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最低学力者たちは学校を征服するようです?  作者: 雪原灯
第1章 格上ランクは弱いです?
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不正行為取り締まり作戦①

 新入生歓迎作戦は継続的に続けられている。しかし、いつまでもこの作戦だけに止まっているわけにはいかない。そろそろ、学校に新学期一発目の新しい作戦を仕掛けていかなければならない。


 そういえば、もうそろそろランク分けが決まる実力テストがある。その前に一発仕掛けてみようか…。


 ターゲットは気に入った生徒だけに肩入れする、偏向教師。小崎 陣。


 あいつはとにかく不正の塊だ。お気に入り生徒への点数の水増し、ランクの不正入れ替え。


 しかし、それを学校は知っている上で黙認している。どうやら学校で止めがかかっているようで、国までは情報が届いていないらしい。


 この際、国を助けるという名目で彼には辞職をしてもらおうと思う。そのための作戦を実行するために、俺は「チャト」で征服委員会へ一斉通達を出した。


『通達

 お疲れ様です。新入生歓迎作戦は順調に進んでいるだろうか?


 そろそろ実力テストの日がやって来るが、その前に一つ作戦を仕掛ける。


 今回のターゲットは小崎だ。知っての通り、こいつは不正行為を何回も繰り返している。


 しかし、学校は何とも言わない。


 そこでだ。今回の作戦は俺らが監査役になり「不正行為取り締まり作戦」を行う。


 具体的な内容は放課後、会議を行うのでそこで発表をするが、小崎の不正行為を国へ提出する予定だ。』


 □ □ □ □ □


 放課後。いつもの場所には既に多くの征服委員会のメンバーが集まっていた。


「よし、始めるか。」


 主なメンバーが揃っているのを確認して、内容を話し始める。


「通達の通り、今回の作戦は不正行為取り締まり作戦だ。ターゲットは小崎。今までの不正行為の裏付けをした証拠品がそろそろ溜まって溢れ出しそうになっているだろうから、それを国へと提出する。」


「なるほど…でも、それだけで足りるのぉ?」


 やる気があるのかないのか分からない、いつも通りの口調で寧々が尋ねる。


「おそらく足りない。だから、今回は冤罪をかけてやろうと思う。」


「うっわー、相変わらずエグいこと考えますねー。寧々さん並みにエグいっすよ。」


 こちらもいつも通り、パソコンを弄っている久司が呟く。寧々が喋り始める前に、俺が割り込んで話を始める。


「具体的には、ランクSとランクCのテストを入れ替える。そうすれば、生徒からの不信感も得られるし、俺らも損した側として疑われる可能性も低くなる。」


「エグい割には、結構いい案だねぇ。」


「成功するかは正直分からない。だけど、今までみたいに協力し合えば必ず成し遂げられる。てわけで、割り振り始めるぞ。」


 役割と内容を書いた模造紙を広げ黒板に貼り、机に校内マップを広げる。


「まず、寧々。寧々はルイと協力して、証拠集め。残りの裏付け作業を進めてくれ。

 次に久司。お前は電気系統のハッキングをお願いしたい。教員室は学校が閉まると電子錠でロックがかかる。それを解除して欲しい。

 んで、羽瀬は電子錠が破れなかった時に備えて、ぶち破る策を用意しておくように。あと信号弾も頼む。

 最後に湊は、他の奴らを連れて、実力テストを回収して、取り替えておいて欲しい。そのために作戦実行日より前に実力テストの場所を探っておいてくれ。」


「寧々さん、マジ分かりましたよぉー。」


「お、おい。私はどうすればいい?」


「山上は…そうだな。寧々とルイに混ざって、小崎の監視役をしてもらえるか?何か行動をしたら、即報告をして欲しい。」


「了解した。が、コイツとか…?」


 采配をミスった。そういえば、こいつらはつい最近…というか昔から犬猿の仲だった。


「あゆくん!私はこの軍オタと一緒にはやりたくない!」


「何が、軍オタだ!このストーカー犯が!」


「むむぅ!」


「ぐぬぬ…!」


 また始まった。何で懲りないんだろうか。また投げ飛ばしてしまおうか…?


 いや、でも時間がない。そんなことをしている暇はないな。


「ほら、お前らがやってくれないと始まらないんだが。…また飛ばされたいか?」


「い、いやぁ…結構だよ、あゆくん。」


「わ、私も…遠慮願いたい…かな、と。」


「(何だろう、この威圧感。)」


 メンバーの心はなぜか毎回一致する。


 □ □ □ □ □


「峯崎さん…っ!」


 作戦会議が終わり、すでに作戦に取り掛かる準備をする者や帰る支度をする者でごった返す教室を抜けると、俺に付いてきたのか、ルイが話しかけてきた。


「どうした?女の…ゴホン、男のルイくん。」


「男のとか要りませんし、そもそも女とか言いかけてましたよね?」


「ヒュー…ヒュル〜…。」


「吹けてないですし、誤魔化せてないですからね。」


「まぁ、いい。んで、何か用か?」


「やっぱり軽く流されるんですね…。えぇ、用というよりは聞きたいというか…。」


 俺の態度に少し落胆しながら、ハッキリしない口調で俺を覗き込む。


「峯崎さんはなんで、僕に証拠の裏付けみたいな重要な任務をくれたのですか?普通なら、入ったばかりの人は信用出来ないじゃないですか。」


「じゃあ、信用しなくていい?」


「そ、それは…嫌です…。」


「この学校ってさ、基本的に学力至上主義で、素直な子だけを求めてるからさ。良い性格は目をつけず、悪い性格だけゴチャゴチャ文句を付けてくる。その上、お前みたいな交渉の能力があっても評価されない。」


「(確かにそうだ。僕も少しは能力を鑑みてくれると考えていた。)」


「だからさ、俺らはそうはなりたくない。少なくとも俺は、学力無視で、人格と能力で人を判断してる。だから、ルイを任務に就かせた。」


「で、でも…僕は交渉が得意なだけで、諜報は出来ませんよ…?」


「だーかーらー、言ったじゃん。人格を見てるんだって。」


「どういうことです?」


 こいつは本気で気づいていないらしい。まぁ自分の人格ってのは、他人が一番理解している所はあるからな…。


「だって、お前、人から好かれやすいだろ?それで輪を広げれば…って、どうした?」


「な、なんでもないです…!ただ…、認められた、のかなぁと…。」


「認めるも何も、委員会入った時点でお前の全てを受け入れてるんだが?」


「…変な人ですね。」


「えぇ〜!ここまで来てディスります!?ルイ、お前実は隠れドSだな?」


「ムッツリスケベみたいな言い方やめてくださーい!」


「ムッツリスケベだったのか!?驚きだ…、これは報告しないとな…!」


「やめてぇぇぇ!!」


 これで少しは自信が付いただろう。モチベーションをあげるために、少し演技を加えるのも、だいぶ板に付いてきた。


 嘘といえば嘘かもしれない。でも、これもリーダーとしての役目。


 決意を新たにした俺は、喚くルイを背中に、廊下を駆け抜けていった。

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