徒や教師とぶつかりそうになったが、そんな事を気にせず、ただ走る。


 その場所には、小崎の不正以外の犯罪の証拠が残っているからだ。


 DNA鑑定すれば、一発だ。


 俺は、別に貶めるために急いでいるんじゃない。


 ただ1つ、きっとそうだったであろう事実に、怒りを隠せなかった。


 きっと、今日の夜もあいつはヤる。


 それも、恐らく違う女子トイレで。


 違う対象に。


 また新しい、アレを使って。


 □ □ □ □ □


「あー、城戸崎さん。ちょっと話があるから、教員室に来てもらえる?」


「分かりましたわ。後でもよろしくて?」


「あぁ構わない。ただ、会議があるから、申し訳ないけど4時までには来てもらえるかな?」


「承知致しましたわ。小崎先生。」


 振り返って、彼女は近くのお友達と話し始めた。


 フフフ…ニヤニヤが止まらない。


 あいつは今日から俺の欲望の的になることも知らないで仲良く喋っているのが、ただ滑稽だった。


 しかし、この時から征服委員会の術中にハマっていることを俺はまだ知らなかった。


 ピッ…


「ん?」


 何か音がなった気がするが…いや、気のせいか。さすがにあのクソアマと何回もヤって、疲れが出てきたんだろう。


 今日は軽めにしておくか。1発くらいで、やめておいてやろう。


 ピッ…


 その音は耳には届いていなかった。そして、その音が定期的に鳴っていたことも、俺は知らない。

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